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第十話 よくってよ!
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本格的に始まった学園生活は、私の望み通り、順調な滑り出しとなった。その大きな要因はやはり、キュロットと親密にしているためだろう。
縦ロール騒ぎでクラスメイトのみならず、上級生や教員からも只者ではないと認識されるように至ったキュロット。そんな彼女の側にいつも寄り添っている私もやはり、周りからすれば軽視できない人物と映るようで、下校の際には見ず知らずの生徒たちからも、
「ご機嫌麗しゅう、シエザ様」
と挨拶されるようになった。
まさしく令嬢である。
ちやほやされるお嬢様である。
よくってよ。
オホホ、よくってよ!
さらには喜ばしい誤算もあった。『王立学園の聖女』では攻略対象とシエザが絡むシーンはほとんどなく、モブとメインキャラの立場というものがはっきりしていた。
そのため、私も王子たちとは顔見知り程度の関係しか築けまいと、そう考えていたのだが。
「うん。今日も綺麗にセットできたわ。ちょっと待ってね。いま氷の鏡を……」
「その必要はありませんわ」
「うっ。相変わらず私の瞳を鏡代わりにするのね。ちょっと近くない? なんというか、さすがに恥ずかしいというか……」
「あら、いいじゃありませんか。女の子同士なのですし」
「いやまあそうなんだけど。ええと、二人にもお礼言わなきゃだし。ねっ?」
「ぼ、僕は大したことしてないから、お礼なんていいよ。いい魔法の鍛錬にもなってるし」
「同感だ。女性が美しくなる手助けができることは喜ばしいことだしな」
縦ロールを維持するには毎日の手入れが必須。私とブラド、そしてルフォートの三人で日々セットを続けるうち、部活仲間のような連帯感も生まれ、気心の知れた間柄となった。
さらには、
「ああ、シエザ。今日も元気そうで何よりだ。もし何か困ったことがあれば遠慮なく言うといい。私で良ければ力になろう」
キュロットに会うためだろう。ヒーシスが足しげく私たちのクラスに通い、私にも気さくに声をかけてくれるようになった。
婚約者の友人は無下にできないという配慮だろうが、時折キュロットそっちのけで色々と話しかけてくるため、キュロットが嫉妬して、私の腕をとって王子から引っ剥がすこともしばしば。
いや、引っ張ってくなら私じゃなくてヒーシスでしょうに。
まあとにかく、おかげで王子とも随分と仲良くなれた。
こうして、王立学園で最も影響力があるであろう四人と良好な関係を築けた私は、間違いなく学園カーストの最上位の一角を占める存在となった。
このまま平穏無事に卒業し、学園で育んだ人脈を活用すれば、将来も安泰だ。
(転生してよかった! ヒロインが転入してからが本番だけど、この分なら楽勝でしょ!)
と、思っていたのだが。
入学してからわずか一ヶ月にして、私は自分の考えが甘かったことを思い知るのだった。
縦ロール騒ぎでクラスメイトのみならず、上級生や教員からも只者ではないと認識されるように至ったキュロット。そんな彼女の側にいつも寄り添っている私もやはり、周りからすれば軽視できない人物と映るようで、下校の際には見ず知らずの生徒たちからも、
「ご機嫌麗しゅう、シエザ様」
と挨拶されるようになった。
まさしく令嬢である。
ちやほやされるお嬢様である。
よくってよ。
オホホ、よくってよ!
さらには喜ばしい誤算もあった。『王立学園の聖女』では攻略対象とシエザが絡むシーンはほとんどなく、モブとメインキャラの立場というものがはっきりしていた。
そのため、私も王子たちとは顔見知り程度の関係しか築けまいと、そう考えていたのだが。
「うん。今日も綺麗にセットできたわ。ちょっと待ってね。いま氷の鏡を……」
「その必要はありませんわ」
「うっ。相変わらず私の瞳を鏡代わりにするのね。ちょっと近くない? なんというか、さすがに恥ずかしいというか……」
「あら、いいじゃありませんか。女の子同士なのですし」
「いやまあそうなんだけど。ええと、二人にもお礼言わなきゃだし。ねっ?」
「ぼ、僕は大したことしてないから、お礼なんていいよ。いい魔法の鍛錬にもなってるし」
「同感だ。女性が美しくなる手助けができることは喜ばしいことだしな」
縦ロールを維持するには毎日の手入れが必須。私とブラド、そしてルフォートの三人で日々セットを続けるうち、部活仲間のような連帯感も生まれ、気心の知れた間柄となった。
さらには、
「ああ、シエザ。今日も元気そうで何よりだ。もし何か困ったことがあれば遠慮なく言うといい。私で良ければ力になろう」
キュロットに会うためだろう。ヒーシスが足しげく私たちのクラスに通い、私にも気さくに声をかけてくれるようになった。
婚約者の友人は無下にできないという配慮だろうが、時折キュロットそっちのけで色々と話しかけてくるため、キュロットが嫉妬して、私の腕をとって王子から引っ剥がすこともしばしば。
いや、引っ張ってくなら私じゃなくてヒーシスでしょうに。
まあとにかく、おかげで王子とも随分と仲良くなれた。
こうして、王立学園で最も影響力があるであろう四人と良好な関係を築けた私は、間違いなく学園カーストの最上位の一角を占める存在となった。
このまま平穏無事に卒業し、学園で育んだ人脈を活用すれば、将来も安泰だ。
(転生してよかった! ヒロインが転入してからが本番だけど、この分なら楽勝でしょ!)
と、思っていたのだが。
入学してからわずか一ヶ月にして、私は自分の考えが甘かったことを思い知るのだった。
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