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第一話 ゲーマー女神⑤
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「シエザ・ローリント! ローリント伯爵家の令嬢で、ほら、片眼鏡かけてる! 氷魔法が得意な子!」
そこまで言って、ようやく把握できたらしい。セレーヌはぽんと手を打ち鳴らすが、すぐさま困惑顔を浮かべる。
「シエザって、あの子ですよね? ヒロインの敵役である、キュロット嬢の取り巻きの……」
「そうそう。いつも悪役令嬢の後ろに控えてる、参謀的なクールな感じの子」
「あの、どうしてシエザさんなんでしょうか? ヒロインの聖女にだってなれますし、取り巻きのキャラになんかならずとも、それこそシエザを従えるキュロットになって、王太子を奪い合うなんてこともできますけど……」
セレーヌのその台詞に対し、私は手をパタパタと振り、おざなりに告げる。
「あー、ないない。『王立学園の聖女』って、乙女ゲームだけど魔物との戦闘シーンとかもあるでしょ。聖女になって人類の存亡をかけた戦いに巻き込まれるなんて、そんな危なっかしいことしたくないし。
キュロットは意外と憎めなくて好きなキャラだけど、破滅フラグだらけだから。そういうの回避しながら生きるのって面倒くさそう」
その点、シエザは素晴らしい!
由緒正しきローリント伯爵家の出自であるため、経済力も申し分なく、何の不自由もない生活が保障されている。
ヒロインの敵役、悪役令嬢のキュロット・アドバリテの取り巻きという立ち位置も美味しい。
何せキュロットの取り巻きというだけで学園カーストの最上位は確定なのだ。快適な学園生活が送れること間違いなし。
これまでは、いつ契約を切られるかとビクビクしながら、ブラック企業で馬車馬のように働かされてきた。
ならば、次の人生こそは。
雨ニモ濡レズ
風ニモ吹カレズ
雪ヤ夏ノ暑サカラハ バカンス旅行デ逃レル
潤沢ナ経済力ヲ持チ
皆ニ オ嬢様ト呼バレ
褒メソヤサレ
一目置カレル……
そこで私は拳を握りしめ、高らかに掲げて宣言した。
「そういう人生イージーモードのシエザ嬢に、私はなりたい!!」
ここが崖の上ならば、高波がザッパーンと打ち寄せ、煌めく水沫が私を彩ったことだろう。
低俗な望みだと恥じ入ることなどない。なんたって私は、新たな自分へと生まれ変わるのだから。
啞然とした様子で私のことを見つめていたセレーヌが、ハッと我に返った。
セレーヌはどこか釈然としない表情ながらも言葉を紡ぐ。
「えっと……わかりましたぁ。シエザ・ローリントへの転生希望ですね。それではリラックスして瞳を閉じてください」
言われた通りにすると、やがて全身が光の粒子と化し、背後へと引っ張られるような感覚がした。
先程まですぐ近くで聞こえていたセレーヌの声が、遥か彼方から響いてくる。
「一ノ瀬奏の魂よ。新たな旅路に幸多からんことを……」
そうして私の意識は溶けていった。
そこまで言って、ようやく把握できたらしい。セレーヌはぽんと手を打ち鳴らすが、すぐさま困惑顔を浮かべる。
「シエザって、あの子ですよね? ヒロインの敵役である、キュロット嬢の取り巻きの……」
「そうそう。いつも悪役令嬢の後ろに控えてる、参謀的なクールな感じの子」
「あの、どうしてシエザさんなんでしょうか? ヒロインの聖女にだってなれますし、取り巻きのキャラになんかならずとも、それこそシエザを従えるキュロットになって、王太子を奪い合うなんてこともできますけど……」
セレーヌのその台詞に対し、私は手をパタパタと振り、おざなりに告げる。
「あー、ないない。『王立学園の聖女』って、乙女ゲームだけど魔物との戦闘シーンとかもあるでしょ。聖女になって人類の存亡をかけた戦いに巻き込まれるなんて、そんな危なっかしいことしたくないし。
キュロットは意外と憎めなくて好きなキャラだけど、破滅フラグだらけだから。そういうの回避しながら生きるのって面倒くさそう」
その点、シエザは素晴らしい!
由緒正しきローリント伯爵家の出自であるため、経済力も申し分なく、何の不自由もない生活が保障されている。
ヒロインの敵役、悪役令嬢のキュロット・アドバリテの取り巻きという立ち位置も美味しい。
何せキュロットの取り巻きというだけで学園カーストの最上位は確定なのだ。快適な学園生活が送れること間違いなし。
これまでは、いつ契約を切られるかとビクビクしながら、ブラック企業で馬車馬のように働かされてきた。
ならば、次の人生こそは。
雨ニモ濡レズ
風ニモ吹カレズ
雪ヤ夏ノ暑サカラハ バカンス旅行デ逃レル
潤沢ナ経済力ヲ持チ
皆ニ オ嬢様ト呼バレ
褒メソヤサレ
一目置カレル……
そこで私は拳を握りしめ、高らかに掲げて宣言した。
「そういう人生イージーモードのシエザ嬢に、私はなりたい!!」
ここが崖の上ならば、高波がザッパーンと打ち寄せ、煌めく水沫が私を彩ったことだろう。
低俗な望みだと恥じ入ることなどない。なんたって私は、新たな自分へと生まれ変わるのだから。
啞然とした様子で私のことを見つめていたセレーヌが、ハッと我に返った。
セレーヌはどこか釈然としない表情ながらも言葉を紡ぐ。
「えっと……わかりましたぁ。シエザ・ローリントへの転生希望ですね。それではリラックスして瞳を閉じてください」
言われた通りにすると、やがて全身が光の粒子と化し、背後へと引っ張られるような感覚がした。
先程まですぐ近くで聞こえていたセレーヌの声が、遥か彼方から響いてくる。
「一ノ瀬奏の魂よ。新たな旅路に幸多からんことを……」
そうして私の意識は溶けていった。
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