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67.母からの贈り物

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心配は杞憂に終わった。
式典開始前に王宮で問題は起きなかった。


「気にし過ぎたか」


予定通り貴族達は王宮の広間にて集まり。
各国の代表も予定通り貴賓室にて待機していたと聞く。


「しかしこうも静かだと不気味だな」

「まったく、みみっちい事で悩むとは相変わらずね」

「母上!」

音もなく背後から現れた母上に驚く。
何故か普通にお茶を飲んでリラックスモードの伯母上も。


「まったく持って度胸がないわね。帝国でちゃんと役目を果たしているの?」

「母上を欺くことができれば、どんな手練れのスパイでも対策ができます」


この国で母上を出し抜ける人間がそう何人もいるか?


「どうしたんですか?ここは俺達の部屋ですよ」

「解っているからこっそり隠し通路を使ったのよ」

「中々楽しめましたよ」


こんな大事な日まで何をしているんだ。


「ユーリ様、そろそろ移動に…まぁ、何時の間に」

アイリス。
それだけなのか?

他に言う事があるだろう。


「アイリス!」

「ブッ!」


突っ込み所満載だと思きや、油断した俺を蹴飛ばし母上はアイリスを抱きしめた。


「ああ、元気そうで何よりですわ。今日の日を待っていましたよ」

「ご無沙汰しております」

「元気そうでなにより。ドレスも良く似合っているわ…流石ジャック。いい仕事しているわ」


母上、息子を踏みつけたままなのはどうかと思いますよ。


「ビアンカ、あれを」

「ええ」


ようやく俺を踏みつけるの止めてくれたと思えば、傍に置いている箱を見せる。


「アイリス、こちらを」

「これは?」


箱を開けると中には帝国の紋章が刻まれていた。

「これは…」

「我が帝国のティアラですわ」


俺も実際目にするのは初めてだが、銀のティアラにルビーを囲むように小さなダイヤモンドが散りばめられている。


「そしてこちらは首飾り、貴女の鎧よ」

「鎧?」

「帝国で皇女が常にダイヤモンドの首飾りを身に着けたるのは身を守る為。銃弾が胸を狙う時弾く為でもあります。勿論ドレスに身に着けブローチも心臓を守る為」

「いや、確かに大昔ではありましたが」


「心臓を狙われればアウトですわ。後は王冠やティアラにも細工がしてあります。謁見のまで貴女の
身を守ってくれるでしょう」


今日は同盟を結ぶ式典で戦場に行くわけじゃないんだが。

「完全装備で行けば大丈夫よ」

「はい!ありがとうございます」


アイリス、本当に良いのか!


俺は頭を抱えながらも見ているだけだった。


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