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【五章】仙人と魔物
八話
しおりを挟むそう告げると、クワルクとリヴァロが目を輝かせて食い付いてきた。
俺に駆け寄って前のめりになった二人の顔がとても近い。
「ルーシャンの師匠に会えるのか!?」
「私の髪と同じ色の花があるんですよね!?」
俺の遺書代わりのメッセージに故郷の事を書いた二人はハイテンションで、ウルダとエダムだけは首を傾げていた。
そもそも別の大陸についての情報は滅多に入って来ないのだ。いくら知識人の四人であってもほとんど情報が無いだろう。
「ああ、俺が成人の時に仕立てた衣装が師匠の所にある。異国の文化であれば評価を下しにくいし、フルオーダーの正装であるのは間違いない。クワルクに教えた花がデザインされているから楽しみにするといい」
俺の言葉を聞き終わると四人は早々に転移の準備を始めた。さすがだ。指示する隙もなくことが進んでいく。
「別大陸の転移とか初めてなんだけど」
「距離と位置さえ、しっかりわかれば、いける、と思う」
「はい、世界地図です」
「ダーリアン……あっ、これだ! ちっさいなぁ。別大陸の離島なのか……」
「ここまでの遠距離だと、ちゃんと、魔法陣書いた方が良さそう」
「だね。間違えて海に落ちたら最悪だし」
ウルダとエダムが庭へ出て、塔を壊した時に出た魔力を含んだ瓦礫の粉末で魔方陣を書き始めた。俺は手の空いたクワルクとリヴァロに一つお願いする。
「師匠は酒が好きだ。すまないが村へ行って一番質の良い酒をできるだけ買ってきてくれ」
「もしかして、村の特産に酒を選んだのってそういう理由だったりするのですか?」
鋭い。クワルクの言う通り、村の収入源を決める時に酒を選んだ理由の一つに、こうして詫びの品をすぐに用意できるという打算があった。俺はおずおずと話し出す。
「うむ……お前達の事を思い出して、ろくに説明もせずに師匠のもとを飛び出してきてしまったから……。一回飛び出してしまうと遠距離で簡単に戻れないし、俺の魔力と技術じゃ別の大陸まで連絡できる手段も無くて、ずっと音信不通になってしまっている。普段朗らかな人だからこそ、師匠が今、俺に対してどんな感情を持っているのかが想像できないのが一番怖くて……酒で誤魔化したいのが正直な所だ」
師匠に対しては俺が王様だからという理由が全く通じない。ルービンという存在が全く関係無い相手に説明する未知がとても怖いのだ。
帰って来た弟子がいきなり四人も男を連れて、元王様で、今も王様になりました~なんて言い出したら普通は頭がおかしくなったと思うだろう。
それはクワルクもリヴァロも理解できたらしく、複雑な表情をしていた。
「……お、俺達も一緒に謝るから……」
「うん……ありがとう……」
二人は早急に村へ行き、話を聞いた村人が瓶から樽から多種多様な酒を庭にまで運んで来てくれた。直接村人の説明を聞きながら自ら選ぶ事ができて本当にありがたかった。
昼頃には全ての準備が整い、村人に見送られながら五人でダーリアンへ向かう事ができた。
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