義妹ばかりを溺愛して何もかも奪ったので縁を切らせていただきます。今さら寄生なんて許しません！

１８傷跡

エレナに傷の手当てをしてもらうと口の中も切れて血の味がした。


「酷い…酷すぎるわ」

「エレナ、泣かないで」


私の痛みよりもエレナの方が痛がっているようだった。


「あの男、全部放り出して逃げたんですよ」

「大丈夫よ。商会の皆さんに話をしに言ったのよ」


私では無理だわ。
今までも商談に出向く事はあったけど、私は役立たずだ。


「今はこの状況を打開しましょう」

「アリア様…何を」


留守を任せられたという事は私を信頼してくださっている事だわ。
ピンチの時こそ笑顔。


「今慌てても仕方ないわ。今できる事をする。人はそれだけしかできないわ」


これはイオンティーヌ様からの受け売りだ。


「悪い事はどう長く続かないでしょ？これ以上悪くなることもないはずよ」


「奥様…」


「直ぐにジョイルを呼んで来て」


「はっ…はい」


私はメリッサ様が卒業パーティーでどのような事をしたか解らない。
そして相手方であるロベスペール侯爵家との間にどんなやり取りをされていたのかも解らないならば知る必要がある。



「アリア様、お呼びですか」


「ジョイル、今からこの邸の女主人を任されました」

「はい…ですが」


解っている。
今の私ではできる事は少ない。

「私にできる事は少ないですが、このままではカスティージョ家は没落します」


既に社交界ではメリッサ様の噂は広まっているだろう。
王都の社交界事情に詳しくない私でも解る。


「社交界に出ます」

「お待ちください。お一人でですか」

「はい、エセルバート様により邸を任されました」


きっと私を信用してくれているのだろう。
ならば答えなくてはならない。



「ですが、今の社交界ではメリッサ様の醜聞により」

「だからです」

このまま放置していたらさらにひどくなる。
私の実家では悪い噂は放置しておけば更に状況は悪化する。

そして噂は他所から他所に移る。
お義父様が病に倒れ、お義母様も不在だから何もしなくて良い理由にはならない。


「便箋の用意を…それから慰謝料の料金を教えてください」


これでも私は領地で事業を手伝っていた。
商人の対応をする事もあったから多少はなんとかできる。

ただし王都の大商会等は女性では軽んじられる傾向がある。
領地代行をするお祖母様やお母様当初侮られていたけど、ここで怯むわけには行かない。


「カスティージョを没落させるわけには行きません。この邸の妻として」


私は私のできる事をしなくてはならないのだから。