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二章 忘れてた過去が……
6 期待と不安
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先週そんなことがあって、俺は実家の用事が終わり夜に和樹の部屋に来たらなんか変。物が減ってる?
「どうした、座れよ」
「う、うん。なんか部屋スッキリしてる感じが……」
「ああ、いらないものを処分したんだ」
「ふーん。模様替え?」
「違う。引っ越しが楽になるようにだよ」
飲むか?ってビールの缶を俺に渡してくれた。うんってもらって隣に座ると和樹は楽しそうだ。
「ど、どこ引っ越すの?住所教えてよ!駅は?俺けっこう迷子になるんだよ!和樹んち行けるかな……」
「んーまだ確定じゃないし智も住むんだよ」
「へあ?俺も?」
「そう。僕はまだ心配してるんだよ」
「うん……」
心配し過ぎな気もするけどね。和樹は蒼士に少し広いところを探してもらっているって。
「僕も持ってはいるんだけど、ここからかなり遠くてね。資産運用のだからもっと狭いのがいくつか」
「ゲッ!マジか」
「でも同じか狭いマンションばかりで、それも人が住んでるから無理なんだよ」
「へえ……」
サラッとすごいこと言い出したぞ?
「僕ね、子供の頃から貯めてた小遣いを大学の頃に運用していくつか買ったんだ」
おお…ぅ……俺そんなこと考えたこともない。iDeCoくらいだし貯蓄も少ない。
「蒼士の持ち物では人が住んでてこの辺に空いてなくてね。今探してもらってるんだよ」
「へ、へえ……」
俺の見てる世界とは明らかに違うね。和樹の見てる世界はどんななんだろうか。想像もつかん。ハッ!
「それなら和樹お金あるよね?でも使ってるの見たことないけど?」
「んー、使ってはいるよ。自分の趣味にはさ」
「そう?」
んーっと考え込んで、
「今は忙しくて確かに使ってはいないかな。一人の時は興味があれば朝の新幹線や飛行機であっちこっち行って、最終で帰って来るなんてしてた」
「おお……体力あるね」
「若かったからね。今は厳しいかな」
なにをしてたんだと聞いたら、食べたいものや見たい物を見学してたそうだ。俺との旅行でも観光地よく知ってたなあ、そう言えば。
「お寺や神社。遺跡に時代劇の聖地巡礼……それと本場の食べ物を食べたりかな。日本海側や北海道は魚が美味しかったね。あ、甘いものは全部」
「そこは抑えるんだね」
「当たり前だよ。甘いもの好きだからね」
今度は蒼士にホテル頼んで行こうよって。今まではよそに泊まってたけどさって。
「いいの?」
「ああ。僕は兄と歳が離れててさ。その間が蒼士なんだ。兄みたいな人だから甘えてる」
「へえ」
俺は実のお兄さんに頼んだ方が気心が知れてて楽なんじゃないの?と聞くと、和樹はあ~……って。
「兄さんに頼んでもいいんだけど、会うと面倒臭いんだ」
「面倒臭いとは。なんで?」
転職しろって言って来る……と嫌な顔した。
「結婚の予定がないなら身軽だし、仕事バリバリ出来るだろってさ。兄さんはあちら寄りの考えなんだよ」
「ふーん」
使える手は使って何が悪い。稼いで家族を幸せにしてなにが悪いんだよと、この間帰ってきた時に言われたらしい。
「僕が週末時々いないのはね。あちらの関係で呼ばれるからだ。何かの記念日とかレセプションとかね。一族が集まるものは出てるんだ」
「ふーん……大変だね」
「まあね。お祝いごとが中心だから顔は出さないとなんだ」
さて、智を抱かせてとバスルームに急かされて、あっという間にあんあん。
翌日昨日は激しくて腰痛えなあなんて考えながら和樹の朝食を食べてると、電話が鳴った。
「もしもし蒼士?……ああ…うん……そう!いつならいい?……うんうん……あはは…そう?」
何の話かは分からないから俺はもぐもぐと食べていた。キチンとした朝食で鮭と味噌汁、おひたしとお漬物。納豆と味のりもある。旅館かよ。でもパンの日もあるし、ホットケーキやフレンチトーストとか。和樹は本当になんでも出来るよなあ。忙しくても用意してくれるし。
だから俺は洗い物やごみ捨てをしてね。それくらいしか出来ないんだもん。
一緒に暮らすって……洗濯も掃除も俺おおざっぱだからなあ。出来るかな?不安でしかない。ズズーっこの味噌汁美味い。
「うんうん。よろしく頼むよ。ああ、また今度な。……うん……あはは、分かってるよ!じゃあな」
電話を切ってごめんねって。
「構わないよ」
電話してる雰囲気がいつもと違うと思った。身内とはこんな感じなんだな。気心の知れてる人とは……俺には見せない顔。まだ俺には見せられないのかな。なんかモヤモヤ……
「智?」
「ううん。なんでもない」
「嘘つくなよ」
すぐバレるのも考えものだな。まあ元々ウソつくの苦手だけどさ。
「俺には見せない顔だなって思っただけ」
「え?……蒼士に嫉妬か?」
スマホを置いて食べ始め楽しそうってか嬉しそう。
「まあ。家族と俺は違うんだなって思ったら少し寂しかっただけ!」
和樹ニヤついてるから半分投げやりに答えた。無理なのは承知、俺はまだ付き合って一年半弱だもの。お兄さんや従兄弟とは違うのはしょうがない。
「ごちそうさまでした」
俺は食器をキッチンに下げて水に浸した。
「食後にコーヒー飲む?」
「うん」
ならばとコーヒー豆をセットして、ふと和樹をみるとまだニヤニヤしてる。
「なんだよ」
「智はかわいいと思ってさ。僕は普段は受け身なんだと話したよね」
「うん」
「違う顔に見えるならそのせいだ。智に対してはかわいがる立ち位置にいたい」
「そう……」
うーん。弟みたいな気分になるからかな……そうなら受け身になるか。俺も兄貴にはそうなるしな。
「ごちそうさまでした」
彼も下げに来て隣に立った。
「智、僕にはたくさん甘えて欲しい」
「うんありがとう。洗い物するからコーヒーどうぞ」
「ありがとう」
スティックシュガーを二本入れてポーションも入れてソファに行った。二本……クソ甘そう。まあいいかと洗い物をして、自分の分をカップに注いでソファに座った。
「あのな。このあたりのマンション探してもらってたんだけどさ」
「うん」
「こちら側にはなくて、会社挟んで向こう側に来月契約が終わる部屋があるんだって」
「あったんだね」
「うん。2LDK広めかな。だからクリーニングとか諸々あるからもう少し待ってね」
「うん」
おお、期日が決まると一気に緊張する。でもさ、一緒に住んだら違ったとか言われたらどうしよう。コーヒー見つめてむ~ん。
「何が心配?」
「あのさ、和樹は同棲したことある?」
「ないね。一緒に住みたいとまで思った人は今までいないかな」
「そう、俺もないんだ。だからね?あの……最初はともかく慣れたら俺だらしなくなるかも……」
自分で言っててイヤ。頑張るつもりだけど忙しくて疲れた時とか……猫かぶれなくなると思う。だって毎日のことでしょ?休みの日だけじゃないんだよ。隠してもムダだから今のうちに全部話した。
「構わないよ智也。それにね、人って慣れる生き物なんだ。お互いをすり合わせて行けばきっと上手くいくさ」
「そう?」
「そうさ。世の中の夫婦はみんなやってるだろ。僕らが出来ないはずないじゃないか」
俺は和樹のふんわりした笑顔を見つめた。
「そう…か。そうだね。あの、それと俺なに持ってくればいい?」
「身の回りのものだけでいい。気に入ってるものとかあれば持ち込んでも構わないよ。後は僕が用意するし、ある程度備え付けのはずだから」
「分かった」
それに智は料理は無理そうだからすぐはしなくていいってさ。ゆっくり出来るようになればいいって。
「え……俺もするの?」
当たり前だろって。
「僕がいない時に困らないくらいにはなってよ。外食だけだとよくない」
「なんで?」
「それでなくとも外食多めなんだから、健康に長生きしたければね」
「まあ……分かりました」
確かに和樹の食事に比べれば外食は味が濃いし油も……
「教えるから心配するなよ」
「うん、ならがんばる」
そんな幸せな夢を見ながら過ごしていた。でもね、引っ越しの一週間前に和樹が週末無理になったって言って来た。仕方ないかと残りの片付けをすることにした。最後まで残してた大切なぬいぐるみとかダンボールに詰めたり、いらない物捨てたり。
もう物も少なくて家具もほとんどない。がら~んとした部屋になっていた。少しのスーツとか普段着だけだ。
「後は金曜に全部詰めて終わりだな」
なにもない部屋で声を出すと響くね。うはは。さて、夕方に夕飯には早いけど飯にしようと外に出ることにした。カギを閉めてエレベーターに乗ろうと横を向くと、なぜか彰人がいた……
「どうした、座れよ」
「う、うん。なんか部屋スッキリしてる感じが……」
「ああ、いらないものを処分したんだ」
「ふーん。模様替え?」
「違う。引っ越しが楽になるようにだよ」
飲むか?ってビールの缶を俺に渡してくれた。うんってもらって隣に座ると和樹は楽しそうだ。
「ど、どこ引っ越すの?住所教えてよ!駅は?俺けっこう迷子になるんだよ!和樹んち行けるかな……」
「んーまだ確定じゃないし智も住むんだよ」
「へあ?俺も?」
「そう。僕はまだ心配してるんだよ」
「うん……」
心配し過ぎな気もするけどね。和樹は蒼士に少し広いところを探してもらっているって。
「僕も持ってはいるんだけど、ここからかなり遠くてね。資産運用のだからもっと狭いのがいくつか」
「ゲッ!マジか」
「でも同じか狭いマンションばかりで、それも人が住んでるから無理なんだよ」
「へえ……」
サラッとすごいこと言い出したぞ?
「僕ね、子供の頃から貯めてた小遣いを大学の頃に運用していくつか買ったんだ」
おお…ぅ……俺そんなこと考えたこともない。iDeCoくらいだし貯蓄も少ない。
「蒼士の持ち物では人が住んでてこの辺に空いてなくてね。今探してもらってるんだよ」
「へ、へえ……」
俺の見てる世界とは明らかに違うね。和樹の見てる世界はどんななんだろうか。想像もつかん。ハッ!
「それなら和樹お金あるよね?でも使ってるの見たことないけど?」
「んー、使ってはいるよ。自分の趣味にはさ」
「そう?」
んーっと考え込んで、
「今は忙しくて確かに使ってはいないかな。一人の時は興味があれば朝の新幹線や飛行機であっちこっち行って、最終で帰って来るなんてしてた」
「おお……体力あるね」
「若かったからね。今は厳しいかな」
なにをしてたんだと聞いたら、食べたいものや見たい物を見学してたそうだ。俺との旅行でも観光地よく知ってたなあ、そう言えば。
「お寺や神社。遺跡に時代劇の聖地巡礼……それと本場の食べ物を食べたりかな。日本海側や北海道は魚が美味しかったね。あ、甘いものは全部」
「そこは抑えるんだね」
「当たり前だよ。甘いもの好きだからね」
今度は蒼士にホテル頼んで行こうよって。今まではよそに泊まってたけどさって。
「いいの?」
「ああ。僕は兄と歳が離れててさ。その間が蒼士なんだ。兄みたいな人だから甘えてる」
「へえ」
俺は実のお兄さんに頼んだ方が気心が知れてて楽なんじゃないの?と聞くと、和樹はあ~……って。
「兄さんに頼んでもいいんだけど、会うと面倒臭いんだ」
「面倒臭いとは。なんで?」
転職しろって言って来る……と嫌な顔した。
「結婚の予定がないなら身軽だし、仕事バリバリ出来るだろってさ。兄さんはあちら寄りの考えなんだよ」
「ふーん」
使える手は使って何が悪い。稼いで家族を幸せにしてなにが悪いんだよと、この間帰ってきた時に言われたらしい。
「僕が週末時々いないのはね。あちらの関係で呼ばれるからだ。何かの記念日とかレセプションとかね。一族が集まるものは出てるんだ」
「ふーん……大変だね」
「まあね。お祝いごとが中心だから顔は出さないとなんだ」
さて、智を抱かせてとバスルームに急かされて、あっという間にあんあん。
翌日昨日は激しくて腰痛えなあなんて考えながら和樹の朝食を食べてると、電話が鳴った。
「もしもし蒼士?……ああ…うん……そう!いつならいい?……うんうん……あはは…そう?」
何の話かは分からないから俺はもぐもぐと食べていた。キチンとした朝食で鮭と味噌汁、おひたしとお漬物。納豆と味のりもある。旅館かよ。でもパンの日もあるし、ホットケーキやフレンチトーストとか。和樹は本当になんでも出来るよなあ。忙しくても用意してくれるし。
だから俺は洗い物やごみ捨てをしてね。それくらいしか出来ないんだもん。
一緒に暮らすって……洗濯も掃除も俺おおざっぱだからなあ。出来るかな?不安でしかない。ズズーっこの味噌汁美味い。
「うんうん。よろしく頼むよ。ああ、また今度な。……うん……あはは、分かってるよ!じゃあな」
電話を切ってごめんねって。
「構わないよ」
電話してる雰囲気がいつもと違うと思った。身内とはこんな感じなんだな。気心の知れてる人とは……俺には見せない顔。まだ俺には見せられないのかな。なんかモヤモヤ……
「智?」
「ううん。なんでもない」
「嘘つくなよ」
すぐバレるのも考えものだな。まあ元々ウソつくの苦手だけどさ。
「俺には見せない顔だなって思っただけ」
「え?……蒼士に嫉妬か?」
スマホを置いて食べ始め楽しそうってか嬉しそう。
「まあ。家族と俺は違うんだなって思ったら少し寂しかっただけ!」
和樹ニヤついてるから半分投げやりに答えた。無理なのは承知、俺はまだ付き合って一年半弱だもの。お兄さんや従兄弟とは違うのはしょうがない。
「ごちそうさまでした」
俺は食器をキッチンに下げて水に浸した。
「食後にコーヒー飲む?」
「うん」
ならばとコーヒー豆をセットして、ふと和樹をみるとまだニヤニヤしてる。
「なんだよ」
「智はかわいいと思ってさ。僕は普段は受け身なんだと話したよね」
「うん」
「違う顔に見えるならそのせいだ。智に対してはかわいがる立ち位置にいたい」
「そう……」
うーん。弟みたいな気分になるからかな……そうなら受け身になるか。俺も兄貴にはそうなるしな。
「ごちそうさまでした」
彼も下げに来て隣に立った。
「智、僕にはたくさん甘えて欲しい」
「うんありがとう。洗い物するからコーヒーどうぞ」
「ありがとう」
スティックシュガーを二本入れてポーションも入れてソファに行った。二本……クソ甘そう。まあいいかと洗い物をして、自分の分をカップに注いでソファに座った。
「あのな。このあたりのマンション探してもらってたんだけどさ」
「うん」
「こちら側にはなくて、会社挟んで向こう側に来月契約が終わる部屋があるんだって」
「あったんだね」
「うん。2LDK広めかな。だからクリーニングとか諸々あるからもう少し待ってね」
「うん」
おお、期日が決まると一気に緊張する。でもさ、一緒に住んだら違ったとか言われたらどうしよう。コーヒー見つめてむ~ん。
「何が心配?」
「あのさ、和樹は同棲したことある?」
「ないね。一緒に住みたいとまで思った人は今までいないかな」
「そう、俺もないんだ。だからね?あの……最初はともかく慣れたら俺だらしなくなるかも……」
自分で言っててイヤ。頑張るつもりだけど忙しくて疲れた時とか……猫かぶれなくなると思う。だって毎日のことでしょ?休みの日だけじゃないんだよ。隠してもムダだから今のうちに全部話した。
「構わないよ智也。それにね、人って慣れる生き物なんだ。お互いをすり合わせて行けばきっと上手くいくさ」
「そう?」
「そうさ。世の中の夫婦はみんなやってるだろ。僕らが出来ないはずないじゃないか」
俺は和樹のふんわりした笑顔を見つめた。
「そう…か。そうだね。あの、それと俺なに持ってくればいい?」
「身の回りのものだけでいい。気に入ってるものとかあれば持ち込んでも構わないよ。後は僕が用意するし、ある程度備え付けのはずだから」
「分かった」
それに智は料理は無理そうだからすぐはしなくていいってさ。ゆっくり出来るようになればいいって。
「え……俺もするの?」
当たり前だろって。
「僕がいない時に困らないくらいにはなってよ。外食だけだとよくない」
「なんで?」
「それでなくとも外食多めなんだから、健康に長生きしたければね」
「まあ……分かりました」
確かに和樹の食事に比べれば外食は味が濃いし油も……
「教えるから心配するなよ」
「うん、ならがんばる」
そんな幸せな夢を見ながら過ごしていた。でもね、引っ越しの一週間前に和樹が週末無理になったって言って来た。仕方ないかと残りの片付けをすることにした。最後まで残してた大切なぬいぐるみとかダンボールに詰めたり、いらない物捨てたり。
もう物も少なくて家具もほとんどない。がら~んとした部屋になっていた。少しのスーツとか普段着だけだ。
「後は金曜に全部詰めて終わりだな」
なにもない部屋で声を出すと響くね。うはは。さて、夕方に夕飯には早いけど飯にしようと外に出ることにした。カギを閉めてエレベーターに乗ろうと横を向くと、なぜか彰人がいた……
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