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72エレナの体調不良
しおりを挟むコンサルティングを主とした事業をする傍らに私は不動産事業を行った。
このご時世傾きかけている貸家は多いからこそ目を付けた。
特に図書館や学校の区域内は建物の値段が安い。
けれどその逆に学校が廃校になってしまうと値段が上がるので試しに数件買ったのだけど。
「やっぱり狙い通りだわ」
「アリア様、なんて事…」
「ジョイルのアドバイスのおかげね」
「私は少しのアドバイスをしただけですよ」
順調だった私の事業は潤った。
「そのお金はどうされるのですか」
「え?寄付よ?」
「は?」
これまで得た収入は親がない子供や母子家庭で貧しい人達。
後は職業訓練所にすべて寄付している。
「もっと稼いで寄付しないと」
「お待ちくださいませ。稼いだほとんどを寄付してよろしいのですか」
「ええ」
カスティージョ家を見て嫌と言う程理解した。
お金は持ちすぎると人生を崩壊させる。
「それにお金は天下の回りものって言うじゃない?世の中の為に使うべきだと思うの」
今回良い物件があると教えてくれた商人がいる。
その人にも利益の半分を返すべきだわ。
「しかし未だにドレスも私がお作りしたもので」
「ああ、違うわ」
「え?」
エレナは倹約する所為でドレスを買えないと思っているのだろうけど。
「私ね、この服が好きなの。動きにくいドレスよりも肌触りも良いし…リメイクしてリボンを着ければ十分だし。何よりこれは私の勝負服だから」
この服は元は着る物がない私にエレナが作ってくれた物なのだから。
「初めて貴女が私の為に作ってくれた服だから」
「アリア様…失礼します」
あれ?
具合でも悪かったのかしら?
口元をハンカチで抑えたまま去って行く。
「ジュナ、エレナは具合が悪いの?」
「いいえ、元気です」
「でも…」
肩が震えていたのは何故だろうか?
私はこの時知らなかった。
庭を飛び出したエレナが泣いていたのを。
「エレナ様泣かないでください」
「ぐすん…アリア様は私が作った服をそんな風に…ぐずん」
「そんなに嬉しかったんですか」
私の言葉が原因でエレナはうれし泣きをしていたのだ。
「当たり前でしょう!使用人が作った服を今も大事にしてくださったいるのよ!私一生アリア様の傍にいる!一生憑いて行くわ!」
「怖いですエレナ様」
私が知らない所でこんなやり取りをしているのも知らなかったのだ。
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