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61失った物の大きさ~エセルバートside⑦
しおりを挟むしばらく静かになり、僕はそのまま部屋で仕事をしていると。
「誰か!誰か来てください」
「きゃああ!」
使用人の悲鳴が響き、慌ただし足音に眉を顰める。
「何だ。騒々しい…アリッサ?」
「息をしておりません!早く病院に…」
何で?
僕がアリッサを突き飛ばしたからか?
でも、少し壁頭をぶつけただけだろ?
「急いでいお医者様に…」
「まて、医者に連れて行くな」
カスティージョ家と縁のある医師の元に連れて行くのは危険だ。
外聞が悪いし、こんな状態を見せたら何を言われるか解らない。
それにたいしたことはないだろ?
「三流の医者で十分だ」
「しかし万一の事があったら」
「その万一が無いようにするのがお前達の仕事だろう?こんなになりまで放っておいたのは誰だ?万一の事かあればお前達の所為だ」
「そんな!」
そうだ。
僕は何も悪くない。
大体、僕に何の責任があるんだ。
アリッサを置いて出かけたメリッサも悪いし、僕の仕事の邪魔をするアリッサも悪いし赤ん坊の面倒を満足に見れない使用人も悪いんだ。
僕は何一つとして悪くない。
「一体何をされていたんですか」
「これは…」
なのに…
「頭の傷は強く壁にぶつけています。脳震盪を起こしていますね」
「少し壁にぶつけただけだろ?血だって少し…」
「赤ん坊は少しの衝撃で死にます。出血もそうですが…窒息死寸前です。それに…」
「随分泣いていたのでしょうね…」
医師に付き添っている看護師が僕を睨んだ。
何故そんな目で見るんだ。
「僕がこれに何かしたとでも」
「これ?失礼ですがご自身の子をこれ呼ばわりされるのですか」
「止めないか…父君であるならば今後は気をつけてください」
「いや、僕は…」
「今後はこんな事がないようにしてください」
その後僕は町医者に説教をされた上に看護師に蔑まれ散々な目にあったあげく高い治療費を支払う羽目になった。
しかも、夕方に帰って来た母上とメリッサは友人を連れて来たのだが。
「まぁ、なんて事!」
「セトヴァール夫人…これは」
「こんな幼い子供になんて事」
聞けば社交界で知り合った夫人らしいが、アリッサを一目見たいとの事だったが。
「痛々しい怪我をしているではありませんか」
「あー…」
アリッサは夫人を怯えながら見ている。
「それにこんなに怯えて」
「ふぇっ…」
何で僕を見てそんな恐れるような表情で泣き出すんだ。
その所為で僕がアリッサに虐待をしているんじゃないかと疑いをかけられてしまった。
「お兄様の所為で恥をかいたわ」
「せっかく孫を自慢しようと思ったのに!」
挙句の果てにアリッサをちゃんと見てなかった事を責められただけでなく。
「虐待の疑い…そんな!」
僕がアリッサを虐待していると公的機関に連絡され、騎士に連行されてしまった。
それがきっかけで社交界で僕は姪を殺そうとしたといういわれのない噂が流れ社交界で爪はじきにされ、芋蔓形式に僕の不幸は続き事業の失敗と、母上とメリッサが買った別荘は悪徳商人が売りつけた物で借金は更に膨れ上がることとなるのだった。
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