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44違和感
しおりを挟む熱で浮かされ私は三日間寝たきりとなった。
これまで医者いらずだったのにどうして熱なんて出たんだろうか。
花嫁修業がつらくても、食事を抜かれることがあっても。
一度だって病気にならなかった。
なのに何故?
「奥様、貴方様の心が弱っているからです」
「弱っている?」
「奥様はこれまえ十分すぎる程頑張って来られました。なのにエセルバート様の言葉に傷ついたのです。ご自分の心に蓋をしてはなりません」
蓋をした?
私はずっと言い聞かせていたのかな?
認められなのは私の出来が悪いから。
カスティージョ家の嫁に相応しくないから。
だから努力しようと思った。
「私はどうしたら正解だったの?」
幼少期から私は失敗しても後悔しても折り合いをつけては自分の選択を信じて来た。
でも…
エセルバート様は私の全てを否定した。
「私は喜んでくださると思ったの」
「はい」
「カスティージョ家の留守を守って、一人前にはまだ遠くても近づけたと」
「十二分ですわ」
優しい使用人の皆。
彼等を守る事が私の役目だと思った。
「ジョイルに楽をさせてあげたかった。ジョナにもっと良い待遇にしてあげたくて。それでエレナには…でも、間違いだったのかな?」
「奥様が間違った事は今の一度もございませんわ。ええ、間違いは絶対にありません」
「エレナ、奥様は病人ですわよ」
「申し訳ありません」
何時もと変わらないエレナに安堵する。
「私はどうしたらいいのかな…」
少し解らなくなってしまった。
伯爵夫人としての役目を果したくても頑張れば頑張る程空回りをしていて。
「奥様がどうされたいかです。貴女様の気持ちが第一ですわ」
「ジョナ…」
「私達は奥様の味方です。どうかご自分を大切になさってください」
私の気持ち…考えた事が無かった。
嫁いできて私は常にカスティージョ家の嫁として認められることが最優先だった。
「綺麗な百合のお花…」
ふと近くに飾られている豪華な百合の花が目に入る。
こないだ頂いた花束とは別の花だった。
「エレンディ様が先ほどもまで来てくださっておりまして」
「団長さんが…」
気を失う前に侯爵夫人ともう一人誰かがいた気がしたのだけど。
「あの…」
「旦那様は出かけられました」
「奥様がご病気だというのに」
エレナは怒ったままでこれ以上エセルバート様の事を話すべきではないと思った。
ただ違和感を感じながら私は邸に引きこもる日々が続き、チャリティーにも参加できず手紙でロベスペール家にお詫びの手紙を届けてもらうのだった。
だけどその一週間後。
「奥様…」
「どうしたのマヤ?」
ジョイルの孫のマヤが見せたのは破られた手紙。
その手紙は団長さんから私宛に届いた手紙だった。
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