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2章

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「ダメったらダメだ」

「やーの!」

 膝の上に座ろうとするアルゼを抱き上げもう1つの椅子へと座らせる。

「ちゃんとここに座って食べなさい」

 抱き着いて離れようとしないアルゼの指を解き離しなんとか座らせる。

「もう子供じゃないんだ、一人で座って食べなさい」

 プゥと膨れた頬が木の実を詰め込みすぎたルセのようで可愛いが、膝の上に座られるのは困る。
 匙を握らせヌリの入った器を目の前に置く。

「おぇ、いじわる、めーよ」

 見上げてくる瞳がキラキラと輝きその美しさに今日も今日とてみとれてしまう。
 意地悪せず今までのように膝に座らせてくれと訴えるのを聞き流し、向かいに座り俺も食事を始める。

「意地悪じゃない、ちゃんと一人で座って行儀よく食べるのが大人だ」

 居心地が悪いのか椅子の上でお尻をモジモジと揺らし不満顔で匙でヌリを掻き込んでいる

「器に口をつけずに匙ですくって食べなさい。」

 我ながら口うるさいと思いつつ、後ろめたさからか言葉が止まらない。


 そう、俺は後ろめたいのだ--------


 人化したアルゼに欲情してしまったあの日から出来るだけ接触は避けてきた。
 そうとは知らないアルゼにとっては俺が急に冷たくなったように感じるのだろう。
 無邪気に膝の上に登ってくる柔らかい体。
 膝の上に感じるお尻の温かさで俺の分身が一気に固くなる。

 駄目なのに--------

 幼体の頃から良い香りがしていたアルゼ。
 人化かしてからも変わらず、良い匂いが更に増した。

 牡なのに--------

 俺のことを信頼し体を預けてくるのに、欲情してしまうことへの後ろめたさ。

 寝床も部屋も別にして治まったと思っていたのに--------






 不機嫌なまま朝ごはんを終えたアルゼが、外で待っている小動物たちへクズ野菜をやる。


 鳥はセゼモのような小さいのから獰猛な肉食鳥のチキまで様々で、最初チキが飛んできたときはまだ幼体だったアルゼを攫おうとしているのかとあせったものだった。
 小動物のルセが今日もクズ野菜のお返しにか木の実を頬袋に沢山詰めてやってきて、人化したアルゼの膝に木の実を貢いでいる。

「いっぱい、ありがちょ、ね」

 ニッコリ笑った瞳とルセの瞳がそっくりだ。
 動物と触れ合って機嫌が治ったようでホッとする。


「お前はルセに似てるな」

 3ムタレ程離れた木の根元に座る俺のところに寄ってくる動物はいない。
 そもそもアルゼが来る前は10ムタレも近づけばどんな生物も慌てて逃げていて捕まえるのに苦労していたものだ。

「るせ、いっちょ?」

 相変わらず俺の大きなシャツの袖を切っただけのものを着ているから、大きく開いた袖口や襟元からルセだけでなくママンギやチョシも潜り込んでいる。

「かあいい、るせ。いっちょ、うれし」

 白い小さな手が膝の上のルセの頭を撫でる。

 --------アルゼはルセ獣人かもしれない--------

 実際この世にルセ獣人なるものがいるかは知らない。
 我らリウアン獣人の祖先と言われるリウアンはすべての生き物の王とも称される獣で、今も存在している。
 村のリウアン族で獣化できる者が数人いるが、その姿はまさにリウアンそのものだった。




 まとわりつくルセやセゼモと遊ぶのに夢中なアルゼを残し、俺は一人山の奥へと進む。

 後ろを見てアルゼがついてきていないのを確認し、岩場へと手をかけ上へ上へと登っていく。
 10ムタレも登ると岩場に張り出した場所に出る。
 見晴らしのいいこの場所も俺の秘密の場所だ。

 ここからは遠く村の方向が見えて、夜になるとかすかに明かりが見える。
 たった一人の孤独な世界でその光だけが誰かの気配を感じれるものだった。
 アルゼが来てからというものこの場所に来ることはなかったのだが。

 スゥと一呼吸し、下を見下ろす。
 アルゼはついてきてはいない。
 ついてきたとしても人化したアルゼにこの崖を登るのは無理だ。

 崖の奥へと行き、少しくぼんだ壁にもたれて座り、おもむろに下衣の中に手を突っ込んだ。
 芯がなかったそれがあっと言う間に頭をもたげだす。
 ハァと息が乱れ鼓動が早まる。

 想像するのは俺を受け入れてくれる優しい雌。

 なのに--------

 見たこともない雌の顔がアルゼに重なり、膝の上に座らせた時のお尻の柔らかさや馨しい香りが蘇ってくる。


(…やめろ)

 頭ではそう思うのに手は止まらない。
 ブカブカの俺のシャツを捲り、ピンク色の秘所を見る想像をするだけであっけなく達してしまう。


 後に残るのはとてつもない後悔。



「……おぇー」


 遠くで俺を探すアルゼの声が響く。
 早く戻ってやらないとと思うのに、重く沈んだ心のせいでしばらく岩場で座ったまま動けなかった。


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