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143切り札
しおりを挟むそもそも人間の体の70%が水だ。
ならば体の中に水を入れて、毒を体から出す様にすればいい。
ただし普通の水ではダメだ。
薬草を使った水を体内に入れて、体の猛毒を浄化しなくてはならない。
口から飲んでいたのでは間に合わない。
「体内にある薬草で作った薬と純度の高い水を体内に入れます。そして体から出すんです」
「つまりあれを出すって事だな?」
「はい、汗もしっかりかいてもらわないといけません」
「しかし上手くいくだろうか」
エレンディス様のいい事は最もだ。
だけど今はこれしか方法はないのだから。
「この病から救えるのはアリアしかいない」
「バルト様」
「俺はこんな方法がある事も知らなかった。やはり君は賢者だな」
「そんな」
私が賢者だなんて恐れ多いわ。
でも、少しでも役に立てたのなら嬉しいな。
「だが指示だけだ。君は大事な時だからな」
「ああ、絶対安静だ」
「その点ならお任せください!」
バァンと扉が乱暴に開かれる音がした。
「「「エレナ!」」」
背中に籠を背負い、その背後には縄で拘束された男性。
「エレナ…この際盗み危機に関しては何も言わないが。後ろの男は」
「実験台です!」
「なるほど、適当に治験に使える男を見繕ってきてくれたのか」
ポンと手を叩くバルト様。
どうしてここまで冷静なのだろうか。
「この男達はカスティージョ家の元使用人。しかも過去に奥様を侮辱し社交界で噂を流した生きる価値もない最低さ悪の燃えないゴミですわ」
「そこまで言うか」
「当然です。奥様の敵は私の敵。そして私が成敗いたしますが…ですが殺す前に使えるだけ使うのがリサイクルですわ」
エレナ…
そんなことを考えていたの?
「先ほどのお話を聞きまして私とってもいい事を思いつきましたのよ」
にっこりと素敵な笑顔を浮かべる時のエレナは大体が恐ろしい事を考えている時だ。
聞いては行けない気がする。
「それは素晴らしいな」
「バルト…」
「バルト様」
だけど私達の思いとは正反対にバルト様も素敵な笑顔を浮かべているではないか。
これはかなりまずいと思ったのだが既に時遅し。
二人の笑顔を見て止める事は不可能だと察した。
「治験を手っ取り早くする方法ですわ」
「俺も考えていたんだが、君のおかげで手間と金をかけずに済むよ」
ああ、神よ。
どうかお許しくださいませ。
私に二人を止めることはできません。
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