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82大公殿下
しおりを挟む見事な上腕二頭筋。
そして高齢とは思えない程の顔立ちに私は固まった。
本当に老人なのか。
「殿下ぁぁぁぁ!」
「何をされておりますか!」
よく見ると傍には騎士団の人達が真っ青になって止めている。
バキバキ!
「私の城ぉぉぉ!」
掴んでいた馬車の扉は粉々なる。
御者の悲鳴が響き渡る。
「大公殿下、淑女を怯えさせるのはどうかと」
「む?そうか」
団長さんが助けてくれたのでな落ち着くことができたけど。
「きゃっきゃ!」
「おお、この子が私の孫か!」
この状況下で泣かないでいるなんて凄いわアリッサ。
「じーじだぞ!」
「じー?」
「どうだ。お前は私のお祖父様だ」
「じーじ!」
嘘でしょ?
いくら何でも早すぎる。
早熟だと思ったけど、いくら何でも今日初めて会った人をちゃんと祖父と認識できるなんて。
「じーじ!」
「おお、もう歩けるか。しかも顔色も良い…ダンテは幼少期は体が弱く歩くなんて考えられなかったのだが」
「ダンテ殿下は大公殿下の亡くなられたご子息だ」
「私の息子のダンテは王位継承権に巻き込まれそうだったので私が王族籍からわざと除籍したのだ。元より私は王位は欲していない」
「そうだったのですか…」
「その事情も改めて説明したい。その前にだ」
「はい」
もしこの子が…
アリッサが大公様のご子息の息女で、母親がメリッサ様ではなく別の女性だったとすると。
何らかの形で子供がすり替えられていたとする。
そうなったら私は無関係でいることはできないのだ。
「申し訳ありません大公様」
「む?どうしたんだ」
「何とお詫びですれば…何を申し上げても許されるとは思ってはおりません」
メリッサ様が単独してたとは言え、私は関係ないなんて言えない。
元妻である以上は。
「アリア嬢、私はそなたを呼んだのは咎めようとしたわけではない」
「え?」
「もしそなたがいなければ孫は死んでいただろう」
私は当たり前の事をしただけなのに。
「私の息子は体が弱くてな…生まれて来る子供は王族の血筋を強く受け継いでいる故にな」
でもおかしいわ。
もし本当にそうだとすればアリッサはすごく行動的だし。
ミルクだって…
「ご息女は大変お元気で…食欲も」
「アリッサ。これは私の推測だが、アリッサ…いやエンジュ様は元より重い病を抱えていたのは事実だ。血液を検査をした結果、君の薬草により病を完治させていると解った」
「それは…」
「つまり君がエンジュ様のお世話をした事で病を完治させたんだ」
にわかに信じられなかったが、団長さんが嘘をつく理由はない。
でもどうして?
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