清く正しく美しくをモットーに生きてます!

ユウ

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第一章

閑話2.侯爵の問題

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アレンゼル侯爵家は王族の中でも最も血筋の良い家柄だった。
国内でも一番の資産家としても名高く、仕事は主に外交を行っており、国王陛下からの信頼も厚いと有名であるが、問題を抱えていた。


未だに婚約者がない事だった。
社交界には義務感があるので必要最低限に顔を出すが、ダンスは踊らない。
会話も事務的な事を言って終わりでは、親しくなるのは皆無だった。

それでも侯爵夫人の椅子を欲しいが為に、あの手この手を使って接近してくる。

中には、侯爵夫人となって王太子に近づこうと考えている邪な令嬢もいないわけではない。

大貴族の中で身分、財力、領地の全てを得ているヴァルトラーナの妻となれば女性と言えど、社交界では王妃に次ぐ権力を有することになる。

上手く行けば我が子が立太子することもできなくはない。


しかし、バルトラーナは警戒心が強く、自分の立場を嫌という程理解していた。
その為、女性を寄せ付けなかったのだが。


ヴァルトラーナの世話役をしていた老執事のロジャー・ハントは悩んでいた。


己の立場を十分に理解しているが故に感情よりも先に頭で考え判断する癖がついている。

貴族として正しいが、我が子のように慈しんで生きた主の生き方は寂しいと感じた。
早くに両親を亡くし、甘える行為が許されなかったヴァルトラーナだったが、国王や王弟殿下が可愛がってくれたので、二人を心から慕っているが為に、期待に応えようとしている。


ヴァルトラーナ自身の幸せを考えて欲しかったが、下心のある女性ばかりが寄って来るので難しいと思った矢先の事だった。



「ロジャー、いい知らせだ」

「どうなさいましたヴィクトール様。また公爵夫人の扱きから逃げていらしたのですか」

「そうなんだ、母上が怖くて…って、違う!」


王弟殿下の子息でもあるヴィクトールとヴァルトラーナは親族であり幼馴染関係でもあった。
気性が激しい公爵夫人は色々と厳しく、時折駆け込み寺のようにこの邸に逃げて来たのだが、今日は違うようだった。

「大ニュースだ、ロジャー」

「はぁ…」

どうせ大したことじゃないと思いながら、切子のグラスを磨いていたのだが…


「ヴァルトラーナに気になる女性がいる」


ガシャン!


大事な切子グラスを床に落としてしまうも、放心したまま動かなかった。

「今、なんと?」

「だから、あの女性にまったく興味のないヴァルトラーナが女性に…ぐ!」

「新手の嫌がらせではないでしょうな!もしそうであれば、殿下が幼少の頃に公爵夫人の大事なティーカップを割ってしまったことをお伝えしますよ」

「おっ…おう」


勝手知ったる仲とは時に厄介だった。
ロジャーは、ヴィクトールの弱みを握っているのだった。


「嘘じゃないって…先日の夜会で、女性のハンカチを大事に握りしめていたんだからな!」

「女性用のハンカチですか」

「見事な刺繍だったからな、察するにその女性は教養高く美的センスのある女性だ。貴族か、もしくは中級階級ブルジョワ出身のお嬢様の可能性が高い」


ロジャーはヴィクトールの胸倉を放す。


「ああ、なんということでしょう。あの坊ちゃまが…あまりにも浮いた噂がないせいで、ヴィクトール様と恋人」関係だと不名誉な噂まで流され、胸を痛めておりました。陛下の愛人ならまだしも…こんな放蕩令息の愛人など屈辱ですからね!」

「おいぃぃ!俺は一応王族で、公爵家の長男だぞ!」

「存じております」

普通なら不敬罪になるのだが、公の場ではないので問題ない。
それ以前にロジャーは公爵家からも一目置かれた有能な執事故に、罰せられることはなかった。


ただし、侮辱されたヴィクトールはかなり不満気味だったが。


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