ゆるゆる王様生活〜双子の溺愛でおかしくなりそう〜

琴音

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四章 イアサント共和国 筆頭国イアサント王国

2.視察と愚痴

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 本日は鍛錬場を視察。以前とは気迫も技も格段に上がっているのが素人の僕にすらわかるくらいになっていた。

「サミュエルすごいね!」
「はい、やはり他国との合同訓練がいい刺激になったのでしょう、目つきも取り組みの気概も変わりました」
「そうだね、みんな動きがいいもの」

 魔術士のたちとの連携もかなりよく、他国の騎士や兵士たちの魔力のない戦い方をヒントに魔力を組み合わせて剣から炎や氷、水などが出る工夫をしていた。

「あれは……」
「ああ、新技です!魔力と剣技の合せ技で、魔獣で試しましたが一刀両断でした。まあなんですか……お金にならない感じには退治出来ました……」
「あれじゃあ……そうだろうね」

 的が大変なことになってるもの。サミュエルは剣が当たると魔物は燃え尽き、氷は固まり弾けて粉々、水は筒で刺したように大穴が空いて必要な内臓がなくなった。風は細かく切り刻んで売り物にはならなくて……とボリボリ頭を掻いていた。

「せっかくの魔獣退治だからお金になれば騎士の飲み代になるかなぁ……なんて思ったんですがね」
「もう少し手加減すれば?」
「あはは……出来ればよかったのですが、まだそこまで制御は出来ていません。もう少し訓練を要します」

 戦では周りに同胞がいますから、その者も退治になるため今訓練中だそう。仲間退治してどうする!だね。騎獣の騎士の訓練も見に行った。

「うわあ!すごいね!こんなにも……」
「ええ、急発進、急停止は出来ないと困りますからね」

 僕かなり乗れていると思ったけど前言撤回。ひよこ並みだよ。なにあれ?透明の壁でもあるのかと思うほどの止まり具合だ。ってか乗ったまま戦っている!おち……あっ落ちるよね。下には落ちても大丈夫な魔法陣が展開されてたよ。だよねぇ……本当の戦闘は安全帯を騎獣と繋いて落ちないようにはするそうだ。死んだらこうなると叩き込んでるんだそうで。

「おらあ!気合入れろ!」
「はい!」

 落ちた兵士や騎士はまた立ち上り飛んで行った。戦闘訓練は順調だね。レオンスとサミュエルといい感じだと視察を続けていた。その頃双子は……

「なあ、アンセルム。ルチアーノにオーブ使わせたくないんだよ。なんとかならんか?」
「なるかよ。バカだろジュスラン」
「にべもなく……俺からも頼むよ。アンセルム」
「はんっ!あったらこちらが聞きたいくらいだ、バカども!!」

 だよなあ……分かってはいるんだよ。だけどルチアーノにはさせたくはない。あのかわいい笑顔がなくなる気がして怖いんだ。カチャカチャと器具を操作して何かの実験しながら俺たちの懇願を無視する。

「ダメか……」
「ダメだ。使わなければこちらの被害が甚大になるのは目に見えている。そんな事は選択出来ない」
「うん……」

 ドナシアンの騎士団が整うのはあと少しだろう、必ずこちらに来る。ベトナージュも選択肢に入りそうなもんだが、もうあそこは人族の姿をしてはいない。最悪手がなくなったらだろうと俺は考えている。それにあそこはドナシアンがいくら大国とはいえ、どのくらい兵士を増やせば対等になるか?何十年、何百年も先だな。あそこは二十国全部で向かってくる。兵士の質も全く違うし。訪問時手の内は全部は見せてはくれなかったが、そもそもが違うと感じる騎士、兵士たちだった。

「なあ……俺はあの純粋に人を信じて笑うルチアーノが好きなんだよ」
「知っている、俺もだ。こんなにも人を魅了する人がいるのかと驚きだよ」

 人たらしと片付けられない魅力が彼にはあるんだ。見てるだけで幸せだと感じさせる何か……あれは後ろ暗いモノをほとんど見ていないからもあるのは分かっているよと、アンセルムは苦笑い。

「国民にも大人気だしな。俺の時にはなかった歓声が黄色いし」
「ああ、人気の舞台役者の歓声だよあれは」

 きゃあ!!って声が凄いんだ。王を見かけて出す声じゃないんだよ。本当に下々からも慕われるかわいい王様を変えたくはない。

 この一年であいつはベトナージュを真似て孤児を集めて孤児院を作ったんだ。スリや引ったくりで生計を立ててる奴らまで、成人前の子供を再教育している。たまに視察にも行って子どもたちと遊んでやってるんだ。こんな所に王が?と驚いていた子供たちも今や来るのを楽しみにしている。

 反発して暴れていた子供もルチアーノは丁寧に話しかけて大人しくさせていた。あれは俺たちには出来ないことだ。彼らの目線に立ち、一緒に叫び、怒鳴り、大笑い。生粋の王族には出来ない。それに成人過ぎても読み書きすら怪しいヤツは出来るまでいればいいと追い出しもしない。お金が足りなければ僕や両親のを使えばいいと放出。意味が分からん。

「孤児院は成功だったな。ある程度の魔力と学力がある者は市中の衛兵になった者もいる」
「ああ、ルチアーノ樣の力になるんだと志願したらしいな」
「あの孤児院の子供たちはルチアーノ教の信者だよ、あれじゃあな」

 怖いくらい懐いてるんだ。

「だから嫌なんだよ」
「ああ……」

 アンセルムの執務室兼工房で答えの出ない愚痴を吐いて、なんの成果も出ない話し合い。出きないのは分かっているんだが、時々吐き出さないと自分が嫌いになりそうで。

「まあお前らが弱音吐けるのも俺くらいか?」
「仕方ないだろ?もう素で話せるのはアンセルムくらいなんだから」
「側近も幼なじみだがやはり違うか?」

 ステファヌは苦笑い。

「ああ……弱さは見せたくないって思ってしまうんだ」
「そうか」

 そうなんだ。アンセルム以外は王になった俺たちに一線引いた気がした。もう友達ではないという見えない壁がある気がするんだ。寂しくもあるが、これは大人になったからかと諦めてはいる。

「ルチアーノ樣はかわいいし、ベルンハルトはそれこそ一緒に住んでないだけの番だし、その様な振る舞いだ」
「うん……ルチアーノも信頼してるしね」

 ステファヌの言葉通りベルンハルトは暇が出来るとやって来る。そしてルチアーノをかわいがって離さない。ルチアーノも彼を愛しそうに見ているのは悔しいが、番になってないけどアンセルムを大切に思っているのと同じかもと考えてはいる。こうやって素が出せてるしな。

「アイツに聞いたら俺たちとは違う愛情があるそうだ。愛の意味は俺たちとは違うけどって」
「ああ、ベトナージュの王族に後ろ髪惹かれるような愛情を感じてたでしょ?近いよと」

 フンと鼻を鳴らし、

「俺は分からん。あそこでかなり抱いたがそんなふうに思うヤツはいなかったよ。かわいいかもと思った者はいたけどね」
「あはは、アンセルムはアンセルムか」

 俺はピエリックだけでいいからなと惚気けた。俺は病的に好きなんだよ、番の本能がお前らより強い。騎士の激しい独占欲に近いんだよと笑った。

「番を持つってこんなにも苦しむことがあるとは想像もしてなかったよ。相手に何でもしてやりたい」
「だろう?この苦しみさえ幸せだろう?」

 あははとステファヌは笑った。

「うん……本当に愛しくて監禁しときたいくらいだし、こんなに考えていることすら幸せなんだ……俺こんなだったっけ?」
「番の本能は全てを凌駕するんだ。お前らは先祖の呪いもあるから余計だ」

 あはは……

「呪いとか言うなよ」
「もう呪いだろ?兄弟で同じ番を一番にして、ルチアーノはお前らを同等一番にしている。有り得んよ、俺から見ればな」

 ステファヌはう~んと考えて、

「双子だからかな?」
「双子だからだけじゃねえだろ?こんなの聞いたことないからな。俺が勧めたけど他にどちらかが本当の番を見つけるかと考えてたよ」

 俺もそれは考えた。他の双子は別々の番を見つけるのが普通。こういった家の事情があったとしても形だけで相手は……なのに他の番なんか要らないと本気で思うし……呪い?

「ステファヌ、お前は他の番欲しいか?」
「いや……ルチアーノだけでいい。お前と共有の番なのに嫌って気分は少ない」
「だよなあ……やっぱ呪い?」
「呪いか?」
「呪いだろ」

 それでいいんじゃないの?三人で一つって感じで国民にも愛されてるしね。そこは深く考えるな、もし新しい番が見つかればそれはそれだろ?

「あ~そうだな。見つからない気はしているけどな」
「俺もだ」

 愚痴はすんだか?ルチアーノ様はもう視察から戻る、仕事の時間出ていけ!と言われて部屋を後にした。

「あ~なんかスッキリしたかも」
「ああ、気合い入ってるルチアーノには言えん」

 なんとなく足取り軽く執務室に向い、オーブを使わないといいなあとかぼんやり思った。

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