エデンの園を作ろう

春秋花壇

文字の大きさ
上 下
18 / 209

60才の孤独死男性

しおりを挟む
晴れわたった青い空、光り輝く太陽。

夏のようにはエネルギッシュではなく明るさだけがあたりを優しく照らす。

大きな冬枯れの木々が大空を支えるアトラスのようにそびえている。

死神に教わった孤独死予定の60歳の男性。

通常なら、70才からの利用なので見慣れた利用者さんと比べるとめっちゃ若い。

「いいお天気ですね」

「そうですね。気持ちいい」

「失礼ですけど、おいくつなんですか」

「60才になりました」

「今日はお休みなんですか?」

「仕事をやめました」

「そうですか、それはそれは」

ちょっとばつ悪そうに彼は下を向いている。

「普段は何をされているんですか?」

「何にもしてないです」

ナイキのトレーニング加圧5点セットのようないで立ち。

60歳の男性が、頭から足の先まで全部同じメーカーっていうのも薄気味悪いんだけど。

おしゃれ、かっこいい、清潔感もある。

この人がまさか、100日後に孤独死をして死体が発見されるのが死後2か月とか誰も知らない。

年齢制限を考慮せずにたとえ毒子のいる『エデンの園』に来たからって、寿命が1日だって伸びるわけじゃない。だけど、2か月以上も放置されるなんて、悲しすぎるよね。特殊掃除の人だって、大変だろうし。

孤独死は、年齢別では60代が最も多く(29.6%)、次いで70代(22.4%)、50代(18.8%)、40代(10.3%)となっています。男女比では、およそ5:1で、女性の5倍も男性の孤独死が多いことがわかります。

だから、本当は毒子のところも70才からではなく、60才からが一番妥当なのだろう。

世の中は需要と供給のバランス。

それだけニーズがあるってことだよね。

「何かスポーツをされているのですか?」

すぐそばには、体育館とテニスコートがある。

「いいえ、なにもしてません」

「どうやって時間を過ごされているんですか?」

「動画見たり、ぶらぶらしたり」

「たのしそうですね」

「暇を持て余しています」

「食事は?」

「一人暮らしなので、カップラーメンとかスーパーの弁当とかいろいろです」

う~ん。なんだろう。

このままもう少し放置でもいいんじゃないかと思ってしまう。

60才だからかな?

他の人たちみたいに、わたしが何とかしてあげたいって感じないんだよね。

足や腕の筋肉だってしっかりしてる。姿勢だっていい。

「死因は?」

死神にそっと聞く。

「心筋梗塞だな」

ぽっくり、それほど苦しまずに死ねたのだろう。

やっぱり、10才の差は大きい。

もしも、頭から足元までばっちりないきーーーじゃなかったら

お誘いしてたのかな?


コレステロール値を管理する

血圧を管理する

血糖値を管理する

健康的な体重を維持する

禁煙する

定期的な運動をする

これらのライフスタイルの変更により、心筋梗塞のリスクを大幅に軽減できます。

リスクの軽減によって、彼の命が一日でも伸びるんだったら、即効お誘いするんだろうけど……。
しおりを挟む

処理中です...