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春秋花壇

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新人介護士の奮闘記

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新人介護士の奮闘記

春の日差しが降り注ぐ中、新人の介護士である佐藤花子は、緊張した面持ちで介護施設の門をくぐった。大学で介護福祉を専攻していた花子は、夢だった介護の仕事にようやく就いたのだ。

最初の配属先は、認知症のユニットだった。明るく優しい笑顔で入居者を迎える先輩介護士の田中恵子に、花子は希望を抱いた。しかし、現実は想像以上に厳しかった。

大きなうんちとか匂いとかで吐き気がする自分を受け入れられなかった。

入居者への食事介助や排泄介助、入浴介助など、次々とこなしていく業務に、花子は目まぐるしさを感じた。慣れない手つきで入居者を傷つけてしまうこともあった。

ある日、花子は担当する入居者である山田春江さんから、「あんた、昨日の人じゃないね。新人さん?」と声をかけられた。花子は落ち込んだ。せっかく名前を覚えてもらったのに、すぐに忘れてしまう自分に嫌気がさした。

そんな花子を励ましてくれたのは、田中だった。「誰でも最初はそうよ。焦らずゆっくり覚えればいいのよ。」と優しい声で語りかけてくれる田中は、花子にとって心の支えだった。

花子は、日々必死に介護の技術を磨いていった。入居者一人ひとりの名前と顔、そして性格や好みを覚えるように努力した。入浴介助では、入居者が気持ちよく過ごせるよう、温度や時間、声かけに気を配った。

ある日、花子は春江さんから、「あんた、上手くなったね。ありがとう。」と笑顔で言われた。花子は思わず涙が溢れた。これまで努力してきたことが報われた瞬間だった。

花子は、介護の仕事は決して楽ではないことを知った。しかし、入居者から感謝の言葉をかけられた時の喜びは、何物にも代え難いものだった。

新人介護士として奮闘する花子は、日々成長を続けている。入居者の笑顔のために、これからも精一杯努力していくことを決意した。

1000文字小説

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