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第四章幸福と不幸は紙一重

29.オルランド王国

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長い歴史を持つ大国オルランド王国にて。
要塞のような城の中にある祈りの間にて一人の美しい女王陛下が祈りを捧げ、今日一日の始まりに感謝をしていた最中。


「失礼します陛下!」


「朝から騒々しいですわね」

「ご報告が、アルテリア帝国より手紙が急ぎで来ております」

「何ですって!」


急いで侍女長から手紙を受け取ると。


「まぁ、なんてことですの」

「陛下、どうされました」


「我が国から派遣した女医達はやってくれましたわ!以前から計画されていた薬がようやく完成したのです。これで感染病に苦しむ民に、手術ができない民を救い出すことはできますわ」


「誠でございますか!」


普段から冷静な侍女長が声を上げることはまずないことだったが、それだけすごい事だった。


「既に実験は終わり、開発に身を乗り出しているとのこと。アーデルハイド嬢が費用を負担し、エドモンド先帝陛下も協力の元、薬を生産を終えた後に世に出すそうです」


手紙を握る手が震えていた。


「素晴らしい事です。この計画が成功すれば陛下の立場は…」

「そのようなことはどうでも良いのです!多くの民の命が救われます…何より彼女達が認められるのです」

才能がありながらも女と言うだけで蔑まれ、罵倒を浴びせられ続けた彼女達を救い上げたいと努力していた女王陛下はようやく報われたのだと思った。


「女性地位向上の計画の第一歩となりますわ」

「ブランターノ伯爵に感謝しなくてはなりません…いいえ、豊穣の女神に心より感謝を」

「勿論ですわ。今後は私達はカルフェオン王国の女神の後ろ盾となりますわ。しかし…」

手紙に書かれた内容を見てため息を付く。


「何か?」

「アーデルハイド嬢は矢面に立つことを望んでいないそうですわ」


女王陛下、ジェルラディンは困った表情をした。
ここまでの恩を貰いながら、お礼をしたいが、本人は目立つことを望んでいなかった。


通常は平民であるならば爵位と地位を与え、役職を与えるのが常だった。
しかし、本人が欲しているのはあくまで国同士の貿易ぐらいだった。

見返りが少なすぎるとも思うのだ。


「アーデルハイド様は元は貴族令嬢だったと聞きます」

「あの嘆かわしい茶番劇、私も耳にしましてよ。なんて馬鹿な事を」


国外追放になった事はエドモンドからも聞かされていたので思い出すだけでも腹が立つ。

「何時の時代も同じ。女が出世を望めば男は全力で潰しにかかるのです。美しくも聡明な女が迫害される等、言語道断…彼女は平和の女神様ですわよ」

「ええ、あの方は我らの救世主です。我が国の馬鹿な男達にも手が出せないように徹底いたします」

「頼みましたよ」


こうしてオルランド王国の女王に恩を売ることになったアーデルハイドの評価はさらに鰻登りとなっていた。


補足すると、オルランド王国の宮廷医師達の評価が落ち目になっていることもあり、派遣された女医達の活躍が報道されることになり、彼等の立場は悪くなってしまうのだった。


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