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50耐え忍ぶ裏で
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邸から追い出され離れに追いやられた私は人形になった。
以前よりも待遇は酷くなり少しでも反抗する素振りを見せれば折檻を受ける日々。
エセルバート様は庇う事も優しい言葉のかけてくれなかった。
以前だったら食事がなければこっそりお菓子を持ってきてくれたり労わってくれたのに、それすらもなかった。
そして邸内で新しい侍女を迎え、その侍女と噂が流れた。
何でも旅先で出会った女性だとかお義母様のお気に入りだと様々な噂が流れていた。
「奥様…」
「エレナ、マヤ…」
私に与えられた離れにこっそり忍び込んで来た二人。
バレたらどんな目に合うか解らない。
「ダメよ二人共。お義母様に叱られるわ」
「かまいません。どうせ遊び歩いているのですから」
「今さらです」
頬に傷があるマヤ。
エレナの手も荒れているのを見て重労働を強いられているのが解る。
「私達よりも奥様の方が心配ですわ。今夜は冷えますから毛布を」
「薪をお持ちしました。それからお食事を」
私の食事は一日一回だ。
離れは冷えるし、最近は薪の値上がりで私が使う分は少ない。
「二人の分が…」
「私達は大丈夫ですわ。でも…」
「あの男、酷すぎます。奥様がこれまで手掛けた事情を横取りして今では稼いだお金は老婆が使い倒しているんです」
「逆戻りにならなければ良いのだけど」
二人の報告によれば軌道に乗り始めた事業は芳しくない状態だ。
「二人に任せていた事業だけは…」
「解っています」
「私達よりも奥様自身のお事をお考えください。奥様の個人的財産は手元に残してください」
既に私がカスティージョ家の当主代行をしていた仕事は奪われた。
でも、全てじゃない。
僅かであるが私が直接プリメーラ商会や商業ギルドに考案したレシピがある。
それだけは手放していない。
「二人共、私の事よりも自分達の事を考えて」
私は既にあの人の心が離れている以上、考えるのは使用人の皆の事だ。
未だに私の不遇を訴えてくれてるけど、このままだとどうなるか。
私はカスティージョ家の妻である以上、使用人の生活を守らなくてはならない。
だからこそ最悪の事態を考えなくてはならない。
「エレナ、手紙を届けて欲しいの。危険かもしれないけど」
「お任せください」
万一の事にはなって欲しくない。
でも、このままだとカスティージョ家は元に戻ってしまう。
だからこそエレナやジョナにジョイル達をの生活を守って貰えるように副ギルド長に特許を売る旨を書いた。
そして私の調合した薬草のレシピをエレナに引き継げるようにと手紙を書いた。
僅かだけど生活には困らないはずだわ。
ロベスペール侯爵家で雇って貰えるかもしれないし。
もう私は彼等を守る事だけしかなかった。
カスティージョ家もエセルバート様もどうでも良かった。
愛人がいても離縁されてもいいわ。
以前よりも待遇は酷くなり少しでも反抗する素振りを見せれば折檻を受ける日々。
エセルバート様は庇う事も優しい言葉のかけてくれなかった。
以前だったら食事がなければこっそりお菓子を持ってきてくれたり労わってくれたのに、それすらもなかった。
そして邸内で新しい侍女を迎え、その侍女と噂が流れた。
何でも旅先で出会った女性だとかお義母様のお気に入りだと様々な噂が流れていた。
「奥様…」
「エレナ、マヤ…」
私に与えられた離れにこっそり忍び込んで来た二人。
バレたらどんな目に合うか解らない。
「ダメよ二人共。お義母様に叱られるわ」
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「私達は大丈夫ですわ。でも…」
「あの男、酷すぎます。奥様がこれまで手掛けた事情を横取りして今では稼いだお金は老婆が使い倒しているんです」
「逆戻りにならなければ良いのだけど」
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「解っています」
「私達よりも奥様自身のお事をお考えください。奥様の個人的財産は手元に残してください」
既に私がカスティージョ家の当主代行をしていた仕事は奪われた。
でも、全てじゃない。
僅かであるが私が直接プリメーラ商会や商業ギルドに考案したレシピがある。
それだけは手放していない。
「二人共、私の事よりも自分達の事を考えて」
私は既にあの人の心が離れている以上、考えるのは使用人の皆の事だ。
未だに私の不遇を訴えてくれてるけど、このままだとどうなるか。
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だからこそ最悪の事態を考えなくてはならない。
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「お任せください」
万一の事にはなって欲しくない。
でも、このままだとカスティージョ家は元に戻ってしまう。
だからこそエレナやジョナにジョイル達をの生活を守って貰えるように副ギルド長に特許を売る旨を書いた。
そして私の調合した薬草のレシピをエレナに引き継げるようにと手紙を書いた。
僅かだけど生活には困らないはずだわ。
ロベスペール侯爵家で雇って貰えるかもしれないし。
もう私は彼等を守る事だけしかなかった。
カスティージョ家もエセルバート様もどうでも良かった。
愛人がいても離縁されてもいいわ。
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