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第四章
序章
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あなたが……あなたが消えてしまう。
どうして、あなたはいつも勝手な事ばかりするんだ。
どうして、どうして、どうして……。
こうなってしまったんだ。
いつものように私の傍で笑って下さい。
これは全て嘘だと、言って下さい。
私だけのものにならなくても構わないのです。
ただあなたが傍に居れば、それでいい。
それ以上の事は望みません。
だから存在しないだなんて、言わないで下さい……。
だからどうか……戻ってきて下さい。
あなたが笑顔になるのなら、私は何でも致します。
辛いことがあれば、私があなたを慰める。
危険な事があれば、私があなたを必ず守る。
だからお願いです、消えないで下さい……。
そう必死に手を伸ばすも、彼女の姿はもうどこにも見えない。
先ほどまで彼女の温もりを、声を……誰よりも近くで感じていたはずなのに……。
どこを探しても彼女はいないのだ。
嫌だ……、嫌だ。
いやだ、いやだあああああああああ。
こんな事が許されるはずがない……。
こんな結末で、世界が変わっても何の意味もない。
あなたと出会った事実がなくなる世界なんて、私には必要ないのです!!!
あの時、一緒に帰ると……約束したではないですか。
なのにどうして今、あなたはここにいないのです……。
元の世界へ帰ったら、私はあなたに……言いたかった。
ようやく気が付いたこの気持ちを……。
始めて抱いたこの感情を……。
私はまだ……あなたに何も伝えていない。
何も始まっていない!!!
そう思いっ切りに叫ぶと、彼女の姿が幻のように目の前に映し出されていく。
最初に出会った頃と同じ……黒い髪に、漆黒の瞳。
その幻に私は必死に手を伸ばしてみるも……彼女に届くことはなかった。
最初に出会ったあなたは、この世界に怯え、そして全てを否定していた。
それでも立ち上がりながら……必死に抗うあなたの強い眼差し。
次に見たあなたは目を腫らし、部屋で一人で泣いていた。
そんなあなたに本当の事を伝えると、初めて私に笑顔を見せてくれた。
あなたは師匠はもうこの世界にいない、そうわかっても……。
師匠をずっと思い続けるその心に、惹かれた。
どんなに地位やお金を与えても、靡くこともなく、変わらないその心に。
私は自分の気持ちに気が付いていなくても……。
真っ黒な髪と、漆黒の瞳をいつも目で追っていた。
そうして過去へ追いかけて出会ったあなたは、囚われていた。
あの時……あなたの姿を見て、私は初めて人を殺そうと思いました。
それからあなたと一緒に過ごして、たくさんのあなたを知って……私はやっと自分の気持ちに気が付いたのです……。
もし……もっと早くに気が付いれば、何かが変わったのでしょうか…。
あぁ、どうして私は……。
無理矢理にでもこの事を聞かなかったのだろう。
聞いて居れば……過去になんていかせるはずがなかった。
別の方法を見つけようと、そうあなたを説得できたかもしれない。
後悔の波が押し寄せるが、過ぎ去ってしまった時間は元に戻すことは出来ない。
私には時空移転魔法を使う事は出来ない。
どんなに悔やんでも、彼女はもういないのです……。
頬に涙が伝い、視界が歪んでいく中、私は強く強く拳を握りしめた。
そうして絶望する中、私の体はどこかへと引き戻されていく。
暗闇の世界を必死に見渡してみても、やはり彼女の姿はどこにもない。
私は只々彼女の魔力に包まれる中、強い風がどこからか吹き上げる。
あなたは……私を元の世界へ帰らそうと魔法を使いましたが……私は戻りません。
私はあなたを探し出します、どんな手段を使っても必ず……。
それで今度は絶対に一緒に帰るのです。
私は……彼女がいる世界が欲しい。
たとえそれが……間違っているのだとしても。
私は必死に吹き荒れる風に抗って見せるが……それを許さないと言わんばかりに風速が強くなっていく。
それでも必死に脚に力を入れてみるが……ちっぽけな人間ごときが、自然の力に逆らう事が出来るはずもない。
耐えていた体が思いっ切りに吹き飛ばされると、真っ白な世界が口を開いた。
そのまま抵抗も虚しくその異界の口へ吸い込まれていくと……次第に彼女の姿が、彼女の記憶が……消え去っていった。
*******お知らせ*******
次話よりエヴァン視点の話が続きます。
どうして、あなたはいつも勝手な事ばかりするんだ。
どうして、どうして、どうして……。
こうなってしまったんだ。
いつものように私の傍で笑って下さい。
これは全て嘘だと、言って下さい。
私だけのものにならなくても構わないのです。
ただあなたが傍に居れば、それでいい。
それ以上の事は望みません。
だから存在しないだなんて、言わないで下さい……。
だからどうか……戻ってきて下さい。
あなたが笑顔になるのなら、私は何でも致します。
辛いことがあれば、私があなたを慰める。
危険な事があれば、私があなたを必ず守る。
だからお願いです、消えないで下さい……。
そう必死に手を伸ばすも、彼女の姿はもうどこにも見えない。
先ほどまで彼女の温もりを、声を……誰よりも近くで感じていたはずなのに……。
どこを探しても彼女はいないのだ。
嫌だ……、嫌だ。
いやだ、いやだあああああああああ。
こんな事が許されるはずがない……。
こんな結末で、世界が変わっても何の意味もない。
あなたと出会った事実がなくなる世界なんて、私には必要ないのです!!!
あの時、一緒に帰ると……約束したではないですか。
なのにどうして今、あなたはここにいないのです……。
元の世界へ帰ったら、私はあなたに……言いたかった。
ようやく気が付いたこの気持ちを……。
始めて抱いたこの感情を……。
私はまだ……あなたに何も伝えていない。
何も始まっていない!!!
そう思いっ切りに叫ぶと、彼女の姿が幻のように目の前に映し出されていく。
最初に出会った頃と同じ……黒い髪に、漆黒の瞳。
その幻に私は必死に手を伸ばしてみるも……彼女に届くことはなかった。
最初に出会ったあなたは、この世界に怯え、そして全てを否定していた。
それでも立ち上がりながら……必死に抗うあなたの強い眼差し。
次に見たあなたは目を腫らし、部屋で一人で泣いていた。
そんなあなたに本当の事を伝えると、初めて私に笑顔を見せてくれた。
あなたは師匠はもうこの世界にいない、そうわかっても……。
師匠をずっと思い続けるその心に、惹かれた。
どんなに地位やお金を与えても、靡くこともなく、変わらないその心に。
私は自分の気持ちに気が付いていなくても……。
真っ黒な髪と、漆黒の瞳をいつも目で追っていた。
そうして過去へ追いかけて出会ったあなたは、囚われていた。
あの時……あなたの姿を見て、私は初めて人を殺そうと思いました。
それからあなたと一緒に過ごして、たくさんのあなたを知って……私はやっと自分の気持ちに気が付いたのです……。
もし……もっと早くに気が付いれば、何かが変わったのでしょうか…。
あぁ、どうして私は……。
無理矢理にでもこの事を聞かなかったのだろう。
聞いて居れば……過去になんていかせるはずがなかった。
別の方法を見つけようと、そうあなたを説得できたかもしれない。
後悔の波が押し寄せるが、過ぎ去ってしまった時間は元に戻すことは出来ない。
私には時空移転魔法を使う事は出来ない。
どんなに悔やんでも、彼女はもういないのです……。
頬に涙が伝い、視界が歪んでいく中、私は強く強く拳を握りしめた。
そうして絶望する中、私の体はどこかへと引き戻されていく。
暗闇の世界を必死に見渡してみても、やはり彼女の姿はどこにもない。
私は只々彼女の魔力に包まれる中、強い風がどこからか吹き上げる。
あなたは……私を元の世界へ帰らそうと魔法を使いましたが……私は戻りません。
私はあなたを探し出します、どんな手段を使っても必ず……。
それで今度は絶対に一緒に帰るのです。
私は……彼女がいる世界が欲しい。
たとえそれが……間違っているのだとしても。
私は必死に吹き荒れる風に抗って見せるが……それを許さないと言わんばかりに風速が強くなっていく。
それでも必死に脚に力を入れてみるが……ちっぽけな人間ごときが、自然の力に逆らう事が出来るはずもない。
耐えていた体が思いっ切りに吹き飛ばされると、真っ白な世界が口を開いた。
そのまま抵抗も虚しくその異界の口へ吸い込まれていくと……次第に彼女の姿が、彼女の記憶が……消え去っていった。
*******お知らせ*******
次話よりエヴァン視点の話が続きます。
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