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第二章南の島開拓
22.売り込み
しおりを挟むペトロの心の傷を思うとやりきれない気持ちでいっぱいだった。
「お嬢様、お願いがあります」
「なんですか?私は貴族ではなくなったのでお嬢様ではありませんが」
「いいえ、俺達にとってはお嬢様です」
平民になろうとも態度を変えることがないペトロに困った表情をしながらもお願いを聞くことにした。
「それでお願いとは…できることは少ないですが」
「はい、俺達をこの島に…いいえ、お嬢様の専属大工に迎えてもらえませんか!」
「「「はい?」」」
驚いたのはアーデルハイドだけではなかった。
「聞けばこの島は文明が遅れているようです。俺達は大工ギルドです。弟子達も役に立ちます。どうか雇ってください…いいえ、給金はいりません!」
土下座をされて、驚くアーデルハイドは困り果てる。
「そういわれましても、私は平民にすぎません。そんなことは…」
「いや、可能だよ」
「ステラさん?」
助け舟を出すステラはペトロを見る。
「我が国の王はかなりの変わり者でね、しかも異国文化も大好きなんだよ」
「そうだな…新しい物とかも大好きだ」
ここにいる大工は普通の大工とは異なり、船の製作もしているので建築士として最高レベルの4スキルを持っている。
「カルフェオン王国では建築ができる職人は重宝されている。お前達は船は作れるか?」
「船なんて朝飯前だ。軍艦だって作れと言われれば作れるぜ小僧」
「フッ上等だ。船大工がいないことは死活問題だった。ならばお前達をこの島の大工として迎えるように俺が進言してもいい」
フレディーは思ってもみない好機だと思った。
島の船は古く老朽化が進み、修理を繰り返しているが、そろそろ寿命だった。
とは言え、ちゃんとした技術のある大工にしか任せられない。
だが、イングリット王国は多くのギルドを抱えている。
その中でも貴族と渡りをつけているならばかなりの腕前だと察した。
「小僧は一体何者だ」
「俺はアーデルハイドの夫だ」
「申し訳ありませんでしたぁぁぁ!」
「早っ!!アンタ早すぎだろ!」
最初は警戒心を持っていたが、アーデルハイドの夫と言われ即座に頭を下げる。
「なんなりとお申し付けを!」
「アンタ、プライドはないのかい!」
ステラが切り替えの早さに文句を言うも本人はきりッとした表情で笑う。
「親方、暑苦しいですわ…でも、いいタイミングですわね」
「おい、フレイア。何を考えている」
「私、とっても素敵なことを思いつきましたのよ?大事な親友には盛大な結婚式をして欲しいと思ってますのよ」
アーデルハイドは質素でも親しい人に祝福して貰えれば十分だと思っているが、豪華な結婚式が嫌なはずはない。
華やかなドレスに豪華な食事をしたいはずだ。
「親方、明日はハイジの結婚式ですの」
「なんですと!」
「でも、お金もなく、物もないので広間で食事をする程度なのです」
悲し気に涙を浮かべながら言うフレイアは懐から目薬を出して訴える。
「女性にとって結婚式は晴れ舞台なのに、あんまりだと思いませんか?」
「モーギュスト殺す、ぶっ殺す!」
憎しみが膨れ上がりペトロは何が何でもモーギュストに一矢報いてやろうとも思ったがその前にすべきことが浮かんだ。
「お嬢様、お任せを。明日の結婚式は俺達大工ギルドが盛大にしてみせます!」
「えっ…親方!」
「マダム!工具を借りるぜ!」
「ちょっ…」
そのまま全速力で庭に去っていくペトロだった。
その三時間後、弟子達も回復するや否や。
ペトロは弟子達と協力して一夜にしてとんでもない行動に出た。
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