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第十一話 リグルの洞窟①
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松明の明かりが辺りの闇を払おうと奮闘している。
しかしのっぺりとした漆黒が相手では灯火は心もとなく、わずか先の岩肌が望めるのみだ。至るところでもその状況は同じで、時折クラスメイトの不安そうな顔が、松明の明かりでぼうっと浮かび上がる。
ここは王都にほど近い森に存在する、リグルの洞窟である。凶悪な魔物の巣窟であり、下層は危険度Aの古代遺跡につながっているという、少しばかり厄介なダンジョンだ。
王都の側ということを考えればとっくの昔に封印なり何なりの処置が行われていてもおかしくない場所だが、リグルの洞窟は現在も魔窟として放置されている。
その理由の一つは、洞窟の表層に出没する魔物は比較的低レベルのものが多く、学生や新兵の鍛錬場として活用されているためだ。
クラスメイトたちが緊張の糸を張り巡らせながら歩を進める中、私は心のなかでくぅーっと歓声を漏らす。
(これこれ! この課外活動の時を待っていたのよ!)
ともすればスキップを刻んでしまいそうな私の高揚を察したのか、隣を歩くキュロットが、困惑顔を浮かべて問いかけてくる。
「なんだかとても嬉しそうですわね。わたくしは初めて魔物と対峙するのかと思うと不安でなりませんのに」
「ん? あー、大丈夫、大丈夫。この洞窟、表層は本当に雑魚モンスターしか出ないから」
あっけらかんとした私の言葉に、前を歩くブラドが振り返り、小首をかしげた。
「そんなことどうしてわかるの? ここは一般人は立入禁止だし、シエザも足を踏み入れるのは初めてだよね?」
「そりゃゲームで何度も……じゃなかった。ほら、授業で予習したでしょ。基本的なデータは頭に入ってるし、楽勝楽勝」
「ハニー、そうは言っても洞窟探索に心躍らせる理由にはならないだろう。何かあるなら教えてくれるかい?」
と、ルフォートが会話に入ってくる。
別に隠し立てするようなことでもないので、私はすぐさまその問いかけに答えた。
「だってここで採取できた魔素や魔鉱石は自分たちで持って帰れるのよ? そりゃテンション上がるでしょ!」
魔素とは魔物たちの核であり、魔物たちを倒すとドロップされるものだ。黒いビー玉のような外見をしており、魔道具の材料や、魔法薬の原料としても利用されている。
魔鉱石は魔素と鉱物が長い年月をかけて融合したものである。こちらは主に魔力を帯びた武具、あるいは高価な装飾品として加工される。
私の目当てが魔素や魔鉱石と聞いて、キュロットが感服したように何度も頷く。
「魔素や魔鉱石ですか。確かに色々と使い道がございますし、研究材料として魅力的ですわよね。さすがシエザ、素晴らしい向上心ですわ」
「ま、まあね。学生の本分は勉学だから」
話を合わせてそう応じたが、本音はもちろん別のところにある。
王立学園の生徒はみな貴族出身ということもあり、金銭感覚というものが市井からかけ離れている。実は魔素や魔鉱石は街で売買すればかなり高額で取引されるのだが、生徒たちはそういった選択肢を取らず、惜しげもなく自身の研究や装備を充実させるための素材として使用するのである。
しかし私は違う。
平民出身のヒロイン視点でゲームプレイ済みなので、この世界のアイテムがどの程度の市場価値なのか把握している。
(ローリント伯爵家はもちろん裕福だけど、私個人で自由に使えるお金となると限られてくるだろうし。卒業後も悠々自適に暮らしていくために、自力で一財産作っとくのはアリよね!)
しかしのっぺりとした漆黒が相手では灯火は心もとなく、わずか先の岩肌が望めるのみだ。至るところでもその状況は同じで、時折クラスメイトの不安そうな顔が、松明の明かりでぼうっと浮かび上がる。
ここは王都にほど近い森に存在する、リグルの洞窟である。凶悪な魔物の巣窟であり、下層は危険度Aの古代遺跡につながっているという、少しばかり厄介なダンジョンだ。
王都の側ということを考えればとっくの昔に封印なり何なりの処置が行われていてもおかしくない場所だが、リグルの洞窟は現在も魔窟として放置されている。
その理由の一つは、洞窟の表層に出没する魔物は比較的低レベルのものが多く、学生や新兵の鍛錬場として活用されているためだ。
クラスメイトたちが緊張の糸を張り巡らせながら歩を進める中、私は心のなかでくぅーっと歓声を漏らす。
(これこれ! この課外活動の時を待っていたのよ!)
ともすればスキップを刻んでしまいそうな私の高揚を察したのか、隣を歩くキュロットが、困惑顔を浮かべて問いかけてくる。
「なんだかとても嬉しそうですわね。わたくしは初めて魔物と対峙するのかと思うと不安でなりませんのに」
「ん? あー、大丈夫、大丈夫。この洞窟、表層は本当に雑魚モンスターしか出ないから」
あっけらかんとした私の言葉に、前を歩くブラドが振り返り、小首をかしげた。
「そんなことどうしてわかるの? ここは一般人は立入禁止だし、シエザも足を踏み入れるのは初めてだよね?」
「そりゃゲームで何度も……じゃなかった。ほら、授業で予習したでしょ。基本的なデータは頭に入ってるし、楽勝楽勝」
「ハニー、そうは言っても洞窟探索に心躍らせる理由にはならないだろう。何かあるなら教えてくれるかい?」
と、ルフォートが会話に入ってくる。
別に隠し立てするようなことでもないので、私はすぐさまその問いかけに答えた。
「だってここで採取できた魔素や魔鉱石は自分たちで持って帰れるのよ? そりゃテンション上がるでしょ!」
魔素とは魔物たちの核であり、魔物たちを倒すとドロップされるものだ。黒いビー玉のような外見をしており、魔道具の材料や、魔法薬の原料としても利用されている。
魔鉱石は魔素と鉱物が長い年月をかけて融合したものである。こちらは主に魔力を帯びた武具、あるいは高価な装飾品として加工される。
私の目当てが魔素や魔鉱石と聞いて、キュロットが感服したように何度も頷く。
「魔素や魔鉱石ですか。確かに色々と使い道がございますし、研究材料として魅力的ですわよね。さすがシエザ、素晴らしい向上心ですわ」
「ま、まあね。学生の本分は勉学だから」
話を合わせてそう応じたが、本音はもちろん別のところにある。
王立学園の生徒はみな貴族出身ということもあり、金銭感覚というものが市井からかけ離れている。実は魔素や魔鉱石は街で売買すればかなり高額で取引されるのだが、生徒たちはそういった選択肢を取らず、惜しげもなく自身の研究や装備を充実させるための素材として使用するのである。
しかし私は違う。
平民出身のヒロイン視点でゲームプレイ済みなので、この世界のアイテムがどの程度の市場価値なのか把握している。
(ローリント伯爵家はもちろん裕福だけど、私個人で自由に使えるお金となると限られてくるだろうし。卒業後も悠々自適に暮らしていくために、自力で一財産作っとくのはアリよね!)
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