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二章 忘れてた過去が……
7 予言が……
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俺はビクッとしてすぐにカギを差して部屋に戻った。なんで彰人がいるんだよ!中に入ると恐怖でドアを背にズルズルと座り込んだ。すぐにドンドンとドアを叩かれて、開けろ!話を聞いてくれって怒鳴ってる。
「イヤだ!俺たちは終わったんだよ!もう来んな!!」
「少しでいいんだ!聞いてくれよ智也!」
「イヤだ!」
頼むから開けてくれと言われても嫌だ。俺は耳を塞いでうずくまっていたけど、激しく叩くのも怒鳴るのも止まないし、帰る気配もない。俺は人迷惑だよなって仕方なく開けると、ドアチェーンを掛けたままの隙間から顔が見えた。彰人は息を切らせて、
「よかった……ハァハァ……」
俺は開けたくなかったよ。頭の隅っこで以前の和樹の言葉が浮かんだ。彰人は本当に都合よく考えてるようだな。
「何度来ても俺の気持ちは変わらない。それにさ、彰人かっこいいんだからいくらでも相手は探せるはずだ。俺でなくてもいいだろ?」
ハァハァと膝に手を置いて俺を見上げた。
「そう思うだろ?簡単に恋人なんて出来やしない。今の仕事は拘束時間が長いし、出会いなんかない。現場はやさぐれ気味の男ばっかだし。なあ入れてくれよ」
「イヤ!なんかされてもイヤだから!」
お前ねえって。そんなことしないよと笑った。
「分からんだろ。間違いがあっちゃ困るんだよ!」
「しねえよ」
信用は全く出来ない。付き合ってる時も俺が体調悪くても襲ってきたし、俺も自分が信じられない。怖くて許しちゃうかもしれないだろ!
「そうまで言うならファミレスが近くにあるからそこで」
「え?ここでいいよ」
「ヤダ!」
彰人は和樹と背格好は同じくらいで、俺は力で負けるのは分かり切ってるんだよ。それに……彰人日焼けしてるのか?
「彰人なんの仕事してるの?」
「ああ。俺今建築の現場監督だ。二級監督免許を大学の時に取っててな」
「あー言ってたね。取ったけどうちに来たって」
お前覚えていたかと少し嬉しそうにした。
「俺の大学の専攻が建築だから取れるものはある程度取ってたんだよ。なあ、入れてくれよ」
「ヤダ!」
中に入れろとしつこいから俺が外に出てドアに寄りかかった。
「中には入れないよ。二人きりになりたくない」
「そんなに信用ないのかよ。俺は」
「ないね。自分の胸に聞けよ」
苦笑いで智也ってそんなだったか?俺を信用してくれよって。
「ムリだよ」
「ならそこでいいよ。行こうぜ」
「ああ」
それから近くのファミレスに移動して、俺はお腹空いてたからハンバーグセットを頼んだ。彰人は飲み物だけ。
「お腹空いてないのか?」
「俺は昼が遅かったんだ」
「ふーん。で、なんの用だ」
彰人はコーヒーに口をつけてカップを置くと、改めて申し訳なかったと頭を下げた。
「お前が一ノ瀬さんと付き合ってるのは分かってる。それでも俺のところに戻って来て欲しい。頼む!」
彰人は真剣に頭を下げた。俺に頭下げられるんだ……変わったな。でもな。
「彰人。俺は今幸せなんだ。和樹は俺をとっても大切にしてくれるし、嫌がることもしない。もちろん怒鳴ったりもしない」
グッと彰人は喉を鳴らした。身に覚えだらけだよね。仲良かった頃から俺が困ると、子供がいじわるして喜ぶ見たいな反応してたよな。それを指摘し彰人突きつけた。
「悪かった。もう智也が嫌がることはしない。約束する」
もう遅いんだよ。俺はこの言葉は口先だけどと知っている。キレ易くて手が出るのも、困るとこうして頭も下げるのも、俺の気持ちは一切含まれてない。彰人の都合だけだ。
「彰人はムリだろ?こういったクセみたいなのは変わらないと俺は思うんだ」
「いや、俺は変わるよ。お前といた時の幸せを取り戻したいんだ。嘘じゃない」
俺は視線をそらして話してたけど、しっかりと彰人の目を見た。
「ならなんで付き合ってる時に俺の話を聞いてくれなかったんだ?仕事を離れた俺を見てと何度も言ったよな?」
それは……と言葉が途切れた。言葉を探すような素振りで、コーヒーを飲んだ。
「俺の仕事はマネジメントの方に比重が大きくなっていて、お前のメンターも外れて独り立ちしていった。チームのスタッフとも上手くやってて成績もそこそこ上げていくお前が……」
「俺が?」
うーんと唸りながら頭を掻いた。
「本当なら……お前が育ったことを喜ばなければならなかったんだ。だけど俺を抜いて行きそうなお前が遠くに感じて、そのうち憎くなっていた」
やっぱりな。殴られてた時に叫んでたのが本音か。「お前は俺の言うこと聞いていればいいんだよ!生意気に口答えするな!」って怒鳴ってたよな。
「なら彰人も頑張ればよかっんじゃないのか?」
ふふっと苦笑いをした。
「俺はそんな立場じゃなかったろ。誰かの補強や営業三課全体の、本社で決まった計画をスタッフに実行させ、前年比を上回れるように手助けする」
「うん……」
彼はその他に、営業課全体の会議招集なんかの手配もしていて、会社内の仕事が多かった。
「これはやれて当然でな」
「ふーん」
それに、自分がしたミスじゃないのに、客先に謝りに行くのはメンタルに来るんだよって。それは……理解は出来る。自分がやって謝るのも堪えるから。
「俺が慣れない仕事で苦しんでいる時にさ。お前は楽しそうで輝いて見えた。なんで俺だけって気分にもなったんだ」
「そう」
それを耐えて頑張ったのが和樹や部長たちなんだろう。そりゃあ強いはずだ。
「今の日本のシステムの出世はな。マネジメントが出来なければ上には行けないんだよ。給料も増えないし下っ端では稼げないんだ。だけどみんながマネジメントに向く訳じゃない」
そりゃそうだ。潰れて遠くの支店に異動とか、部署を異動してる人もいる。そんな人はたくさん俺も見てはいる。営業は結果が数字で目に見えるからなあ。
「彰人と同期でヒラの人たくさんいたのに、あなたは役職がついてた。出来ると思われたからでしょ?」
「フン。人にモノを教えるのが上手かったからだな。それとマネジメントは違うんだよ」
「そうなのか……延長線上の気もするけど」
「俺はそうじゃない」
彰人は俺みたいにこの会社が好きで入社してなかったのかも。いやいや、俺はこんな話をしをしたいんじゃない。
「彰人の言い訳を聞きに来てないんだ。それだけなら俺帰る」
「待って!殴ったのは悪かった。他人に、恋人に手を上げるなんて許されることじゃない。本当に悪かったと思ってる」
「それはもういいよ。じゃあね」
立ち上がった俺の腕を掴んで見上げた。クソッ力入れて引いても抜けやしねえ!
「違うんだ!俺に足りないものを自覚したんだ。だから、前と違ってきっと俺たちは上手くやれる。お願いだよ戻ってくれ」
ため息しか出ねえ。俺が必死に連絡してた時にこの言葉があればな。もしかしたら許してたかもしれない。だけど、俺は和樹を知った。恋人ってこんなにいいものなんだって知ったんだよ。
背景はともかく、ものすごく努力する人は純粋に尊敬出来て憧れる。そんであの包容力だな。小さなことは気にせず、智也の好きなようにと言える気持ちの大きさだ。
俺も近くにいれば変われるんじゃないかと夢が見れられる、あの雰囲気が大好きなんだ。
「ムリだ。和樹という素敵な人が俺を変えた。以前には戻れないよ。弱くて何も言えずなんでも言うこと聞く俺はもういないんだ。彰人」
「そ、そんなこと…言うなよ」
彰人は必死に俺に訴えていたけど、俺は聞く気もないから冷たい声色で話していたんだ。すると手の力が抜けてドサッと座ってうなだれた。
「なあ、俺はどこで間違った?」
「きっと最初からだ。俺を子供と見下してた部分が始めからあったんだよ、彰人はね。恋人ではなくてペットくらいに思ってた部分があったんだ」
「はあ?そこまでは思ってないよ」
顔を上げて否定した。いやいや似たようなもんだろ。
「俺の全てを否定して従えって言うのはそうだろ?」
「そこまでしてないはずだ……でもそう思われてたのは認めないとだな」
「ああ。後半の二年は俺は辛いばかりだった。彰人に俺を見て欲しいしかなかったよ」
俺はいつからそんな……と力が抜けきって失笑していた。
「今更だが最初からじゃない。仕事で俺の手が離れた頃からだと思う」
「やっぱり二年経った頃だよな」
「ああ。追いつかれる不安でおかしくなっていたんだと思う」
ぐったりしてる彰人を見ても「かわいそうだ、なんとかしなきゃ」と思う気持ちが俺には沸かなかった。もう完全に彰人から心が離れたんだなあとしか。
「俺忙しいからもう帰る」
「ああ……」
「もう会うこともない。さようなら津村さん」
俺は伝票を持ってレジで支払い外に出た。まだ少し引っ越しの片付けはあったけど、明日もあるから今日は諦めた。気分は最悪だけど、彰人を拒否して流されなくなってるのには自分が驚いたね。和樹と過ごすうちに変わっていったんだな。支社とは違う、本社の同僚の雰囲気、環境も関係あるのかもね。
商店街の外れの公園が見えてきて、もうすぐ部屋だななんて思ったところで、腕で首を締められた!グウッ
「智也。やっぱりお前がいないと俺はダメなんだよ」
「ぐぅッあ、彰人?離せよ!」
「イヤだ!俺のところに戻ると言うまで離さない!」
暴れることも出来ず、そのままズルズルと誰もいない暗い公園の……ぐぅッ…苦しい!奥の街灯の明かりの少ない場所に引きずられ、近くのベンチに叩きつけられた。
「離せ彰人!た、たすけ……て…誰…か!」
「黙れ!俺を選ぶと言え!」
く苦るしっ!諦めたんじゃねえのかよ!
「言わねえよ!ふざけんな!!……っ」
「言えよ!俺はお前がいないともうダメなんだよ!」
「いやだ!」
言え!と怒鳴られて頬を強く平手打ち。痛ってえ!涙が……怖さと痛みで視界が揺らぐ。
「すぐ手を上げる彰人は嫌いだ!」
「お前が聞き分けがないからだろ!俺のこと好きだろ?なあ智也」
「嫌いだ!」
「嘘だ!!お前が俺から離れられる訳ねえだろ!」
「グッ…助け……っウグッ!」
助けてと叫ぼうとしたら口を塞がれて、更に首も手で押されて!うーうーっ!声が出せない!
「俺はお前がいないとダメなんだよ。言えよ!彰人愛してるって言え!!」
「ヴーッ!グウーッ!かっ…ず…」
和樹!和樹!助けて!かずきぃ!!イヤだぁ!!と出せない声で叫んでいた。その間も何度か頬を打たれて俺どうなるんだよ……助けてかずき……
「イヤだ!俺たちは終わったんだよ!もう来んな!!」
「少しでいいんだ!聞いてくれよ智也!」
「イヤだ!」
頼むから開けてくれと言われても嫌だ。俺は耳を塞いでうずくまっていたけど、激しく叩くのも怒鳴るのも止まないし、帰る気配もない。俺は人迷惑だよなって仕方なく開けると、ドアチェーンを掛けたままの隙間から顔が見えた。彰人は息を切らせて、
「よかった……ハァハァ……」
俺は開けたくなかったよ。頭の隅っこで以前の和樹の言葉が浮かんだ。彰人は本当に都合よく考えてるようだな。
「何度来ても俺の気持ちは変わらない。それにさ、彰人かっこいいんだからいくらでも相手は探せるはずだ。俺でなくてもいいだろ?」
ハァハァと膝に手を置いて俺を見上げた。
「そう思うだろ?簡単に恋人なんて出来やしない。今の仕事は拘束時間が長いし、出会いなんかない。現場はやさぐれ気味の男ばっかだし。なあ入れてくれよ」
「イヤ!なんかされてもイヤだから!」
お前ねえって。そんなことしないよと笑った。
「分からんだろ。間違いがあっちゃ困るんだよ!」
「しねえよ」
信用は全く出来ない。付き合ってる時も俺が体調悪くても襲ってきたし、俺も自分が信じられない。怖くて許しちゃうかもしれないだろ!
「そうまで言うならファミレスが近くにあるからそこで」
「え?ここでいいよ」
「ヤダ!」
彰人は和樹と背格好は同じくらいで、俺は力で負けるのは分かり切ってるんだよ。それに……彰人日焼けしてるのか?
「彰人なんの仕事してるの?」
「ああ。俺今建築の現場監督だ。二級監督免許を大学の時に取っててな」
「あー言ってたね。取ったけどうちに来たって」
お前覚えていたかと少し嬉しそうにした。
「俺の大学の専攻が建築だから取れるものはある程度取ってたんだよ。なあ、入れてくれよ」
「ヤダ!」
中に入れろとしつこいから俺が外に出てドアに寄りかかった。
「中には入れないよ。二人きりになりたくない」
「そんなに信用ないのかよ。俺は」
「ないね。自分の胸に聞けよ」
苦笑いで智也ってそんなだったか?俺を信用してくれよって。
「ムリだよ」
「ならそこでいいよ。行こうぜ」
「ああ」
それから近くのファミレスに移動して、俺はお腹空いてたからハンバーグセットを頼んだ。彰人は飲み物だけ。
「お腹空いてないのか?」
「俺は昼が遅かったんだ」
「ふーん。で、なんの用だ」
彰人はコーヒーに口をつけてカップを置くと、改めて申し訳なかったと頭を下げた。
「お前が一ノ瀬さんと付き合ってるのは分かってる。それでも俺のところに戻って来て欲しい。頼む!」
彰人は真剣に頭を下げた。俺に頭下げられるんだ……変わったな。でもな。
「彰人。俺は今幸せなんだ。和樹は俺をとっても大切にしてくれるし、嫌がることもしない。もちろん怒鳴ったりもしない」
グッと彰人は喉を鳴らした。身に覚えだらけだよね。仲良かった頃から俺が困ると、子供がいじわるして喜ぶ見たいな反応してたよな。それを指摘し彰人突きつけた。
「悪かった。もう智也が嫌がることはしない。約束する」
もう遅いんだよ。俺はこの言葉は口先だけどと知っている。キレ易くて手が出るのも、困るとこうして頭も下げるのも、俺の気持ちは一切含まれてない。彰人の都合だけだ。
「彰人はムリだろ?こういったクセみたいなのは変わらないと俺は思うんだ」
「いや、俺は変わるよ。お前といた時の幸せを取り戻したいんだ。嘘じゃない」
俺は視線をそらして話してたけど、しっかりと彰人の目を見た。
「ならなんで付き合ってる時に俺の話を聞いてくれなかったんだ?仕事を離れた俺を見てと何度も言ったよな?」
それは……と言葉が途切れた。言葉を探すような素振りで、コーヒーを飲んだ。
「俺の仕事はマネジメントの方に比重が大きくなっていて、お前のメンターも外れて独り立ちしていった。チームのスタッフとも上手くやってて成績もそこそこ上げていくお前が……」
「俺が?」
うーんと唸りながら頭を掻いた。
「本当なら……お前が育ったことを喜ばなければならなかったんだ。だけど俺を抜いて行きそうなお前が遠くに感じて、そのうち憎くなっていた」
やっぱりな。殴られてた時に叫んでたのが本音か。「お前は俺の言うこと聞いていればいいんだよ!生意気に口答えするな!」って怒鳴ってたよな。
「なら彰人も頑張ればよかっんじゃないのか?」
ふふっと苦笑いをした。
「俺はそんな立場じゃなかったろ。誰かの補強や営業三課全体の、本社で決まった計画をスタッフに実行させ、前年比を上回れるように手助けする」
「うん……」
彼はその他に、営業課全体の会議招集なんかの手配もしていて、会社内の仕事が多かった。
「これはやれて当然でな」
「ふーん」
それに、自分がしたミスじゃないのに、客先に謝りに行くのはメンタルに来るんだよって。それは……理解は出来る。自分がやって謝るのも堪えるから。
「俺が慣れない仕事で苦しんでいる時にさ。お前は楽しそうで輝いて見えた。なんで俺だけって気分にもなったんだ」
「そう」
それを耐えて頑張ったのが和樹や部長たちなんだろう。そりゃあ強いはずだ。
「今の日本のシステムの出世はな。マネジメントが出来なければ上には行けないんだよ。給料も増えないし下っ端では稼げないんだ。だけどみんながマネジメントに向く訳じゃない」
そりゃそうだ。潰れて遠くの支店に異動とか、部署を異動してる人もいる。そんな人はたくさん俺も見てはいる。営業は結果が数字で目に見えるからなあ。
「彰人と同期でヒラの人たくさんいたのに、あなたは役職がついてた。出来ると思われたからでしょ?」
「フン。人にモノを教えるのが上手かったからだな。それとマネジメントは違うんだよ」
「そうなのか……延長線上の気もするけど」
「俺はそうじゃない」
彰人は俺みたいにこの会社が好きで入社してなかったのかも。いやいや、俺はこんな話をしをしたいんじゃない。
「彰人の言い訳を聞きに来てないんだ。それだけなら俺帰る」
「待って!殴ったのは悪かった。他人に、恋人に手を上げるなんて許されることじゃない。本当に悪かったと思ってる」
「それはもういいよ。じゃあね」
立ち上がった俺の腕を掴んで見上げた。クソッ力入れて引いても抜けやしねえ!
「違うんだ!俺に足りないものを自覚したんだ。だから、前と違ってきっと俺たちは上手くやれる。お願いだよ戻ってくれ」
ため息しか出ねえ。俺が必死に連絡してた時にこの言葉があればな。もしかしたら許してたかもしれない。だけど、俺は和樹を知った。恋人ってこんなにいいものなんだって知ったんだよ。
背景はともかく、ものすごく努力する人は純粋に尊敬出来て憧れる。そんであの包容力だな。小さなことは気にせず、智也の好きなようにと言える気持ちの大きさだ。
俺も近くにいれば変われるんじゃないかと夢が見れられる、あの雰囲気が大好きなんだ。
「ムリだ。和樹という素敵な人が俺を変えた。以前には戻れないよ。弱くて何も言えずなんでも言うこと聞く俺はもういないんだ。彰人」
「そ、そんなこと…言うなよ」
彰人は必死に俺に訴えていたけど、俺は聞く気もないから冷たい声色で話していたんだ。すると手の力が抜けてドサッと座ってうなだれた。
「なあ、俺はどこで間違った?」
「きっと最初からだ。俺を子供と見下してた部分が始めからあったんだよ、彰人はね。恋人ではなくてペットくらいに思ってた部分があったんだ」
「はあ?そこまでは思ってないよ」
顔を上げて否定した。いやいや似たようなもんだろ。
「俺の全てを否定して従えって言うのはそうだろ?」
「そこまでしてないはずだ……でもそう思われてたのは認めないとだな」
「ああ。後半の二年は俺は辛いばかりだった。彰人に俺を見て欲しいしかなかったよ」
俺はいつからそんな……と力が抜けきって失笑していた。
「今更だが最初からじゃない。仕事で俺の手が離れた頃からだと思う」
「やっぱり二年経った頃だよな」
「ああ。追いつかれる不安でおかしくなっていたんだと思う」
ぐったりしてる彰人を見ても「かわいそうだ、なんとかしなきゃ」と思う気持ちが俺には沸かなかった。もう完全に彰人から心が離れたんだなあとしか。
「俺忙しいからもう帰る」
「ああ……」
「もう会うこともない。さようなら津村さん」
俺は伝票を持ってレジで支払い外に出た。まだ少し引っ越しの片付けはあったけど、明日もあるから今日は諦めた。気分は最悪だけど、彰人を拒否して流されなくなってるのには自分が驚いたね。和樹と過ごすうちに変わっていったんだな。支社とは違う、本社の同僚の雰囲気、環境も関係あるのかもね。
商店街の外れの公園が見えてきて、もうすぐ部屋だななんて思ったところで、腕で首を締められた!グウッ
「智也。やっぱりお前がいないと俺はダメなんだよ」
「ぐぅッあ、彰人?離せよ!」
「イヤだ!俺のところに戻ると言うまで離さない!」
暴れることも出来ず、そのままズルズルと誰もいない暗い公園の……ぐぅッ…苦しい!奥の街灯の明かりの少ない場所に引きずられ、近くのベンチに叩きつけられた。
「離せ彰人!た、たすけ……て…誰…か!」
「黙れ!俺を選ぶと言え!」
く苦るしっ!諦めたんじゃねえのかよ!
「言わねえよ!ふざけんな!!……っ」
「言えよ!俺はお前がいないともうダメなんだよ!」
「いやだ!」
言え!と怒鳴られて頬を強く平手打ち。痛ってえ!涙が……怖さと痛みで視界が揺らぐ。
「すぐ手を上げる彰人は嫌いだ!」
「お前が聞き分けがないからだろ!俺のこと好きだろ?なあ智也」
「嫌いだ!」
「嘘だ!!お前が俺から離れられる訳ねえだろ!」
「グッ…助け……っウグッ!」
助けてと叫ぼうとしたら口を塞がれて、更に首も手で押されて!うーうーっ!声が出せない!
「俺はお前がいないとダメなんだよ。言えよ!彰人愛してるって言え!!」
「ヴーッ!グウーッ!かっ…ず…」
和樹!和樹!助けて!かずきぃ!!イヤだぁ!!と出せない声で叫んでいた。その間も何度か頬を打たれて俺どうなるんだよ……助けてかずき……
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