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17心温まる食卓
しおりを挟むその夜、いつも以上に気温が低かった。
でも私の心はとても温かく、夕食にはシチューを用意した。
「これは?」
「パイシチュー」
寒い日は体を温めるにはシチューが一番だった。
「不思議なシチューだな」
「中のパイを壊して食べて」
「ああ」
中のシチューが覚めないようにパイで包む。
パイ生地とシチューは相性が抜群だった。
「美味い…すごく」
「温まるね」
ふと周りを見渡すとノーム達や皆が集まっている。
「皆腹ペコのようだな」
「ノームともかくあの二匹は大丈夫かな?」
「問題ない」
犬用じゃないけど、別で作ればいいかな?
「皆もどうぞ」
パイシチューを用意すると皆がっついた。
「すごく温かい」
「ああ、すごく」
こんなにも心が温まるのはパイシチューのおかげじゃない。
アレクや、皆がいるから。
そっか…
私はこんな風にワイワイ楽しく食卓を囲みたかったんだ。
パパが死んでから私は一人で食事をしていた。
ギョーム達が食事をしている時は私は台所で一人仕事をして一人だった。
食事は一人寂しく堅いパンをかじるだけだった。
「兄上にも食べさせてあげたかったな」
「アレク?」
「すまない…」
アレクのお兄様は病気で食事ものぞが通らないんだった。
待てよ?
だったら食べて貰えばいいんじゃない?
「アレク、食べて貰おうよ!」
「え?」
「私がアレクのお兄様にご飯を作るよ!」
そうだわ。
何で今まで気づかなかったんだろう。
私がアレクの国を行けばいいんじゃない!
「そうだ、そうしまよう!」
「しかし…いいのか?」
「私は追放の身だもの!身軽よ」
アレクには沢山助けてもらったし、辛い表情なんて見たくない。
「それに外の世界ではお腹を空かせた人がいるんでしょ!そうだわ、飯炊きの旅なんていいわね!」
外の世界でも食料が足りない人は多い。
アレンドール王国は友好国にも食料の援助はしなかった。
政治的に交渉に使うので、援助はしなかったらしい。
でも、私はずっと嘆いていた。
「お腹を空かせている子供だっているわ」
「アンリ、俺は時折君の前向きさがすごくまぶしく感じるよ」
「人間後ろだけ見ていても仕方ないわ」
沢山ご飯を食べて寝ればなんとかなる。
とにかくご飯を食べてお腹いっぱいになればなんとかなる。
明けない夜はないのだから。
「そうと決まれば今日は沢山食べて寝ましょう!」
「ありがとうアンリ」
そうと決まれば明日は明け方に出発しないとね。
「イチロー!明日決行よ!」
私は新たな目標の為に気合を入れることにした。
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