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57失った物の大きさ~エセルバートside③
しおりを挟む育児を使用人に丸投げをして二日。
「一身上の都合で」
侍女の中で一番は働く者だった。
辞表を置いてそのまま辞めたのが始まりだった。
そこから芋蔓形式で何人かの若い使用人は辞表を出して辞めて行き、料理人や執事も辞めて残ったのはメイドだけだった。
「まんまぁぁぁ!」
「あー!うるさい!静かにできないのか!」
「やぁぁぁ!」
一日中で泣いているアリッサに苛立つ。
仕事にもならず、今日は大事な商談があるというのに。
母親のメリッサは一日中遊び歩いて、母上は町に買い物だと言ってアリッサを見ようともしない。
肝心の父上は病気が治ったと思いきや最近は風邪をこじらせ再び部屋に引きこもっている始末だ。
「おいお前!アリッサを泣き止ませろ」
「私は日雇いですのでもう就業時間は終わりなのですが」
「は?」
「延長されるならば手続きを取ってください給金は上乗せになりますが」
「何を言っているんだそれぐらいで…」
最近は使用人の人数が足りず、人材派遣を頼むもジョイルを筆頭にジョナやエレナがカスティージョ家を辞めた事で商業ギルドからも人を派遣するのを断られた。
正規で雇うのがもったいないと言い出した母上が日雇いで安い賃金で働く従者。
派遣の使用人を雇ったのだが時間外の仕事。
契約外の仕事は一切しないというのだ。
「この程度…」
「お言葉ですが、おむつの交換、ミルク、子供をあやして寝かせる等の経験はございません。最悪ご息女の身に何かあった時責任は取れません」
「は?何を…」
「ちなみにですが、育児経験のない私のような者が他所で子供を死なせたケースはありますが…私は子供を抱いた事もありませんがよろしいですか?」
「もういい!」
時間の無駄だ。
とりあえず会談が終わるまで別の部屋に閉じ込めて置けば問題ないだろうと思った。
しかしその会談が最悪な事に。
「エセルバート様。貴方はこんな小さな子供を一人にしていらしたの!」
「シッターもつけず…おむつも交換しないとは!」
今日の会談は女商人で最近新しい事業で名を轟かしている夫人だった。
近い内に小学校を作る予定で、そこで僕は新しい事情を展開すべく商売を持ち掛けたのだが。
会談中にアリッサの無き声が聞こえてしまい。
気になった二人が見たのは壁に頭をぶつけ血を流すアリッサの姿だった。
「申す訳ありません見苦しい物を…すぐにどかしますの!」
「どかす?」
「汚い血がついてしまって不快な思いをさせてしまい…本当に邪魔な」
僕は二人の気分を悪くさせた事を詫びるも、この時失態に気づかなかった。
「もう結構です」
「貴方とは二度と会いませんわ!」
彼女達が母親であると言う事に。
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