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39暗雲
しおりを挟む商談は大成功。
パーティーの会場も破格の金額で借りることができた。
「ご苦労様です。貴女のおかげですわ」
「ありがとうございます」
交渉が終わった翌日朝一番にロベルペール家に向かい報告すると奥様は喜んでくださった。
今回のチャリティーには多くの貴族が参加している。
貧しい孤児院に学ぶ場を提供するべく小学校を設立し、職業訓練場も運営する事になっている。
お金がない子供達。
働く場所がない子供達。
そのすべてを貴族同士で寄付を集めて施設を作る事にした。
チャリティーに参加ししている方は平民から貴族と大勢いるので広い会場が必要だった。
「当日のお料理は質素ですわね」
「質素ですが皆様の故郷の特産物を使わせていただいております。贅沢するよりも喜ばれるかと」
特に商人の中ではお金にシビアだ。
寄付金を集めて起きながら私達が贅沢なパーティーをしては意味がない。
「ほとんど無償で手に入れた野菜や肉や魚を使います。寄付の為にお金を浪費しては筋が通りません」
「そうね。理にかなっているわ」
貴族だからと言って無駄にお金を使っている人ばかりじゃない。
どうしても使うべき時に使わなくてはならないのだ。
「ですからその意味を込めてこのお料理を」
「いいわ。貴女に全て一任します」
「ありがとうございます」
頑張らないと。
もっとチャリティーに参加してくれる人を増やしたい。
一部の人が寄付するのではなく国が国民を守れるようになれば…
「今宰相閣下が切り込みを入れられているわ」
「え?」
「貴族からも税を取るのよ」
「それは…素晴らしいです」
平民だけが税を納めている事に違和感を感じていた。
「後は教会などの寄付金だけど」
「寄付とはお金でないとダメなのでしょうか?」
「え?」
教会への寄付金は国の予算から出されているけど、大きな教会にしか行かない。
むしろ必要なのは地方の小さな教会なのだけど、全てにいきわたるのは難しいのだから。
「例えばですが、現在も寄付金を横流している噂は聞いております」
「処罰したくても証拠が少ないわ。防ぎたくても」
「お金ではなく物ならどうですか?」
「え?」
利用できないようにしたらいいのではないか?
私達のような辺境地ではお金はそこまで役に立たない。
「お金なんて貧しい土地に住まう民には意味がありません」
「食料にするの?」
「ただし貴族や商人が利用できないように工夫をしてはいかがですか」
食料も豪華すぎないようにする。
小麦粉だって貴族や商人が好ましい物にすればよい。
「素晴らしいわアリア。貴女はなんて聡明なの…早速宰相様に」
少しでもお役に立てて良かった。
だけど…
「アリア、君は今後は社交界に出なくていい」
「え…」
ようやく居場所を見つけたと思ったのに。
認めてもらいたくて頑張ったのが裏目に出てしまった。
エセルバート様は私が外に働く事を良く思っていなかった。
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