ゆるゆる王様生活〜双子の溺愛でおかしくなりそう〜

琴音

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一章 双子の王と王弟 

11.毎日覚える事が多過ぎで……

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 人の気配に目を開けるとジュスランがベッドの縁に座り、僕を見ていた。

「どうしたの?具合はどう?もう大丈夫なの?」
「うん、具合は悪くない」

 起き上がろうとする僕をそっと胸に抱き寄せ頬を寄せる。

「まだ夜明け前だよ……ふあ~っ」
「ごめん……会いたくて」

 この間みたいに求めては来ず、ただ抱いて僕を感じていたいみたいな?僕まだ眠いからジュスランの胸が気持ちいい。

「ジュスラン僕まだ眠いんだ。一緒に寝よ?」
「うん」

 彼は布団に入り抱き寄せられて、目が合うとチュッと軽く唇に触れた。照れて真っ赤になり、はに噛むように微笑んでいる。その愛くるしい微笑みに僕の心臓はドクンッと脈打った。……僕この人やっぱり好きだ。身体の中から好きって思えた。ヨハンへの好きとは全く違う好き……これなに?

 あんまりにもかわいくてジュスランの頬に手を添えて僕からチュッてした。すると彼の目が赤くなり、見る見る涙が溢れ目尻から零れた。え?何で泣くの!

「ジュスラン……?どっか痛いの?」
「うん……胸が痛い」
「え?大変薬師を!」
「違うんだルチアーノ」

 起き上がろうとした僕を掴み愛してるって。どうしたの?僕も好きだよ……彼からは安心するような……愛おしいという感情が乗ったような、いつもの欲情した香りではない優しいお花の様な香りがする。その香りに僕は力が抜けた。

「ジュスラン……僕もだよ」
「ふふっ……グスッ嬉しい……」

 まだ番にもなってないのにこんなにも惹かれてしまっている。なぜこんなにも愛しいんだろう。その時ドアが開く音と、足音がヒタヒタとして枕元で立ち止まった。

「ジュスラン……お前」
「ステファヌごめん。もう俺……無理なんだ。ルチアーノと一緒にいたい。いつも一緒に……グスッ」

 僕に抱きついて泣きながら絞り出すように言葉を紡ぐ。ステファヌは、はあ……と肩から息を吐くかのようなため息をついて、

「ルチアーノ俺も一緒に寝る。隣空けて」
「ふえ?……うん」

 ステファヌは布団に入ると僕の背中に張り付いて、

「俺ね、我慢してたんだ。お前に好かれたくて嫌われたくなくて……愛してる。俺を愛して……お願いルチアーノ」

 ステファヌからも同じ様な香りがする。実は双子だから彼らは似た匂いがするんだよね。だけどほんの少し違う。花の甘さと果物の甘さの違いという感じかな?だから僕はそっくりな外見でも間違いはしない。ステファヌのとはしてないけど愛を強く感じるし、少し震えてるのが分かった。

「二人とも予知夢だけで僕でいいの?別にお飾りで子供だけ作って他に相手を……」

 言葉を被せる様にジュスランは、

「他は要らない。魂がお前が欲しいって言うんだ。だから俺を愛して」

 僕は胸に抱かれながら、彼が嘘は言ってないのが何故だかは分からないけど分かる。本当に僕が好きだと伝わるんだ。ステファヌも同様に。

「ねぇルチアーノ、俺ともしてよ」
「うん」

 うん?また即答かよ僕は!……はあ、僕も魂なんだろうな。二人がとても愛しくて、こうして抱かれてるのが心地よくて安心出来るんだ。たった数日なのに肌が馴染むようで、これが当たり前のように。冗談だと聞いていた「運命の番」はあながち間違っていない様に感じていた。

 ジュスランは僕に対する感情の制御が上手く行っていないと思う。背中で微かに震えながら僕を抱きしめるステファヌも。……僕も冷静なつもりなだけだしね。これは何とかしないと王としての執務もその内おかしくなるかも知れないな。ふむ……

「あのね……二人は僕への気持ちを制御するの辛い?」
「当たり前だろ?無茶苦茶辛い……愛情も性欲も厳しい。我慢出来てるのは王室の躾の賜物だよ。だけどもう何処かで何問題行動するのは時間の問題だと感じる……」
「ジュスランも?」
「うん……同じだ。俺は明日にもしそうだよ」

 温かな二人の体温を感じて嬉しいけど、こんなに辛そうなのは僕も辛くなる。よし!……腹括ろう。僕は王になり二人の子供を作る。心がそれでいいと言ってるし、時間の長さなんて関係ない。だってこの求め方は異常だよ僕も双子も。たった三日で離れ難くなってるんだもの。まるで番に向ける感情のように感じる。父さんと母さんのように。

「ねえ……僕を抱いて欲しいんだ。番になって下さい。よろしくお願いします……」

 僕は二人に噛まれたいし噛みたいんだ。

「は?あ?良いのか!」
「うん。辛そうな二人を何とかしてあげたいんだ。噛めば変わるかもしれないじゃない」
「マジかぁ……今から抱いていい?」
「ジュスラン!これからじゃ時間が足りん明日にしろ。俺は明後日ね」
「……仕方ない。それでいいか」
「ふふっ優しくしてね」

 当たり前だ!と二人は納得して僕に抱きつくと穏やかな優しい香りが僕を包み、目を閉じるとすぐに眠りに落ちてしまった。


「おはようございます。ルチアーノ様、お二方も」

 声に眠い目を擦りながら開けると、こめかみに血管が浮いて怖い顔の我々の側近ズ。

「……我らの目を盗んでお二人は全く!」
「ふあ~っ……ルチアーノはいいって言ったもん!ね?」
「あはは……これから毎日一緒に寝ようねって……」

 更に眉間に深いシワが……怒りで三人の背後が歪んで見えるね。何か漏れてるんだろうなぁ……四日目にして他人の魔力が感じられるようになったね。でも怒りが見えるのが最初ってどうよ?

「三人ともお子を作る気はないと?」

 口角が歪んで歯軋りしてるように……怖い。

「んな訳ねえだろ?する時はどちらかは自室にいるよ……多分」

 おお……その言葉に三人の背後の魔力が赤から黒っぽくなったよ……更に怖い。

「そうして下さいませ!ルチアーノ様に負担を掛けるやり方は謹んで下さい!!」
「分かったのか!馬鹿共!」
「はい!!」

 恐怖に抱き合って三人で叫ぶように返事した。怖いよこの側近たち。二人は引きづられるように自室に帰って?あら?何で中の扉から出れるの?レオンスに尋ねると、

「ああ、両隣が二人の部屋ですからね」
「ああ……あ?入口の騎士さんに惑わされてちゃんと見てなかった!」
「はい。このあたりは一度来てましたね。その時この部屋の前には騎士はいませんでしたから」

 そういう事か。慣れてないから全部同じに見えてしまって……もう少し注意して周りを見る事にしよう。それから朝食を食べて午前中の前半は勉強して、後半は行儀見習いの時間。

 これは……まあ……ね。仕方ないね。今日の朝まで適当に食べてて……カラトリーも双子の見様見真似で、僕一人になると何も出来なかった。

「ルチアーノ様。カラトリーは外側からと覚えましたね?では昼食からはお二人を見ないでご自分で頑張って下さい。どうしてもの時のみお二方の手元をを見るように!」
「はい。分かりました……」
「違います!」

 強い言葉に、

「分かった」
「はい。本日はここまで。明日も同じ時間ですので、よろしくお願い致します」
「うん、分かった」

 マナー教室の先生はレイモンさん。マナー教室は厳しかった。他国との事もあるからキチンと覚えなくてならないからね……手を叩かれすぎて痛いよ。昼食時に二人が手を擦っている僕に気が付いて、

「手が赤いな?どうした」
「マナーの先生にね……僕出来なくて」
「ふ~ん……ルチアーノおいで」

 立ち上がりジュスランの側に行くと手のひらを僕の腫れ上がった手の甲に触れた。すると温かい?

「はい、終わり」
「うん……?」

 パッと離された手の甲は元通り。すごいね魔法!

「反対も出せ」
「うん」

 一瞬で治療終わり。

「お前、魔術訓練はまだか?」
「うん。今日の午後からなんだ」
「そっか……お前は浄化と治癒系だから覚えれば自分で出来るからな」
「へぇ!なら頑張る」
「うん。ココにちゅうして?治したからさ」

 えっ?……ブワッと顔に熱が……照れながら頬にチュッてした。ジュスランは蕩けて微笑んだ……何てかわいい顔をするんだろう余計恥ずかしい。すると後ろをツンツンとされて振り向くと、

「俺何もしてないけどキス欲しい……ダメ?」

 ウッ……かわいくてチュッとした。ステファヌも何て幸せそうな顔するんだよ!二人ともかわい過ぎ。

「ルチアーノありがとう……えへへ」

 なんとも言えないラブラブな空気が食堂に広がり、皆の目もあって恥ずかしい……でも喜んでくれる二人を見ると僕も嬉しかった。

 昼食後は魔術の訓練。初めは手のひらに火、水、風、光を出す訓練。僕は光の属性が強めで他は平均。これは生活魔法で日常使うものなんだそう。これを習得しなければ浄化と治癒の魔法も発揮出来ない。この訓練で魔力が身体を流れるのを感じ、安定して放出出来なければならない。

「火の大きさは一定に。火が強すぎますし、揺らぎ過ぎです」
「はい!」
 
 くう!難しい。魔力の流れを意識して一定にする。集中しないと……うわっ!業火になるね……先生燃やしちゃう。

「ルチアーノ様!私を焼き殺す気ですか!」

 さすがアンセルムの部下だね。オクタヴィアンは反射の様に防壁張った。

「ごめんなさい……頑張ります……」
「はい!初めからもう一度お願いします」
「分かりました!うぬぅ……」
 
 午後は休憩挟んで全部魔術訓練!さすがに疲れたよぉ!ヘロヘロになって食堂に。

「クックッルチアーノお疲れ……」
「目が死んでるな。キツかったか?」
「うん。制御ってこんなに難しいとは思もわなかったよ。二人はサラってやってるからさ」

 だろって二人は笑う。

「俺たちは子供の頃からやってるからな。まあ、頑張れ」
「うん」

 夕食を食べながら二人にコツとか聞いたんだけど、天才に聞くのは間違いだね。この二人は何となく制御の仕方の感覚があったそうで、苦も無くこなしてたらしい……ムカつく。他もなんの役にも立たない感覚に頼ったアドバイスだけだった。クソっ!

 食事が終わりお風呂で念入りにギーたちが洗ってくれて、イレールさんとお休み前のお話タイム。

「あの……良いのですか?まだ来て数日で……」
「うん。うまく行かなくても番になるだけだしね」
「そうですが……番になるのは決定事項……でも早すぎませんか?お二人ともっと分かり合ってからでも良いのでは?」

 そうですねと返事して……なんて言うのかな。僕も二人がとても愛しくて時間なんか関係なく、三人で居るのが当たり前に感じているんだと話した。

「なら何も申しません。そんなにも惹かれ合うとは少し羨ましくもありますね。ふふっ」
「僕も何でこんなにもと思いますが、離れろと言われたらおかしくなりそうなくらいには好きなんです……」

 あの二人のどこが好きですか?等と照れながら話していた。

「おや、こんな時間。お休み下さいませ。ルチアーノ様」
「はい」

 イレールさんはベッドルームに水差しや諸々置いてくれた。

「不測の時はお呼び下さいませ。寝番が居ますから」
「ありがとうございます」

 一人になるとベッドに入りジュスランを待った。天井を眺めて……天蓋のベールを止める金具さえ装飾が施されて凄くステキ。支える柱も頭の所の装飾も……なんと豪華だろうと触れたり眺めたりしているとガチャリとドアが開く音がした。ドアが閉まりヒタヒタと足音がして……ギシッとベッドに座る音が。

「ルチアーノお待たせ」
「ジュスラン……」

 彼は欲情の強烈な匂いを蒔き散らしている。多分僕も。ふふっと微笑みながら僕の頬を撫で顔が近づき……キスだけで頭は痺れて……激しいジュスランのうぅんぅ……堪らない……
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