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第九話 そのアイテムは!②
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「キュロットの縦ロールも完成したことだし、とりあえず一休みしたいわね。また医務室のベッド借りたりできないかしら」
「お待ちになってください。魔力切れならわたくしが何とかできるかもしれませんわ」
「え? 何とかって、どうするの?」
私が小首を傾げていると、キュロットは口で説明するより行動で見せたほうが早いと判断したらしい。その場で目を閉じると、何らかの魔法を使おうとしているようで、精神統一にはいった。
キュロットの魔力が上がっていくのを感じる。その全身が淡く輝く靄に包まれる。
やがてキュロットは刮目し、鋭い声を放った。
「心を誘い、癒し手と成せ! ドレイン・ヒール!」
キュロットから立ち昇っていた靄が私とブラド、ルフォートの三人を包んだ。突然のことに身構えた私だが、この光輝を放つ靄に既視感を覚える。
(あ、これってもしかして……)
身体にまとわり付いてくる靄から魔力が流れ込んでくるのを感じた。同時に、先程までの疲労感が徐々に霧散していく。
(やっぱり。ゲームでキュロットが使ってた精神魔法の一つよね)
『王立学園の聖女』は乙女ゲームであるものの、RPGの要素もふんだんに組み込まれている。
ヒロインは学園で催される模擬戦闘で何度かキュロットとの戦闘にも臨むのだが、その際にキュロットが使用していた精神魔法の一つに、魔力を回復するものがあった。それがこの魔法だ。
ブラドとルフォートが驚きの声を上げる。
「すごい。まだ学生なのにこんな魔法が使えるなんて」
「ああ。さすがアドバリテ侯爵令嬢。かの高名な魔導師の末裔だけあるな」
感心しきりの二人だが、私はすぐさま声を荒げた。
「キュロット、止めなさい! ストップ!」
「え? ですが皆さん、まだ魔力は完全に戻ってはいないでしょう?」
「いいのよ、もう十分。だってこれって確か、相手の魔力を吸収して回復にあてる魔法だったでしょ? 自分の魔力を私たちに分けてるんじゃないの?」
キュロットがハッとした表情で私のことを見返してきた。それは雄弁な肯定のサインであり、よくよく観察すれば、先程よりも顔色が優れない。私たちに魔力を分け与えたことで、疲労の波が押し寄せているのだろう。
キュロットは観念したようにため息をついた。
「ええ。シエザの仰る通りですわ。でも、どうしておわかりになったの?」
「そりゃゲームで……じゃなかった。ええと、魔法に関してはちょっと独学で勉強したから。それより、平気なの?」
「ええ。わたくし、人より少し魔力量が多いようなので。これくらい平気ですわ」
それは嘘ではないのだろう。何せゲームではヒロインの最大のライバルなのだ。聖女と張り合うだけあって、キュロットのステータスは人並み外れている。
私は安堵しつつ問いかけた。
「それならいいんだけど……ところで、一ついい? 今の魔法って、自分の魔力回復のためのものなんじゃなかったっけ? 自分の魔力を分け与えるなんて芸当もできるの?」
私が疑念を抱いたのには理由がある。
ゲームでの模擬戦では、キュロットは自分の魔力を回復する際にだけ、今の魔法を使っていた。チーム戦でシエザと共闘している場面ですら、自分の回復のみに使用していたと記憶している。
「お待ちになってください。魔力切れならわたくしが何とかできるかもしれませんわ」
「え? 何とかって、どうするの?」
私が小首を傾げていると、キュロットは口で説明するより行動で見せたほうが早いと判断したらしい。その場で目を閉じると、何らかの魔法を使おうとしているようで、精神統一にはいった。
キュロットの魔力が上がっていくのを感じる。その全身が淡く輝く靄に包まれる。
やがてキュロットは刮目し、鋭い声を放った。
「心を誘い、癒し手と成せ! ドレイン・ヒール!」
キュロットから立ち昇っていた靄が私とブラド、ルフォートの三人を包んだ。突然のことに身構えた私だが、この光輝を放つ靄に既視感を覚える。
(あ、これってもしかして……)
身体にまとわり付いてくる靄から魔力が流れ込んでくるのを感じた。同時に、先程までの疲労感が徐々に霧散していく。
(やっぱり。ゲームでキュロットが使ってた精神魔法の一つよね)
『王立学園の聖女』は乙女ゲームであるものの、RPGの要素もふんだんに組み込まれている。
ヒロインは学園で催される模擬戦闘で何度かキュロットとの戦闘にも臨むのだが、その際にキュロットが使用していた精神魔法の一つに、魔力を回復するものがあった。それがこの魔法だ。
ブラドとルフォートが驚きの声を上げる。
「すごい。まだ学生なのにこんな魔法が使えるなんて」
「ああ。さすがアドバリテ侯爵令嬢。かの高名な魔導師の末裔だけあるな」
感心しきりの二人だが、私はすぐさま声を荒げた。
「キュロット、止めなさい! ストップ!」
「え? ですが皆さん、まだ魔力は完全に戻ってはいないでしょう?」
「いいのよ、もう十分。だってこれって確か、相手の魔力を吸収して回復にあてる魔法だったでしょ? 自分の魔力を私たちに分けてるんじゃないの?」
キュロットがハッとした表情で私のことを見返してきた。それは雄弁な肯定のサインであり、よくよく観察すれば、先程よりも顔色が優れない。私たちに魔力を分け与えたことで、疲労の波が押し寄せているのだろう。
キュロットは観念したようにため息をついた。
「ええ。シエザの仰る通りですわ。でも、どうしておわかりになったの?」
「そりゃゲームで……じゃなかった。ええと、魔法に関してはちょっと独学で勉強したから。それより、平気なの?」
「ええ。わたくし、人より少し魔力量が多いようなので。これくらい平気ですわ」
それは嘘ではないのだろう。何せゲームではヒロインの最大のライバルなのだ。聖女と張り合うだけあって、キュロットのステータスは人並み外れている。
私は安堵しつつ問いかけた。
「それならいいんだけど……ところで、一ついい? 今の魔法って、自分の魔力回復のためのものなんじゃなかったっけ? 自分の魔力を分け与えるなんて芸当もできるの?」
私が疑念を抱いたのには理由がある。
ゲームでの模擬戦では、キュロットは自分の魔力を回復する際にだけ、今の魔法を使っていた。チーム戦でシエザと共闘している場面ですら、自分の回復のみに使用していたと記憶している。
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