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しおりを挟む部屋の明るさと暑苦しさで目が覚めた。瞼を開くと、目の前に男の首筋がある。
相手の腕が私の腰に回って抱き込まれている状態のようだ。
もう上がり始めている夏の気温の所為で、密着した体は熱で蒸し蒸しして汗ばんでる。
また平白め人を抱き枕にして……いや、何か体が大きいし匂いが違う。
「やっと起きたか。」
その声に心臓が止まるほど驚いた。
まさかと思いながら顔を上げて今自分を抱きしめている人物の顔を確認する。
………………は?
え、セイ君?…………は?
「おはよう。」
「お……おは、よ?」
まだ事態が飲み込めずセイ君をまじまじと見つめる。
すると、セイ君は少し息を詰めた後ぷいっと顔をそらして離れていった。
「リンは仕事だろう。早く支度しろ。」
ささっと寝台から抜け出たセイ君は全裸だった。
引き締まりぷりっとした尻を愕然と見つめる。
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対して、なんと私も全裸だ。
ワタワタしていると、床に落ちていた私の服をセイ君が拾って渡してくれた。
「あ、ありがとう。」
「ああ。」
そそくさと下着を身につけ身支度をしていく。
どうやらここはセイ君の部屋のようだ。
昨日は平白と飲んで潰れて、酔い覚ましにヘキ様に会いに行って。
…………そこから先の記憶が全くない。
何がどうなったらセイ君と二人全裸で朝を迎えることになるんだ。
まさか、まさかな……。
「……なあ、昨夜のことちゃんと覚えてるよな?」
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「えっと……昨夜のどの事?」
とりあえずどうとでも取れるように返した。
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まさかだったーーーー!!!
え、ちょっと、待て、昨夜の私は一体何をやらかしたんだ。
この何か腰が痛いのはナニをやらかしたからなんだ。
……私は契兄になって契弟にしたセイ君を抱いた!?
あのぷりケツに突っ込んだの!?
あわあわしながら指先を加えて歯をカチカチ鳴らす。
ハッと思い立って身につけた衣服を緩め股間を確認する。寝てる間にセイ君が拭いてくれたのか何の汚れもなかった。強いて言うならよく見れば腹のあちこちに点々と鬱血痕がついてる。
酔った私が吸わせたんだろうか。
男色については本や酒の席での知識しかないが、普通年長者がいわゆる男役で若い方が女役だというくらいは知ってる。
「……覚えてるんだよな?」
「も、もちろん!もう君は私の大事な契弟だよ!なんでも頼ってね!」
訝しげにジトっと睨まれて慌てて服を着なおしながら誤魔化した。
掘られた挙句掘った相手がそれを覚えてないとか、そんな屈辱を与えるわけにはいかない。
それに、こちらに確かめてくる彼が何か縋ってくる子犬みたいで突き放せないと思ってしまった。
あんな立派なブツを持ってる人を子犬だなんておこがましいかもだけど。
セイ君はふんっ、と何処か満足気に鼻を鳴らすと、自分の身支度を整え始めた。
私も遅れないように着替えをして寝台から降りた。
途端に腰が痛んで足がふらつく。
あたた……どれだけはっちゃけたんだ昨日の私……。
「大丈夫か?」
セイ君がそう言って肩を持って体を支えてくれた。
「あ、うん。それよりセイ君は大丈夫?体辛くない?」
いたわりの気持ちで支えてくれてる手の甲をさすさす撫でる。
こういうのは受ける方が負担が大きいだろう。そりゃ私より余程丈夫な体をしてるだろうけど、私のように後ろまで鍛えてるわけではあるまい。
「別に。我慢してやってるうちに早く仕事に行ってくれ。」
さりげなくさすっていた手を退けられる。
やっぱり我慢しなきゃいけないくらい辛いんだ……
「ごめんねセイ君!私責任とって何でもするよ。辛いならお世話するから遠慮なく言って?」
「ハァ……仕事に、行け。」
「……はい。」
頑なな拒否に肩を落とす。
ひょっとして怒ってる?
この突き放す態度から見るに、私が酔って強引に事を進めた可能性もあるな。
セイ君に不本意なことをしてしまったかも。ますます申し訳なくなってきた。
今はとにかくセイ君の言う通りここを去ったほうがいいだろうけど、今後ちゃんと償おう。
「……また夜、部屋に来てもいい。」
部屋を去る間際、セイ君がポツリと言った。
「あ、うん!もちろん!」
よかった。話をする余地はありそうだ。
安心して笑いかけたら、早く行けとまた急かされた。
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