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60.知らなかった事~ステンシル侯爵side

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当日まで時間がないからと仕立て屋や商人を呼びつけドレスや宝石を用意させる妻。
娘達も国一番の豪華なドレスを作るように告げるも、仕立て屋が渋った表情をしたのでイライザが癇癪を起した。


「私の言う通りにしなさい!」

「お言葉ですが、今からでは時間が御座いません。それに、王命により衣装の制限がかけられております」

「は?」


注文したドレスは赤を強調させ、黒のレースをふんだんに使った物を望んだようだ。


「本日は他国との同盟を結ぶパーティーですので、赤や黒は相応しくなと。特に…」

「いいから私のオーダーしたとおりになさい!」

「ですが…承知いたしました」


全く、なんて無能なのだ。
客が望めば答えるのが職人ではないのか。

この程度の事は出来ないとは。


「まったく、なんて三流なのかしら。今回は時間がないから仕方なかったけど。あの仕立て屋はギルドから追放すべきだと言わなくては」

「そうよ、未来の皇后の装いをこんな地味な装いにするなんて」

「お姉様!ペチコートももっとゴージャスすべきだわ」


三人はドレスや宝石を選び、靴までも最上級の物を用意させた。


「これが良いわ、宝石を散りばめて作った靴。冴えるわ」

「私はこの黒いドレスにするわ、後はこの首飾りがいいわ!」


最初こそは見守っていたが、二人の金遣いの荒さにゾッとする。

いくら何でもやり過ぎではないか。


「お目が高いですね。そちらの首飾りは一級品でございます。鎖は純金を使っております」

「悪くないわね…私はこれを頂くわ」


イライザが手に取ったのは全てがダイヤモンドでできている首飾りだった。


「こちらは鎖もすべてダイヤモンドを使っている代物です。中心のダイヤモンドだけでも相当な値段になります」

「この程度、たいしたことはないわ。一括でいいわ。それからドレスを後十着と宝石も足りないわ」


「待て…お前」


いくらなんでもやり過ぎだ。
我が家はそんな金はない。


アイリスが国を出て以来、領地経営に携わっていた者や、懇意にしていた貴族からも手を切られ。

取引先とも縁を切られた後に領地は経営が上手くいっていなかった。
それでもウィンディア辺境伯爵家と関係がまだ続いていた頃は良かったが、正式に関係を断たれた後は物資が滞ってしまった。


彼等は辺境伯爵家を代表するウィンディア辺境伯爵家を侮辱したと言いがかりをつけだし我が家を孤立させようと暗躍した。

愚かな事だ。
咎められるべきは公の場でイライザを侮辱したユーリ殿だ。

ユーリ殿がイライザに言い寄ったのだ。


私達に非はないと言うのに。


「侯爵閣下、こちらにサインをお願いいたします」

「あっ…ああ」


ようやく終わったのか書類を渡され私はサインをした。


しかしその金額を確認しておらず支払いを貸付払いクレジットにした事を後に後悔することになるのだった。


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