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第五章
新章10:立ちはだかる壁
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女王との話が終わると、私たちは騎士に連れられるままに扉へと歩いていく。
パトリシアに見送られながら外へ出ると、太陽は真上へに差し掛かり、廊下を明るく照らしていた。
眩しさに手をかざし、窓から見える穏やかな風景を眺めながらに深いため息をついていると、カミールはニヤリを口角を上げ近づいてくる。
「あいつがエヴァンか。怒りっぽいんだな」
「あなたが悪乗りするからでしょ」
楽しそうなカミールをキッと睨みつけると、彼は肩を揺らして笑い始めた。
「はははっ、嘘は言ってないだろう」
「そうだけど……あれには理由があったじゃない!それに私自身何も覚えてないわ。はぁ……」
でも魔力切れを起こした自分のせいだわ。
北の国で過ごしていた時も同じような事があった。
はぁ……本当情けない。
己の不甲斐なさに頭を抱えていると、シナンが私とカミールの間へ割り込んでくる。
「お姉さん、さっきはごめんなさい。言っちゃいけなかったかな」
シナンはシュンッと悲しそうな瞳を浮かべると、私の手を握りしめた。
「えっ、いえ、いいのよシナン。でもさっきの話、本当に私についてくるの?シナンは東の国で生まれ育ったのでしょ。まぁ……良い記憶はないかもしれないけれど、故郷を離れるのは悲しいものよ」
そう諭すようにシナンへ言い聞かせてみると、グレーの瞳が静かに揺れた。
「ううん、僕はお姉さんと離れ離れになることが一番苦しいよ。だから僕も一緒に行く」
シナンは懇願するようにギュッと握っていた手を包みこむと、真っすぐに私へと視線を向ける。
「わかったわ。でも壁を越えられるようになったら、もう一度訊ねるわ」
握られた手からシナンの熱を感じる中、彼はコクリと頷くと、嬉しそうに笑みを浮かべた。
「ところでエヴァンさんって人は、お姉さんの何なのですか?」
「へぇっ!?」
突拍子もない質問に変な声が出ると、見上げるようにシナンへ視線を向ける。
「あー、そうねぇ。彼は北の国でとてもお世話になった人なの。魔法を教えてくれたのも彼。私にとってとても大切な人よ」
そういえばセドリックと話をした時、シナンはいなかったわね。
「……大切な人……」
シナンは呟くように私の言葉を繰り返すと、思い悩む様子で窓の外へと視線を向けた。
そうしてエヴァンの事を考えながらに城で生活していると、あっという間に壁へ向かう当日になっていた。
早朝に騎士たちの迎えに応えると、城の外へと案内される。
来るときにも見た美しい広場へやってくると、そこにはカミールとシナンがすでに待っていた。
「あなたたちも行くの?」
そう問いかけてみると、シナンはもちろんですと言わんばかりに固く手を繋ぐ。
カミールは気だるげな表情を見せると、何も答えなかった。
暫くすると、パトリシアがウキウキと楽しそうな様子でこちらへと向かってくる。
手には無線機が握りしめられ、隣には護衛なのだろうか、腰に剣を刺したワリッドの姿があった。
「おはようございます、皆さん~!お揃いの様ですし、出発しましょうか~」
彼女は開口一番にそう話すと、そのまま門の方へと歩き始めた。
あら意外ね、歩いていくのかしら……。
そんな事を考えながらに進んでいくと、街を抜け次第に深い森が目の前に広がっていく。
「壁はこの森の向こうです~、皆さんはぐれないように注意してくださいね~」
これは歩きじゃないと厳しそうねぇ。
ふふっ、でもこれってなんだか遠足みたい。
私は一人小さく笑うと、パトリシアの背を追いかけていった。
草木をかき分け、けもの道を進んでいく中、太陽が真上に差し掛かる。
木々の隙間から差し込む光に顔を上げると、眩しさに目が眩んだ。
その刹那ピカッと強い光が差し込むと、反射的に瞳を閉じる。
光がおさまった事にそっと瞼を持ち上げると、先ほど前を歩いていたはずの皆の姿が消えていた。
「あれ、みんなは……?」
辺りをグルリと見渡してみるが、そこには誰の姿もない。
さっきまで目の前にいたはずなのに……どうして?
はぐれる、はぐれないって距離じゃなかったわ。
という事はもしかして……。
私はミサンガへ視線を向けると、どうして気が付かなったのだろうか……微かに魔力を感じた。
警戒するよう自身に魔力を集めると、身構える。
意識を集中させ辺りを注意深く眺める中、鳥のさえずる鳴き声が耳にとどいた。
どこ、どこにいるの?
「やぁ、さっそく迎えに来たよ」
どこからともなく声が響くと、私は慌てて後ろを振り返った。
しかしそこにも姿はなく、深い森が続いているだけだ。
どこにいるの!?
私は探すように視線を動かした刹那、トンッと肩に手が置かれた。
触れた手から魔力を感じると、私は慌てて飛び退きながらに、風を纏い触れた手を吹き飛ばす。
「わぁお、過激なお出迎えだね」
先ほどよりも大きな声に、私は恐る恐るに振り返ると、ノエルが優し気な笑みを浮かべながらに佇んでいた。
パトリシアに見送られながら外へ出ると、太陽は真上へに差し掛かり、廊下を明るく照らしていた。
眩しさに手をかざし、窓から見える穏やかな風景を眺めながらに深いため息をついていると、カミールはニヤリを口角を上げ近づいてくる。
「あいつがエヴァンか。怒りっぽいんだな」
「あなたが悪乗りするからでしょ」
楽しそうなカミールをキッと睨みつけると、彼は肩を揺らして笑い始めた。
「はははっ、嘘は言ってないだろう」
「そうだけど……あれには理由があったじゃない!それに私自身何も覚えてないわ。はぁ……」
でも魔力切れを起こした自分のせいだわ。
北の国で過ごしていた時も同じような事があった。
はぁ……本当情けない。
己の不甲斐なさに頭を抱えていると、シナンが私とカミールの間へ割り込んでくる。
「お姉さん、さっきはごめんなさい。言っちゃいけなかったかな」
シナンはシュンッと悲しそうな瞳を浮かべると、私の手を握りしめた。
「えっ、いえ、いいのよシナン。でもさっきの話、本当に私についてくるの?シナンは東の国で生まれ育ったのでしょ。まぁ……良い記憶はないかもしれないけれど、故郷を離れるのは悲しいものよ」
そう諭すようにシナンへ言い聞かせてみると、グレーの瞳が静かに揺れた。
「ううん、僕はお姉さんと離れ離れになることが一番苦しいよ。だから僕も一緒に行く」
シナンは懇願するようにギュッと握っていた手を包みこむと、真っすぐに私へと視線を向ける。
「わかったわ。でも壁を越えられるようになったら、もう一度訊ねるわ」
握られた手からシナンの熱を感じる中、彼はコクリと頷くと、嬉しそうに笑みを浮かべた。
「ところでエヴァンさんって人は、お姉さんの何なのですか?」
「へぇっ!?」
突拍子もない質問に変な声が出ると、見上げるようにシナンへ視線を向ける。
「あー、そうねぇ。彼は北の国でとてもお世話になった人なの。魔法を教えてくれたのも彼。私にとってとても大切な人よ」
そういえばセドリックと話をした時、シナンはいなかったわね。
「……大切な人……」
シナンは呟くように私の言葉を繰り返すと、思い悩む様子で窓の外へと視線を向けた。
そうしてエヴァンの事を考えながらに城で生活していると、あっという間に壁へ向かう当日になっていた。
早朝に騎士たちの迎えに応えると、城の外へと案内される。
来るときにも見た美しい広場へやってくると、そこにはカミールとシナンがすでに待っていた。
「あなたたちも行くの?」
そう問いかけてみると、シナンはもちろんですと言わんばかりに固く手を繋ぐ。
カミールは気だるげな表情を見せると、何も答えなかった。
暫くすると、パトリシアがウキウキと楽しそうな様子でこちらへと向かってくる。
手には無線機が握りしめられ、隣には護衛なのだろうか、腰に剣を刺したワリッドの姿があった。
「おはようございます、皆さん~!お揃いの様ですし、出発しましょうか~」
彼女は開口一番にそう話すと、そのまま門の方へと歩き始めた。
あら意外ね、歩いていくのかしら……。
そんな事を考えながらに進んでいくと、街を抜け次第に深い森が目の前に広がっていく。
「壁はこの森の向こうです~、皆さんはぐれないように注意してくださいね~」
これは歩きじゃないと厳しそうねぇ。
ふふっ、でもこれってなんだか遠足みたい。
私は一人小さく笑うと、パトリシアの背を追いかけていった。
草木をかき分け、けもの道を進んでいく中、太陽が真上に差し掛かる。
木々の隙間から差し込む光に顔を上げると、眩しさに目が眩んだ。
その刹那ピカッと強い光が差し込むと、反射的に瞳を閉じる。
光がおさまった事にそっと瞼を持ち上げると、先ほど前を歩いていたはずの皆の姿が消えていた。
「あれ、みんなは……?」
辺りをグルリと見渡してみるが、そこには誰の姿もない。
さっきまで目の前にいたはずなのに……どうして?
はぐれる、はぐれないって距離じゃなかったわ。
という事はもしかして……。
私はミサンガへ視線を向けると、どうして気が付かなったのだろうか……微かに魔力を感じた。
警戒するよう自身に魔力を集めると、身構える。
意識を集中させ辺りを注意深く眺める中、鳥のさえずる鳴き声が耳にとどいた。
どこ、どこにいるの?
「やぁ、さっそく迎えに来たよ」
どこからともなく声が響くと、私は慌てて後ろを振り返った。
しかしそこにも姿はなく、深い森が続いているだけだ。
どこにいるの!?
私は探すように視線を動かした刹那、トンッと肩に手が置かれた。
触れた手から魔力を感じると、私は慌てて飛び退きながらに、風を纏い触れた手を吹き飛ばす。
「わぁお、過激なお出迎えだね」
先ほどよりも大きな声に、私は恐る恐るに振り返ると、ノエルが優し気な笑みを浮かべながらに佇んでいた。
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