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71エレンディスの恋⑥
しおりを挟むロベルペール家での奉公を終えた後に援助を受けることになったアリアはとにかく運が良かった。
薬草のレシピに、商業ギルドやギルドと渡りのある男爵家、クラスター家にて困難と言われる商談を成功させた。
ダブルブッキングで会場を借りる事が出来なかったはずが、奥方の心を掴み契約ももぎ取ってしまった。
「流石アリア。既に社交界で彼女は一目置かれているわ」
「ええ…」
辺境地で貧しい中でも常に前を向き最善の方法を探して来た。
強いアリアだからこそ耐えることができたのだろう。
「私は結局何もできませんでした」
「あら?陰からプリメーラ商会と渡りをつけたり、アリアの活躍を妬む貴族を潰して来たのでしょう?」
「恐ろし方ですね」
「言わなくていいの?」
アリアにはバレないように徹底して来た。
影で隠れて動いていたが、たいしたことではない。
「言う気はありませんよ」
私はあの時に決めたんだ。
生きたままアリアを見守ろうと。
彼女が幸福ならこの恋は蓋をする事に。
「黙って見守るのも愛だけど…でも、本当に良いの?」
「それはどういう意味でしょうか」
私はこの時解っていなかった。
社交界で一目置かれるようになってもアリアの取り巻く環境は何一つ改善されていない事。
それを知るのはエセルバートが王都に戻って来てからの事だった。
「なんて事なの!アリアを社交界に出さないなんて」
「イオンティーヌ様、私はあの男が信用できません」
その日、急にロベスペール侯爵夫人が訪れあの男が戻って来るや否や邸を仕切り始め邸から出られなくなっている事を知らされた。
「使いとして私の侍女に探りを入れましたがアリアが暴力を振るわれるのを目撃していますわ」
「何ですって!」
「しかも謝る素振りはなく普通に堂々と社交界に来て、若い娘と一緒に夜会に」
ふざけるな…
アリアがどんな思いでいたか。
「それでもアリアは耐えていますわ。もう見ていられません!」
「なんて男なの。あんな男を信じた私が馬鹿だったわ」
当初は優柔不断でありながらもアリアを大事にしていた。
だから私も身を引こうと思った。
しかしアリアの不遇は更に続いた。
「義母と娘が帰って来たみたいね」
「社交界に再び現れやりたい放題…もう我慢できません」
このままではアリアの命すら危うい。
もう黙ってられない。
私は強引な手を使う事にした。
黙って見守るのではなく行動をするべく実家に向かった。
アリアを救う為に。
幼少期から嫌いな権力を使う事にした。
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