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一章 双子の王と王弟 

8.これからの事 後編

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 ジュスランは僕に優しく微笑み抱き寄せて、

「信じたくない気持ちも分かるが、それが真実だ」
「間違いではないと?」
「ああ、俺たちは予知夢でお前を知って待っていた。お前が変体で人族になったであろう時間に、天啓のように頭に映像が見えたんだ」

それから索敵魔法で位置確認して、アンセルムを迎えに出した。だがお前は怯えて魔力の暴発を起こし吹っ飛ばしてなと。それが起こるかもと迎えにやったんだがなあ。チュッと頬にキスして。

「僕はあんなになるとは……」
「うん。俺たちも本当になるとは思ってなかったけどな」
「ええ……不測の事態でしたが、私が行って良かったです。ルチアーノ様が気を失ってからあの辺を修復して戻りました。リスのおじさんは無事ですよ。んふふっ」

 はあ……心に引っ掛かってたんだ。大怪我とかしてたらどうしようと。

「でな。お前は正しくは始祖の血ではなく、お前の国に行ったアデラールと言うイアサントの弟の子だ」
「へえ……あれ?魔法師団の団長様のご先祖様の?」
「ああそうだ。アデラールの直系の子が五百年の間に何処かで野に降りたのだろう。その末裔がお前」

 はあ……なら団長の方が二重紋出そうなもんだけど?ここの王族との婚姻も有ったはずだ。歴史で習ったのに……何で野に降りた末裔の僕なんだ?む~ん?

「ふふっ何で僕なんだと言う顔だな」
「あ、あはは……」

「こればかりは神のみぞ知るだよ。コントロールが出来るものじゃないし、血の濃さも関係ない。それと、お前は知ってるよな?アンとノルンの違いを。てか、お前いくつ?」
「はい昨日十九になりました。アンが出産性でノルンが種付け性です」
「そうか。祝えなかったな……すまない。後で盛大にやろうな?」
「あはは……しなくていいです」

 遠慮するなとふふっと僕の頭を撫でながら、

「誕生日はちょっと置いといて、ここからが重要」
「はい」
「王族にしか出ない二重紋は、どちらも出来るんだ。産むことも種付けも」
「え?アンは種が無いのでは……」

 そう。アンは勃つし出すけど、それだけで番同士がセックスを楽しむだけの……え?僕産むだけでなくて子も作れるの?へぇ……すげぇ。

「驚いているな。これは始祖の国の王族は当たり前だったらしい。付いて来た貴族や城の兵たちは、それぞれ片方しか出来なかったんだよ。彼らも迫害されていたんだ。貴族の当主はわざわざ王族と交わって二重紋になり、そこから産まれた子なのに紋が出なかったんだ」

 城の兵も中級、下級貴族なんだそうで、上級、中級、下級貴族の当主は子を成すことも仕事の内、家の存続を背負っていた。だがあの当時は医療も不十分で、魔法の癒しも怪我はともかく、病には効果が薄く薬も対処療法にしかならなかったらしい。

 だからちょっとした病が流行ると人がバタバタと亡くなったんだそうだ。これは民、王侯貴族関係なくね。だから子を産む、増やすはとても重大任務だった。貴族は特にで筆頭の後継ぎなのに片方とか……辛かっただろうなと眉間にシワを寄せながら話した。

「それでみんなでここに……」
「そうだ。だからここでは王族のイアサント、アデラールがノルンとして種付けして産まれて来た者"しか"魔力供給が出来ないんだよ……」

 以前は王族ならアン、ノルン関係なく誰でも供給出来たらしいが……その記録は見つからなくて、今やそれも本当かどうか怪しいと俺は思っている。俺たちはイアサントがアンの時の子の末裔なんだと話してくれた。

「同じ親なのにな。何が違うのか……父は近衛団長のカジミールという者だったそうだ。始祖は番は持っていたが、正式な妻、夫は持たなかった」

 アンセルムさんが、

「ちなみにカジミールは私の始祖になります。だから宰相兼筆頭魔術師の子の私とは、子供の頃から双子と兄弟のように育ちました」

 だからあの口調か、納得。

「だからな。お前は子を産み、俺たちを孕ませるのが二つ目の仕事だ」
「マジで?産むのはともかく……僕があの……お二人を抱くの?本気で言ってます?」
「うん。優しくしてね。うふんっ」

 変な汗がダラダラと流れて背中を伝う。僕怖くて勃たないよ。

「産むだけで……は」
「だ~め!」
「あのな、番も俺たちは何人でも持てるんだぞ。番になってる者とも二重に契約出来る。すげぇだろ?相性が合えば五国の民は全部だ!!」
「はあ……」
「あっ二人ともまだ番は居ないから安心しろ。お前の番は俺たちだ。お前が許せばまだたくさん……」

 ステファヌはアンセルムの胸ぐらを掴み、

「一度死ぬか?ああ?どんだけ腐れてるんだお前のちんこは!」
「待て待て!王族は十年前の疫病で俺達だけしかいないんだぞ?増やしたいじゃん!愛人バンバン作ってさ。な?」
「お前は!一気に増やさなくていいんだよ!」
「ええ……子供たくさんいいじゃん。俺たちとルチアーノに似てる子はきっとかわいいよ……んふふっ」
「はあ……かわいいだけじゃすまなくなる事も考えろよ」

 なんか言い合ってるけどね。僕は目眩がする……これからどうすんの?

「ルチアーノは俺たちとずっと交わって……んふふっ楽しみ。オーブも目処たったしね~」

 ジュスランは本当に楽しそうだ。ステファヌは殺しそうな目をしてるけど。

「あっ!ルチアーノさあ。アンセルムも抱きたいならどうぞ!こいつの血は魔力が半端ないから増やそうよ!」

 アンセルムさんは前のめりに、

「ふざけんな!俺にはもう愛しいピエリックがいる!」
「チッ……ケチ。ルチアーノが種なら子は次の王にもなれるかもよ?」

 はあ?とゆらりと立ち上がりズカズカとジュスランに近づき、スパーンと一発頬を……この王は色んな所を叩かれて困った人だ。

「馬鹿だ!お前は馬鹿だ!そんな事したら後継ぎの問題で内乱が起きるだろ!もっと考えろ!」
「痛い……ルチアーノ~二人が俺を虐めるんだ。慰めて欲しい。そんで抱かせて?噛ませて?」

 抱きついて来て……この状況でよく言えるね。そのセリフ。

「代わりが居るならこいつのちんこを踏み潰したい!!」
「二人してやだなあ。俺のちんこは宝よ?見る?」

 ズボンを下げようとするジュスランに、顔を真っ赤にして二人はプルプルと震えている。そりゃあね……ジュスランは裏表がなく自分に正直なんだろう。ストレスが最も溜まらない生き方だね。これではステファヌもアンセルムさんも大変だ。

「ルチアーノ様!他人事ひとごとではありません!貴方の第一夫で妻なんですよ!なんとかして下さい!」
「え……?無理……です」

 アンセルムさんの横でぎゃあぎゃあと双子は騒いでいたが、これからの予定をと無視して僕に説明してくれた。

「まず、貴方が王になるための教育を……」

 王?王様?何言ってんのこの人!

「は?ちょっ、ちょっと待って下さい!王ってなに?僕がなるの?待って!ならなくてもこのままでよいのでは?」
「それは無理です。貴方様の魔力は我々の倍ですから。夜中に勝手に測らせて貰いました」

 ……いつの間に。

「我らの魔力量は五万弱ですが、貴方は十万強。我が国は魔力量で王が決まります。ですので、ある意味正当な血統の、最大の魔力量をお持ちの貴方が王でなければ暴動が起きます。貴族からも市民からも」
「うそでしょ?嫌だそれ……僕純血種じゃないですよ?」
「あはは。今の時代純血種に意味はありません。今回の事で王族にも獣人の血が交じるんですから」
「でも……貴族の方もこの国の人も……」

 フンと鼻で笑われた。

「この先純血種に意味は見い出せません。それよりも国の存続が第一です!市民も貴族も気にしません!昔公爵家が変体の方と番になった前例もなくはないですからね!」

 おおマジかぁ……嫌だよ。この場から逃げ出したい……呆然としてる僕を抱き寄せ、かわいいって言いながらシャツを捲り乳首を摘んで、首に舌を這わしてる王もどうかしてるし、それを引っ剥がして怒鳴ってるステファヌもどうかと。怒りのアンセルムさんも参戦で……先を考えると頭は色々拒否し出した。
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