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59.我が家の鬼
しおりを挟む離宮にて過ごし、アイリスの傍には常にリリアンが守っている。
皇太子妃専属の護衛の証を身につけさせているので、ブリチア王国の近衛騎士も理解してくれているだろう。
シメリス帝国では赤はエリートの証だった。
皇族の傍にいることが許された近衛騎士は赤を身に纏い、そして銀のブローチを身に着けることが許されるのは騎士の中でも地位が高いのだ。
「リリアン、各国の貴賓達との挨拶が始まったら」
「心得ております。どうかお任せください」
「ああ」
俺は皇太子としてずっと傍にいるのは難しい。
傍にいたからと言って確実に守れるわけでもないのでリリアンがいる。
「アイリス様の事はお任せくださいませ」
「ジューン」
「魔女の手が届かぬように私がいますわ。私の趣味は知っておりますでしょう?」
兄上の傍付きの侍女であり、ジャックの実の姉にして兄上の婚約者。
まだ公になっていないが、ジューンは母上にも気に入られ現在は子爵の爵位から伯爵位を得ている。
ウィンディア辺境伯爵家の侍女長を取り仕切っている。
剣術の腕も素晴らしいが、恐ろしい程に頭の回転が速く、恐ろしい女傑だった。
「あの魔女姉妹をアイリス様に近づけはしませんわ」
「ジューン」
「どうかご安心くださいませ。念のために愚弟にも準備をさせておりますが、あれは少々間が抜けているので」
そして母上同様に男に厳しい一面を持つ。
だが、兄上はジューンに頭が上がらず、幼少期は姉のような存在だったのだが。
俺達兄弟は女性の好みが似通っているようだ。
まぁアイリスとジューンではかなりの差があるが、聡明で強い女性に惹かれるのは共通している。
「当日、あの馬鹿共は気品の欠片もない装いで来るでしょう」
「まぁ、派手好きだからな」
「自ら墓穴を掘って恥を晒すだけでは甘すぎますわ。これ以上無い程の屈辱を味合わせなくてはなりません」
「あっ…ああ」
ジューン、かなり根に持っているな。
それもそうか。
ステンシル侯爵家の所為で俺達がどれだけ恥をかかされたか。
特にアイリスと婚約期間に、偽りの噂を流され無理矢理結婚させられそうになったんだ。
その前から、ジューンは使用人という理由で馬鹿にされ。
ジャックも侮辱されて来たのだからな。
挙句の果てにウィンディア辺境伯爵家を非難する行為は殺しても殺したりないだろう。
「死ぬよりも惨めな目に会わせますのでご期待を」
「えっ…でも、法に触れるようなことは」
「社会から抹殺すれば良いのです」
アイリスが遠慮がちに言うも、殺る気でいるので何とも言えない。
そんなこんなで夜は更けて行ったのだった。
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