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3不穏な前兆
しおりを挟むこう言っては何だけどメリッサ様は夢見がちな所があった。
お義母様に蝶よ花よと育てられていた事もあるけど、我儘放題に育ったと聞かされた。
対するお義父様はメリッサ様の我儘に困っていた。
厳しい言葉をかければ泣き出し癇癪を起こし、被害を被っていたのエセルバート様だったと聞く。
「いくら何でもおかしいだろ」
「頭が痛いな…」
二人が去った後二人は重いため息をつく。
これまでもやりたい放題をする二人に頭を抱えていたと聞く。
「これも私の所為だ。お前達が幼い頃は忙しかった」
「仕方ないではありませんか」
「忙しいながらも愛情を持って接して来たがメリッサは何でも欲しがるからな」
お義父様は忙しいがゆえに十分構ってやれなかった事で愛情の代わりに別の物を欲してしまったのだと教えてくれたけど、家が傾きかけたのだから仕方ない。
「母上は我が家の状況をもう少し理解して欲しいのですが」
「我が家の財も降って来たわけじゃないんだがな…」
今でこそカスティージョ家は軌道に乗っているけど、湯水のようにお金を使い続けてはどうなるか明らかだ。
「二人が稼いでくれているから良いが…あれは解っているのだろうか」
本来ならば私達は別所帯となる。
なのに邸をリフォームして同居をしている。
同じ敷地内でも邸を分ける事が多いのに何故そんな真似をしたかというと。
資金不足や物価の値上がりなどもあり経済的な理由が大きかった。
「お前達のおかげで今の生活ができているというのに」
「父上…」
「お父様、どうかそのような事を…」
優しいお義父様にこれ以上悲しい表情をして欲しくない。
私は百姓貴族故に農地を潤す方法は心得ている。
そして何より領地経営の経験がある。
節税対策も行い、できるだけ出費を抑えていたけど。
「給金を支払ってしかるべきだと言うのに」
私達が節約してもメリッサ様がその分使ってしまっているので意味がない。
だけど、嫁入り前のメリッサ様は社交場にも出ているので仕方ないと思っていた。
私は着飾る事はあまり好きじゃない。
だから大丈夫だった。
それに新しいドレスは無くても良い。
母が嫁ぐ時に誂えてくれたドレスに髪飾りがある。
どんな豪華なドレスよりも価値のある物だ。
だけど、私の大切なドレスは。
「メリッサ!それは…」
「いいでしょう?リメイクしたのよ」
「そのドレスは私の…」
嫁入り道具として母が誂えてくれたドレスはメリッサ様に奪われ、しかも別のドレスに変わってしまった。
「私の…私の大事なドレスが」
「ダサいから私がデザイナーに頼んで可愛くしてもらったの。あんなダサいの着ない方がいいわ。これは頂くわね」
そんな…
お母様が私の為に誂えれくれたのに。
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