奪われた羊

春秋花壇

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奪われた子羊

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奪われた子羊

緑豊かな丘陵地帯に、羊飼いダビデは小さな家と愛する子羊ラムと共に暮らしていました。ラムは、ダビデにとって単なる家畜ではなく、親友であり、家族のような存在でした。ダビデはラムに草を食べさせ、毛並みを整え、夜には子守唄を歌って寝かしつけました。ラムもダビデに甘え、彼の後を追いかけ、そばを離れませんでした。

一方、村には裕福な羊飼いゴリアテがいました。ゴリアテは広大な土地と数千頭の羊を所有していましたが、決して満足せず、常に他人のものを奪い取ろうとしていました。

ある日、ゴリアテはダビデのラムを見かけ、その純白な毛並みと愛らしい姿に目を奪われました。彼はダビデにラムを売るように要求しましたが、ダビデは断固として拒否しました。

「ラムは私の家族です。お金で買えるものではありません。」

ゴリアテは怒り、力ずくでラムを奪い取ろうとしました。ダビデは必死に抵抗しましたが、ゴリアテの力には勝てませんでした。ラムはダビデから引き離され、ゴリアテの羊の群れに混ざってしまいました。

ダビデは悲しみに打ちひしがれました。ラムを失っただけでなく、ゴリアテの横暴さに絶望しました。彼は丘の上で泣き崩れ、神に祈りました。

「神様、なぜこんなことが起こるのですか?ラムは私の全てでした。どうか、ラムを取り戻させてください。」

その夜、ダビデは不思議な夢を見ました。夢の中で、一人の天使が現れ、こう告げました。

「ダビデよ、悲しむな。神はあなたの心を見ている。勇気を出して立ち上がり、ゴリアテに立ち向かえ。」

翌朝、ダビデは決意を固めて村へ向かいました。そして、ゴリアテの屋敷の前で大声で叫びました。

「ゴリアテよ、あなたは私のラムを奪い取った!今すぐ返せ!」

ゴリアテはダビデを見て嘲笑しました。

「愚かな小僧が何を言っている?ここは私の土地だ。好きなようにする。」

ダビデは怒りに燃え、ゴリアテに突撃しました。しかし、ゴリアテは巨漢で、ダビデは歯が立ちませんでした。

その時、ダビデは夢の中で見た天使を思い出しました。そして、勇気を振り絞って叫びました。

「神様の名において、あなたを倒す!」

ダビデは石を拾い、渾身の一撃でゴリアテの額に投げつけました。石はゴリアテの額を貫き、彼は倒れて動かなくなりました。

村人たちは驚きと喜びの声を上げました。ダビデはラムを取り戻し、ゴリアテの横暴から村を解放したのです。

ダビデはラムを抱きしめ、喜びの涙を流しました。そして、神に感謝の祈りを捧げました。

「神様、ありがとうございました。あなたは私に勇気を与え、正義を守らせてくださいました。」

ダビデとラムはその後も仲良く暮らしました。ダビデは村人から英雄として尊敬され、ゴリアテのような横暴な者は二度と現れませんでした。
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