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第二章南の島開拓
24.披露宴
しおりを挟む結婚式が終わり披露宴が始まった。
通常では広間で食事会をしながら、楽しく過ごすのだが、ペトロは披露宴を盛り上げるべく様々なイベントを行った。
「さぁ、皆さん!今から船に乗ってください」
「さぁ、さぁ!どうぞ!」
大工ギルド達は場を盛り上げながら海岸沿いに島の住民を案内すると豪華な船が用意されていた。
「これは…」
「即興でありますが船をリフォームいたしました。島を一周する程度は可能です」
「素晴らしい!私は船が大好きなんだ…ペトロ殿!なんてすばらしい腕だ」
まず最初に大喜びしたのは言うまでもなくお祭り大好き、どっきり大好き、サプライズ大好きのジャンだった。
「なんて豪華な船なんだ!」
「ステラ…」
普段は冷静に見守ってるはずのステラも興奮気味だった。
「わぁ!船だよ」
「すごい、聖書で見た船だ!」
この島の子供達は豪華客船や、貿易の船をこの目で見ることはない。
せいぜい運送用の船か小舟ぐらいしか目にすることはない。
なので、大きな船で、しかも豪華客船並みの船を見て興奮しないはずはない。
そう、ここにいる彼等も。
「まぁ、なんて素敵な船なの」
「見事じゃ。私もあの船が欲しいぞ」
「母上、お祖父様…」
ちなみに王妃とその父も大の船好きで、部屋に船の模型を飾るほどだった。
「父上、あまりはしゃがれると…」
変装しているので目立つ行為は控えなくてはならないのだが、既に大騒ぎをしている二人は悪目立ちしていた。
「さっきから、騒々しいあの団体は?」
「ハイジ、気にするな。ああ…気にしなくていいぞ」
「ええ、そうよ」
フレディーとフレイアは気づいていた。
あの騒々しくも悪目立ちする団体に。
「お嬢!どうです。お気に召しましたか」
「えっ…お嬢」
「今後はお嬢と呼ばせていただきやすぜ?なんせ俺達の主になりますからね」
「貴族じゃないからお嬢様と呼べないなら大将も捨てがたかったんですが」
ペトロの弟子達はそろってお嬢呼びを連呼する。
これでは裏稼業姐さんのようだと思ったアーデルハイドは何とも言えない気分になった。
「ハイジ、いいんじゃないかしら」
「いえ…わたしはやーさんなんて目指してないわよ」
「じゃあ海賊風にすれば?」
腕はよく気前もいいが、第三者から見れば大工というよりも海賊に見える彼等に膝を着かれると、誤解されそうだと思ったのだが、彼らは大まじめだった。
「お嬢様、こいつらも悪気はないので許してやってください」
「親方」
「こいつ等は徹夜で船を仕上げて、お嬢様の門出を共に祝うことを本当に喜んでいたんですよ」
既に彼らは故郷に戻ることはできない。
帰る場所のない彼らはアーデルハイドのおかげでこの島に留まることが叶い、ジャンに口利きをしたおかげでこの島の大工一家として新たな居場所を得た。
その恩に報いたいと思っていたのだった。
アーデルハイドからすれば、島に優れた大工がいることは喜ばしいことだと思っていたので感謝されることはないと思っていたので困るも、ペトロや彼らの好意を無下にできず、受け入れる事にした。
「さぁ、船にお乗りください。これからが本番です!」
ペトロが合図をすると大工ギルド達は持ち場に戻って行った。
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