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一章 双子の王と王弟
7.これからの事 前編
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アンセルムさんはテーブルの向い側に座り薄く微笑んで、双子は僕を挟む様に三人で座り、王は僕の肩を抱き優雅な所作でお茶を飲んでいる。
朝の……してる時とは違う王族らしい姿……
ジュスランの乱れた姿は美しかった。綺麗で逞しい身体は見惚れるほどで、激しさと快感は癖になりそうなくらいだ。僕はヨハンと離れて五日、会ったばかりで抱かれたからだけではない、見てると照れる様な恋心の様なモノが湧き上がる。……あれ程ヨハンとの別れを悲しんだのに、自分の軽薄さに少し悲しくなった。
ジュスランがカップをテーブルに置くと、僕に視線を合わせて微笑んだ。
「すまない。どうしても他のものには聞かせられない内容でな、アンセルムの研究室に来たんだ。ここは遮音防壁が張られていて、音漏れの心配はないし、護衛騎士も外に立たせたから安心」
ああ、だから護衛騎士だったのか。城の中なのに不自然だと思った。この部屋はまあ、色んなモノが棚にあって作業台も雑然。この応接セットも休憩用なのだろう。ジュスランは優しく微笑んだまま僕に話してくれる。
「あの……そんなに重要な?」
「ああ、とても重要な事なんだ。俺たちの執務室は働いている者がいて落ち着かないしな。防壁を張った部屋の向こうに人が動いているのは気が散る」
「はい……」
そう話すジュスランの優しく微笑む瞳の中に何か複雑な感情が揺らいだ気がした。では話しを始めましょうとアンセルムさんが声を掛けた。
「ルチアーノ様。あなたを迎えに出たのもこの待遇も不安だったでしょう。他と違う対応で何されるかと。ふん、この王は既に何かをしてますが!」
グッと言葉が詰まったが言い訳を、
「いや……あのね?ほら来た時確認しただろ?あれでさ……頭壊れちゃってさ。もう執務中も抱きたいしか考えられなくて……身体は精神力じゃもうね?」
「お前は……はあ」
アンセルムさんは深い溜息とステファヌ様もあそこまでやらなくても分かったはずだ、調子に乗ってヤダヤダと。
「申し訳ありませんでしたね。初日からあんな……このクソ王はったく」
「ごめんねルチアーノ。でも本当に可愛くて良かったよ。んふふっ」
僕の頬を撫でるジュスランを、スパーンとステファヌが立ち上がり引っ叩いた。
「クソ兄貴!」
「だってぇ……お前も股間があれだったろ?」
「俺は我慢した!お前はいつも我慢が足りないんだ!下半身の制御くらいしろよ!」
それから今までの下半身事情をステファヌは延々と責めた。夜伽の者以外に手を出すなと。
「だってみんな可愛いんだもん。仕方なかろう?」
多少苛ついたであろうアンセルムさんが二人を止めた。
「ゴホン!やめろお前ら!痛い目を見たいか!」
「いえ……」
焦って表情を取り繕い僕に向き直り、
「んっんっ……ではなぜこのような事になっているか説明いたします。お前らは黙ってろよ?」
「はい……」
咳払いをしながら凄い顔で睨みつけると、双子は大人しくなった。なんかキャラ違くね?
「え~とまずこの国の、イアサント王国の成り立ちはご存知ですか?」
「はい。学校で習ったくらいですが」
「よろしい。では五国のうち我が国がこの地に初めて建国したのはご存知ですか?」
「はい。初代の王が家臣の方たちとここを開拓して街を作りました。そして他国との交易と共に人が周りに移り住み、住人が増えて町の形が出来て、その内国になって行ったと習いました」
うふふっと微笑んだ。
「あなたは真面目に学校に通われたんですね。おおよそ自国の事は知っていても、全体の歴史の流れを把握してない方が変体の方に多く見受けられるんですよ」
「そうなんですか」
ニコニコ話していたがスッと真顔になり、横を向くと二人も真剣な……ちょっと怖い顔に。
「ではここから本題です。今五国は端的に言うと瀕死の状態です。後何年持つか我らにもわかりませんが……そう遠くないうちにこの土地は氷と雪に覆われてしまい、皆住めなくなります」
「は?ここが?」
「はい」
この五国は温暖な気候で、北も寒いといっても冬にリンゲルの奥地で一メートルも雪が降るかどうかだ。平地は薄っすらと積もる程度。寒さも大したことはない。南のランベールは乾いた風のため暑いけど住みやすい地域と聞いている。東西はいうに及ばず……そんなこの地が極寒に??
「冗談ですよね?」
「冗談だったら良かったのですがねぇ」
「……マジか」
つい、普段の言葉が口から漏れてしまった。
「マジです。この事は極秘中の極秘。表に漏れれば暴動が起きるでしょうね。皆、座して死にたくはありませんから」
ですよね……場合によっては寝たら二度と目が覚めず、氷の中とかって事だよね?庶民が逃げるとなると……魔物に怯えず出るには船くらいだけど……漁船で他国まで行けるのかな?無理っぽいな。頭の中は不安と逃げ方を考えていた。
「それをどうにかする術はあるのでしょうか?」
「はい。昨日までありませんでしたが、嬉しい事に今はあります」
「おお!それは良かったですね!……え?昨日……?」
あ~れ~?これ僕生贄的な何かかな?だから死ぬ前くらいとこんなに大切にされてたのかな?あはは!張り付いたような笑顔で固まり、血の気が引いて……気が遠くなって来た……
「それでですね……あれ?ルチアーノ様?」
「はい。生贄ですね?」
絶望しながら答えた。
「は?」
二人もこちらを向いて、ジュスランが、
「なんで生贄なんだ?」
「だってこんなに待遇が良かったのは、やっぱりなにか魔法で魔力吸い取ってとか、怖ろしい魔物に献上とかなんですよね?……あ~あ、僕の人生は短った。もっと人生楽しめば……あはは、はぁ」
三人は失礼な顔して見合って爆笑!何でだよ!ガバッとジュスランは僕を抱き締めて、
「そんな事しねぇよ!こ~んなかわいいお前を生贄とか!あはは!」
「そうだぞ?何言ってんだ全くお前は。俺はまだ抱いてないのにやめてくれ」
クックっとツボに入ったのかアンセルムさんは笑い続けてる。む~う。
「ハァハァ……面白かった。あなたには魔力供給をして頂きます。まあ、魔力を奪うからあなかち間違ってもいませんけどね」
「ゲッ!やっぱりそうなんじゃないですか!」
「強制的に吸い取って殺すなんて事はしませんから」
「本当ですか?」
説明を聞けば城の奥にある供給の間で、オーブと言われる球体に魔力を注ぐのだそうだ。現在その供給を見たことがある者が居らず一回で終わるのか、何回もするのか分からないらしい。
「先代が身罷られからさっぱりで、口伝のみなのです。私も最後の供給時は子供でしたので立ち会っておりません」
「はあ……やってみないと分からないと」
「はい。申し訳ありません」
何故そうなったかも一通り聞いた。
このイアサントは十年くらい前に疫病が流行った事があったそうだ。最初はただの風邪くらいに思っていたが、次第に城下の者が死んでいくように。薬が効かず治癒魔法も効果が出ずにいた。病は貴族、庶民を選ばない。沢山の貴族も王族も亡くなった。その中にアンセルム、双子の父も含まれた。
その為に情報共有が出来ないまま不明になっているのだそうだ。双子の母は幼い頃にやはり病で亡くなっていて、王は後添えを貰わずに……まだ成人前の二人は皇太子として執務をこなし、成人後兄が王に。この国の貴族はこの隙に王位を略奪等と考える者も居らず、二人を助けて今に至る。
ある程度落ち着いた頃、予定時期の為オーブへの供給をしたが受け付けず、あり得ない程絶望したそうだ。事情を知る大臣職の貴族も動員して文献を調べたり色々試したりしたが、なんの効果も文献も見つからずにいた。そんな時に予知夢があったんだそうだ。
……ああこの双子はどれほどの無力感を抱いたのだろう。ずっと肩を抱いているこの腕は、計り知れない重責があったんだね。何となくジュスランの手を撫でた。
「ルチアーノ……?なんだ?」
「この手は大変な重責を背負っているんだね」
ふふっと微笑み僕の手を握り返し、
「そうだ。だからお前が来てくれて嬉しいよ。チュッ」
「うっキスはやめて……」
ゴホン!とアンセルムさん。
「え~もう一つあります」
「え?供給すればみんな助かるからそれでいいのでは?」
「はい。貴方が生きている限りはね。ですが未来永劫この国、五国は繁栄しなくてはなりません。ですからお子を……あのジュスラン様たちと作って頂きたいのです」
「は?僕が産むの?王様の子を?なんの冗談を……?」
「いえ……ジュスラン様たちが産むのです」
「はあ??」
何故ジュスランたちが産まねばならないのかを、アンセルムさんは僕の体質の話しと共にしてくれた。
「二重紋とは王族にしか出ない魔法陣です。これを見てください。普通の人族、獣人に出る魔法陣がこちら。隣が二重紋の魔法陣です」
差し出された紙には通常紋と二重紋が書いてあった。通常紋は丸の中に呪文があるシンプルなモノ。二重紋はその名の通り外側にもう一つ丸で囲った呪文と、花びらのような縁があり、うなじ全体に出るとても美しい魔法陣だ。花のような部分は人により少し違うのが特徴らしく、それによってフェロモンも違うのではないかと言われている。
「第三王子であった始祖は、上二人より魔力量がかなり多く、皇太子であった第一王子、次の第二王子は王としての資質が足りないのでは?と常に周りの貴族、身内の王族に揶揄されておりました。確かに性格も悪く魔力量に関係なく資質は疑わしかったのは確かだったようです。その為始祖は、暗殺未遂を日常茶飯事でされていており、周りの側近や側仕え、友人たちが守っていました」
おお……王族怖い。
「しかし、ある日の他国を招くような祝賀会で事は起こりました。始祖の杯を酔って奪った客人がそれを飲み亡くなったのです」
コワッ……アンセルムさんは話しを続けた。
「そんな事件があったにも関わらず始祖の国の王は、金と権力で捻じ伏せ、なかった事にしたのです。その事に絶望を感じた始祖は腐っている国は要らぬと国を捨てました。それに賛同した私達の子孫もここに……」
「はあ……壮絶なお話ですね。庶民には分かりかねますが」
哀しそうに微笑んだアンセルムさん。
「権力と金は人を狂わせます。長い時があれば特にね。それが当たり前になり、人は何でも思い通りになるモノと勘違いします」
「そんなものですか……」
「はい。先代王や貴族が身罷るまではここも近いものがありました」
「はあ……それはまた」
「ふふっではなぜ双子があなたの子を産まなけれ……」
アンセルムさんが話そうとしていると、ジュスランが割って入った。
「これは俺たちに関わる話しだ。俺から話す」
「かしこまりました」
そう言うと彼は立ち上がり新しいお茶を入れ始めた。え?随分時間が経ってるのに熱々のお湯がポットから?魔法凄い。ジュスランが僕の方を向き、
「よく聞けルチアーノ。お前は俺たちの父方の……始祖の血を引いている」
「はあ!?何を……あはは。嘘も大概にして下さい。僕はリンゲルの片田舎の獣人ですよ?そんな事ある訳ないでしょ!」
「ならそのうなじの二重紋はなんだ?」
「ゔっ……なにかの間違いで……かな?」
はあとため息をついて、
「そんな訳無いだろ。今までの話しを聞いていたか?」
「はい。でも……」
「まあ聞けよ」
「はい」
それから僕のうなじに他と違う王族特有の魔法陣が現れたのかを、ジュスランはゆっくりと説明してくれた。
朝の……してる時とは違う王族らしい姿……
ジュスランの乱れた姿は美しかった。綺麗で逞しい身体は見惚れるほどで、激しさと快感は癖になりそうなくらいだ。僕はヨハンと離れて五日、会ったばかりで抱かれたからだけではない、見てると照れる様な恋心の様なモノが湧き上がる。……あれ程ヨハンとの別れを悲しんだのに、自分の軽薄さに少し悲しくなった。
ジュスランがカップをテーブルに置くと、僕に視線を合わせて微笑んだ。
「すまない。どうしても他のものには聞かせられない内容でな、アンセルムの研究室に来たんだ。ここは遮音防壁が張られていて、音漏れの心配はないし、護衛騎士も外に立たせたから安心」
ああ、だから護衛騎士だったのか。城の中なのに不自然だと思った。この部屋はまあ、色んなモノが棚にあって作業台も雑然。この応接セットも休憩用なのだろう。ジュスランは優しく微笑んだまま僕に話してくれる。
「あの……そんなに重要な?」
「ああ、とても重要な事なんだ。俺たちの執務室は働いている者がいて落ち着かないしな。防壁を張った部屋の向こうに人が動いているのは気が散る」
「はい……」
そう話すジュスランの優しく微笑む瞳の中に何か複雑な感情が揺らいだ気がした。では話しを始めましょうとアンセルムさんが声を掛けた。
「ルチアーノ様。あなたを迎えに出たのもこの待遇も不安だったでしょう。他と違う対応で何されるかと。ふん、この王は既に何かをしてますが!」
グッと言葉が詰まったが言い訳を、
「いや……あのね?ほら来た時確認しただろ?あれでさ……頭壊れちゃってさ。もう執務中も抱きたいしか考えられなくて……身体は精神力じゃもうね?」
「お前は……はあ」
アンセルムさんは深い溜息とステファヌ様もあそこまでやらなくても分かったはずだ、調子に乗ってヤダヤダと。
「申し訳ありませんでしたね。初日からあんな……このクソ王はったく」
「ごめんねルチアーノ。でも本当に可愛くて良かったよ。んふふっ」
僕の頬を撫でるジュスランを、スパーンとステファヌが立ち上がり引っ叩いた。
「クソ兄貴!」
「だってぇ……お前も股間があれだったろ?」
「俺は我慢した!お前はいつも我慢が足りないんだ!下半身の制御くらいしろよ!」
それから今までの下半身事情をステファヌは延々と責めた。夜伽の者以外に手を出すなと。
「だってみんな可愛いんだもん。仕方なかろう?」
多少苛ついたであろうアンセルムさんが二人を止めた。
「ゴホン!やめろお前ら!痛い目を見たいか!」
「いえ……」
焦って表情を取り繕い僕に向き直り、
「んっんっ……ではなぜこのような事になっているか説明いたします。お前らは黙ってろよ?」
「はい……」
咳払いをしながら凄い顔で睨みつけると、双子は大人しくなった。なんかキャラ違くね?
「え~とまずこの国の、イアサント王国の成り立ちはご存知ですか?」
「はい。学校で習ったくらいですが」
「よろしい。では五国のうち我が国がこの地に初めて建国したのはご存知ですか?」
「はい。初代の王が家臣の方たちとここを開拓して街を作りました。そして他国との交易と共に人が周りに移り住み、住人が増えて町の形が出来て、その内国になって行ったと習いました」
うふふっと微笑んだ。
「あなたは真面目に学校に通われたんですね。おおよそ自国の事は知っていても、全体の歴史の流れを把握してない方が変体の方に多く見受けられるんですよ」
「そうなんですか」
ニコニコ話していたがスッと真顔になり、横を向くと二人も真剣な……ちょっと怖い顔に。
「ではここから本題です。今五国は端的に言うと瀕死の状態です。後何年持つか我らにもわかりませんが……そう遠くないうちにこの土地は氷と雪に覆われてしまい、皆住めなくなります」
「は?ここが?」
「はい」
この五国は温暖な気候で、北も寒いといっても冬にリンゲルの奥地で一メートルも雪が降るかどうかだ。平地は薄っすらと積もる程度。寒さも大したことはない。南のランベールは乾いた風のため暑いけど住みやすい地域と聞いている。東西はいうに及ばず……そんなこの地が極寒に??
「冗談ですよね?」
「冗談だったら良かったのですがねぇ」
「……マジか」
つい、普段の言葉が口から漏れてしまった。
「マジです。この事は極秘中の極秘。表に漏れれば暴動が起きるでしょうね。皆、座して死にたくはありませんから」
ですよね……場合によっては寝たら二度と目が覚めず、氷の中とかって事だよね?庶民が逃げるとなると……魔物に怯えず出るには船くらいだけど……漁船で他国まで行けるのかな?無理っぽいな。頭の中は不安と逃げ方を考えていた。
「それをどうにかする術はあるのでしょうか?」
「はい。昨日までありませんでしたが、嬉しい事に今はあります」
「おお!それは良かったですね!……え?昨日……?」
あ~れ~?これ僕生贄的な何かかな?だから死ぬ前くらいとこんなに大切にされてたのかな?あはは!張り付いたような笑顔で固まり、血の気が引いて……気が遠くなって来た……
「それでですね……あれ?ルチアーノ様?」
「はい。生贄ですね?」
絶望しながら答えた。
「は?」
二人もこちらを向いて、ジュスランが、
「なんで生贄なんだ?」
「だってこんなに待遇が良かったのは、やっぱりなにか魔法で魔力吸い取ってとか、怖ろしい魔物に献上とかなんですよね?……あ~あ、僕の人生は短った。もっと人生楽しめば……あはは、はぁ」
三人は失礼な顔して見合って爆笑!何でだよ!ガバッとジュスランは僕を抱き締めて、
「そんな事しねぇよ!こ~んなかわいいお前を生贄とか!あはは!」
「そうだぞ?何言ってんだ全くお前は。俺はまだ抱いてないのにやめてくれ」
クックっとツボに入ったのかアンセルムさんは笑い続けてる。む~う。
「ハァハァ……面白かった。あなたには魔力供給をして頂きます。まあ、魔力を奪うからあなかち間違ってもいませんけどね」
「ゲッ!やっぱりそうなんじゃないですか!」
「強制的に吸い取って殺すなんて事はしませんから」
「本当ですか?」
説明を聞けば城の奥にある供給の間で、オーブと言われる球体に魔力を注ぐのだそうだ。現在その供給を見たことがある者が居らず一回で終わるのか、何回もするのか分からないらしい。
「先代が身罷られからさっぱりで、口伝のみなのです。私も最後の供給時は子供でしたので立ち会っておりません」
「はあ……やってみないと分からないと」
「はい。申し訳ありません」
何故そうなったかも一通り聞いた。
このイアサントは十年くらい前に疫病が流行った事があったそうだ。最初はただの風邪くらいに思っていたが、次第に城下の者が死んでいくように。薬が効かず治癒魔法も効果が出ずにいた。病は貴族、庶民を選ばない。沢山の貴族も王族も亡くなった。その中にアンセルム、双子の父も含まれた。
その為に情報共有が出来ないまま不明になっているのだそうだ。双子の母は幼い頃にやはり病で亡くなっていて、王は後添えを貰わずに……まだ成人前の二人は皇太子として執務をこなし、成人後兄が王に。この国の貴族はこの隙に王位を略奪等と考える者も居らず、二人を助けて今に至る。
ある程度落ち着いた頃、予定時期の為オーブへの供給をしたが受け付けず、あり得ない程絶望したそうだ。事情を知る大臣職の貴族も動員して文献を調べたり色々試したりしたが、なんの効果も文献も見つからずにいた。そんな時に予知夢があったんだそうだ。
……ああこの双子はどれほどの無力感を抱いたのだろう。ずっと肩を抱いているこの腕は、計り知れない重責があったんだね。何となくジュスランの手を撫でた。
「ルチアーノ……?なんだ?」
「この手は大変な重責を背負っているんだね」
ふふっと微笑み僕の手を握り返し、
「そうだ。だからお前が来てくれて嬉しいよ。チュッ」
「うっキスはやめて……」
ゴホン!とアンセルムさん。
「え~もう一つあります」
「え?供給すればみんな助かるからそれでいいのでは?」
「はい。貴方が生きている限りはね。ですが未来永劫この国、五国は繁栄しなくてはなりません。ですからお子を……あのジュスラン様たちと作って頂きたいのです」
「は?僕が産むの?王様の子を?なんの冗談を……?」
「いえ……ジュスラン様たちが産むのです」
「はあ??」
何故ジュスランたちが産まねばならないのかを、アンセルムさんは僕の体質の話しと共にしてくれた。
「二重紋とは王族にしか出ない魔法陣です。これを見てください。普通の人族、獣人に出る魔法陣がこちら。隣が二重紋の魔法陣です」
差し出された紙には通常紋と二重紋が書いてあった。通常紋は丸の中に呪文があるシンプルなモノ。二重紋はその名の通り外側にもう一つ丸で囲った呪文と、花びらのような縁があり、うなじ全体に出るとても美しい魔法陣だ。花のような部分は人により少し違うのが特徴らしく、それによってフェロモンも違うのではないかと言われている。
「第三王子であった始祖は、上二人より魔力量がかなり多く、皇太子であった第一王子、次の第二王子は王としての資質が足りないのでは?と常に周りの貴族、身内の王族に揶揄されておりました。確かに性格も悪く魔力量に関係なく資質は疑わしかったのは確かだったようです。その為始祖は、暗殺未遂を日常茶飯事でされていており、周りの側近や側仕え、友人たちが守っていました」
おお……王族怖い。
「しかし、ある日の他国を招くような祝賀会で事は起こりました。始祖の杯を酔って奪った客人がそれを飲み亡くなったのです」
コワッ……アンセルムさんは話しを続けた。
「そんな事件があったにも関わらず始祖の国の王は、金と権力で捻じ伏せ、なかった事にしたのです。その事に絶望を感じた始祖は腐っている国は要らぬと国を捨てました。それに賛同した私達の子孫もここに……」
「はあ……壮絶なお話ですね。庶民には分かりかねますが」
哀しそうに微笑んだアンセルムさん。
「権力と金は人を狂わせます。長い時があれば特にね。それが当たり前になり、人は何でも思い通りになるモノと勘違いします」
「そんなものですか……」
「はい。先代王や貴族が身罷るまではここも近いものがありました」
「はあ……それはまた」
「ふふっではなぜ双子があなたの子を産まなけれ……」
アンセルムさんが話そうとしていると、ジュスランが割って入った。
「これは俺たちに関わる話しだ。俺から話す」
「かしこまりました」
そう言うと彼は立ち上がり新しいお茶を入れ始めた。え?随分時間が経ってるのに熱々のお湯がポットから?魔法凄い。ジュスランが僕の方を向き、
「よく聞けルチアーノ。お前は俺たちの父方の……始祖の血を引いている」
「はあ!?何を……あはは。嘘も大概にして下さい。僕はリンゲルの片田舎の獣人ですよ?そんな事ある訳ないでしょ!」
「ならそのうなじの二重紋はなんだ?」
「ゔっ……なにかの間違いで……かな?」
はあとため息をついて、
「そんな訳無いだろ。今までの話しを聞いていたか?」
「はい。でも……」
「まあ聞けよ」
「はい」
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