上 下
75 / 91

番外編キャルドンの転落②

しおりを挟む


子爵家の連中の信頼を得るのは簡単だった。
人が良いから、商会の役に立つ事をアピールしておいた。

後は跡継ぎである一人娘を惚れさせれば簡単だった。

だが、娘のイオナは警戒心が強下く、マリエルのように単純ではなかった。

両親は簡単に騙されたのに苛立ちを覚えたが、時間の問題だ。
俺が彼女を好いていると言えば、両親は俺を婿養子にしても良いと言い出した。

しかし、イオナは頑なに拒んでいた。

そこで俺はなんとしてもこの子爵家を乗っ取る為に計画を立てた。
それはこの領地では塩が不足しているからだ。

だから塩を増やすべく考えたのは潮に砂を混ぜて量を増やすことだ。
勿論通常の塩よりも質は劣るだろうが、気づく人間は少ない。

砂でも気づかれないように細工すればいい。
そのおかげで商売は繁盛し、イオナと俺は婚約までこぎつけた。


しかし――。


「卑怯な男…両親を誑かして我が家を乗っ取るんなんて」

「何を?」

「白々しいわね。例えこの身が貴方の手で汚されようとも私は貴方なんかに屈しないわ。貴方のような男には」

この女!
元は平民風情で偉そうに!

「私は子爵家を守る身。だから耐えます…けれど、子爵家は貴方に渡さないわ」


「何を言っているのやら」


俺が手を伸ばそうとすると。


ガシッ!

「お嬢様に何をするおつもりですか?」

「なっ!」

「ウィーン!」

この邸の執事が俺の手を掴んだ。
聞けばこの二人は幼馴染と聞くが使用人の分際で。

「婚姻前の女性に軽々しく触れるとは随分と礼儀のない事ですね?貞操観念もないようで」

「貴様!」

「ウィーン!」

「お嬢様!」


茶番劇のようなやり取りを見せながら、俺を睨む。

本当に馬鹿な奴等だ。
どうせあと一か月で俺達は結婚することになっている。

そうなればこの執事は解雇だ。

いや、目の前でイオナを抱いて絶望を味合わせてやる。

惚れた女が他の男の前で抱かれることほど屈辱な事はないだろう。


俺を侮辱した罪は重い事を思い知ればいい。
子爵と夫人は俺が仕組んだ薬で余命あとわずかだからな。


子爵家が俺の物になればすべてを取り戻すことができる。


だが子爵如きで満足はしない。

俺は頂点に立って形だけの王配となったあの男に復讐してやる。

そして引きずりおろしてやる。

あの男の所為で俺はこんな貧しい思いをしているんだ。

そうだ、すべてはあの男の所為だ。



全ては上手く行く。

そう思った矢先に番狂わせな出来事は起きたのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」 成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。 「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」 ********************************************        ATTENTION ******************************************** *世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。 *いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。 *R-15は保険です。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

裏切りの代償~嗤った幼馴染と浮気をした元婚約者はやがて~

柚木ゆず
恋愛
※6月10日、リュシー編が完結いたしました。明日11日よりフィリップ編の後編を、後編完結後はフィリップの父(侯爵家当主)のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。  婚約者のフィリップ様はわたしの幼馴染・ナタリーと浮気をしていて、ナタリーと結婚をしたいから婚約を解消しろと言い出した。  こんなことを平然と口にできる人に、未練なんてない。なので即座に受け入れ、私達の関係はこうして終わりを告げた。 「わたくしはこの方と幸せになって、貴方とは正反対の人生を過ごすわ。……フィリップ様、まいりましょう」  そうしてナタリーは幸せそうに去ったのだけれど、それは無理だと思うわ。  だって、浮気をする人はいずれまた――

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません

ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
婚約者とその家族に虐げられる日々を送っていたアイリーンは、赤ん坊の頃に森に捨てられていたところを、貧乏なのに拾って育ててくれた家族のために、つらい毎日を耐える日々を送っていた。 そんなアイリーンには、密かな夢があった。それは、世界的に有名な魔法学園に入学して勉強をし、宮廷魔術師になり、両親を楽させてあげたいというものだった。 婚約を結ぶ際に、両親を支援する約束をしていたアイリーンだったが、夢自体は諦めきれずに過ごしていたある日、別の女性と恋に落ちていた婚約者は、アイリーンなど体のいい使用人程度にしか思っておらず、支援も行っていないことを知る。 どういうことか問い詰めると、お前とは婚約破棄をすると言われてしまったアイリーンは、ついに我慢の限界に達し、婚約者に別れを告げてから婚約者の家を飛び出した。 実家に帰ってきたアイリーンは、唯一の知人で特別な男性であるエルヴィンから、とあることを提案される。 それは、特待生として魔法学園の編入試験を受けてみないかというものだった。 これは一人の少女が、夢を掴むために奮闘し、時には婚約者達の妨害に立ち向かいながら、幸せを手に入れる物語。 ☆すでに最終話まで執筆、予約投稿済みの作品となっております☆

処理中です...