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第一話 ゲーマー女神④
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私が目を瞬いていると、セレーヌは自慢げに胸を反らす。
「先程お伝えした通り、わたしは女神ですので。そういった奇跡を扱えるんですよ。
奏さんの魂をこちらにお連れしたのも、このまま天界に至るか、それとも新たな人生を歩まれるかお聞きするためだったので」
「ほ、本当に? ちょっとそれ詳しく!」
勢い込んで訊ねる私に対し、セレーヌは満足げに続けた。
「実はわたし、ゲームを司る女神なんです。
ゲームは人々の心を異世界へと誘い、現実世界の柵から魂を救済する、言わば現代人への福音ともいうべき存在。
しかしごく稀に、奏さんのように、ゲームが元となって命を落とす方もいらっしゃいます。そういった方々に、コンティニューといいますか、再スタートする機会を与えるのもわたしの役目なのです」
「それじゃあ、生き返れるの?」
「いえ、厳密に言えば生き返るわけではなく転生ですね。全く別の人物に生まれ変わるのです」
転生ときたか。
仕事が忙しくて最近は追えてないが、ラノベやアニメでは未だ根強い人気のあるジャンルだ。まさか自分にそんな機会が巡って来るとは。
「でも転生って、いったいどこの誰に?」
「わたしはゲームの女神ですので。わたしが転生先に指定できるのは、奏さんが亡くなる直前までプレイしていたゲームの登場人物に限られます」
「え? それって私が『王立学園の聖女』の登場人物に生まれ変わるってこと?」
「はい。ゲームに出てくるキャラでしたら、どなたにでも転生できますよ」
私は耳を疑った。私が死の直前までプレイしていたゲーム、『王立学園の聖女』は、中世ヨーロッパ風の世界を舞台にした乙女ゲームだ。
ゲームの性質上、登場人物はみな容姿端麗。誰もが一度はこうなってみたいと憧れるような、そんなきらびやかな存在ばかりだというのに。
私の胸の高鳴りを感じ取ったのだろう。セレーヌは満足げに頷くと、両腕を大きく広げて告げる。
「どうやら転生に依存はないようですね。それでは、あなたが転生を望む人物の名を教えて下さい。
数多のゲーム世界を司る女神、セレーヌの名において、あなたの新たな門出を祝福しましょう!」
生まれ変わるとしたら、いったいどんな人物になりたいか。その答えはとっくに出ている。
私はゴクリと唾を飲み込むと、微かに震える唇で、その人物の名を伝えた。
「……シエザ。私はシエザ・ローリントに生まれ変わりたい!」
私は明朗に望みを口にした。後は女神が聞き届け、私を新たな旅路に立たせるだけ。
そのはずなのだが。
セレーヌは両腕を広げたままの格好で、記憶を辿るように、僅かに首を傾げてみせる。
「……しえざ? ええっと、しえざ何さんでしたっけ?」
「先程お伝えした通り、わたしは女神ですので。そういった奇跡を扱えるんですよ。
奏さんの魂をこちらにお連れしたのも、このまま天界に至るか、それとも新たな人生を歩まれるかお聞きするためだったので」
「ほ、本当に? ちょっとそれ詳しく!」
勢い込んで訊ねる私に対し、セレーヌは満足げに続けた。
「実はわたし、ゲームを司る女神なんです。
ゲームは人々の心を異世界へと誘い、現実世界の柵から魂を救済する、言わば現代人への福音ともいうべき存在。
しかしごく稀に、奏さんのように、ゲームが元となって命を落とす方もいらっしゃいます。そういった方々に、コンティニューといいますか、再スタートする機会を与えるのもわたしの役目なのです」
「それじゃあ、生き返れるの?」
「いえ、厳密に言えば生き返るわけではなく転生ですね。全く別の人物に生まれ変わるのです」
転生ときたか。
仕事が忙しくて最近は追えてないが、ラノベやアニメでは未だ根強い人気のあるジャンルだ。まさか自分にそんな機会が巡って来るとは。
「でも転生って、いったいどこの誰に?」
「わたしはゲームの女神ですので。わたしが転生先に指定できるのは、奏さんが亡くなる直前までプレイしていたゲームの登場人物に限られます」
「え? それって私が『王立学園の聖女』の登場人物に生まれ変わるってこと?」
「はい。ゲームに出てくるキャラでしたら、どなたにでも転生できますよ」
私は耳を疑った。私が死の直前までプレイしていたゲーム、『王立学園の聖女』は、中世ヨーロッパ風の世界を舞台にした乙女ゲームだ。
ゲームの性質上、登場人物はみな容姿端麗。誰もが一度はこうなってみたいと憧れるような、そんなきらびやかな存在ばかりだというのに。
私の胸の高鳴りを感じ取ったのだろう。セレーヌは満足げに頷くと、両腕を大きく広げて告げる。
「どうやら転生に依存はないようですね。それでは、あなたが転生を望む人物の名を教えて下さい。
数多のゲーム世界を司る女神、セレーヌの名において、あなたの新たな門出を祝福しましょう!」
生まれ変わるとしたら、いったいどんな人物になりたいか。その答えはとっくに出ている。
私はゴクリと唾を飲み込むと、微かに震える唇で、その人物の名を伝えた。
「……シエザ。私はシエザ・ローリントに生まれ変わりたい!」
私は明朗に望みを口にした。後は女神が聞き届け、私を新たな旅路に立たせるだけ。
そのはずなのだが。
セレーヌは両腕を広げたままの格好で、記憶を辿るように、僅かに首を傾げてみせる。
「……しえざ? ええっと、しえざ何さんでしたっけ?」
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