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第一章 運命の出会い
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『発情期』の時、オメガは強烈なフェロモンを発し、そのフェロモンはアルファに対し強烈な作用をもたらす。一部例外もあり、ベータにすら作用してしまう程、強烈なフェロモンを発してしまうオメガもいる
この『発情期』がくる時期は、かなり個人差があり、そのためオメガと診断された者は、定期検査といつ発情期が来ても良いように『抑制剤』を常に持っておくように言われている
自称、容姿平凡、中身平凡である玲の第二の性は『オメガ』だった。現在25歳になる玲も、常に抑制剤と定期検査は受けている。しかし玲には『発情期』が来たことが無かった
遅くても、殆どのオメガの発情期は、20歳までには来るとされているのだが、玲にはその予兆らしきものすらない
オメガと診断された時、玲が悲観する事は無く、心は喜びで一杯だった。自分にも『運命の番』が居ると言う事実に、心から嬉しかったのだ
特別な誰かが自分にはいる。自分も誰かの特別になれるかもしれない。アルファやオメガであっても、出会える確率は低いとはいえ、平凡な事がコンプレックスな玲にとって、救いにも似た、大きな事だった
運命の番に出会う事。それは日が経つにつれ、玲の『夢』へと変わっていった。発情期が来ていない今でも、その夢は変わる事は無い
『番』はアルファとオメガとの間にしかなく、ベータには『番』は存在しない。そしてアルファやオメガだからと言って、全員が番と出会える訳ではないのも事実。だけど、玲にはそんな事は関係なかった
『夢』は変わらない。だけど、一日がどんどん過ぎて行って、玲は『番』と出会う事を、半ば諦めていた。25歳にもなって、発情期すら来ていない自分は、不良品だと思っていたからだ
互いに番だと分かるのは、お互いが放つ匂いが分かるか、分からないか、らしい。相手が自分の番ならば、放つ匂いに強く引きよせられる
玲は匂い以前の問題を抱えているし、そもそも玲の運命はいないのかもしれない。その考えが、時折脳裏をかすめていく
だけど、「運命の番」の存在は、玲にとって心の支えになっている事も、また事実だった
矛盾だらけの自分の心に、苦笑いしながら歩いていると
―――グウゥ
「は、腹減った…」
割と大きな音を鳴らした空腹を知らせる音に、自宅に帰ってから作るのは面倒だと思った玲は、晩御飯を買うために、少し道をずれ繁華街へと足を運んだ
沢山の飲食店や、店が並ぶ繁華街。玲は、取り敢えず何でもいいからと、そのまま近くにあった店へと入る
(今夜は何にするかなー……おっ、焼きそばあるじゃん)
好物の焼きそばを手に取り、ついでにプリンも買ってレジへと向かった
「450円になります」
レジに立っていたのは、小柄の可愛い女性だった。女性らしい体つきに、幼い顔つきながらも、幼さを感じさせない雰囲気を放っている
(この子すごく可愛い!)
少し頬を染め元気よくお金を差出し、玲は女性をジッと見つめた。その視線に気づいた女性が、ニッコリと笑う。突然の事に、ドキッと心臓を跳ねさせ、期待してしまう玲に、
「……見てんじゃねーよ、平凡」
「はひっ」
笑顔のまま、無慈悲な言葉を吐く女性に、人は見かけでは判断できないと実感した玲だった
(女って…女って、怖い!)
――――――繁華街路地裏
人けの無い路地裏に、地面に座り込み、土下座をしている男を取り囲むように、スーツに身を包んだ男たちが、立っていた
(はぁ…面倒ですね)
「金はっ、金は必ず返しますから!」
高そうなスーツに身を包んだインテリ美形の男、田中幹弥は、冷めた目で自身の足元を見ていた
『海藤組』と聞けば、堅気の者でも知らない者はいないと言っても良い程、有名である。所望ヤクザではあるが、複数の事業を展開しており、そのどれもが『大企業』と言われるものだった。もちろんヤクザらしく金融関係も多い
懇願するこの男は借りるだけ借りて、夜逃げしようとしていると、部下から報告があり現在に至っているのだが。偽名を使い、既に数社からお金を借りている事が分かっている。つまり、どう頑張っても返済は不可能だという事だ
「では、今すぐ返していただきましょうか」
「い、今は…無理だ…」
それはそうだろう。男が手を出しているのは、海藤組よりたちの悪い闇金だ
「では、」
「ま、待ってくれ!金は必ず返すから!」
「……」
(この上なく面倒ですね。早々に終わらせて帰りたいのですが…そうもいかないでしょう)
幹弥は、離れた所に座っている人物へと視線を送る
(……はぁ、まぁ分かってはいましたが…)
「―――期限は期限です」
「そっそんな!今は金が…!」
「あるでしょう?」
「…え」
幹弥は男の言葉を遮り言った
「あなたの体が。まぁ、回収できる金額はしれた所ですが。これ以上、あなたに猶予を与えたとしても、回収出来る可能性は極めて低い」
「そっそんな!」
(…これ以上は面倒ですね。説明はして差し上げた事ですし)
おもむろに、懐に手を入れ鉄の塊を取り出す
――――プシュッ
その音は賑やかな繁華街に、溶け込むよう消えていく。地面には、先ほどまで懇願していた男が横たわっていた
「回収しなさい」
拳銃を懐にしまい、幹弥は傍に控えていた部下に指示をだした。男たちが動いた事を確認した後、ゆっくりと座っている男の方へ向かった
この『発情期』がくる時期は、かなり個人差があり、そのためオメガと診断された者は、定期検査といつ発情期が来ても良いように『抑制剤』を常に持っておくように言われている
自称、容姿平凡、中身平凡である玲の第二の性は『オメガ』だった。現在25歳になる玲も、常に抑制剤と定期検査は受けている。しかし玲には『発情期』が来たことが無かった
遅くても、殆どのオメガの発情期は、20歳までには来るとされているのだが、玲にはその予兆らしきものすらない
オメガと診断された時、玲が悲観する事は無く、心は喜びで一杯だった。自分にも『運命の番』が居ると言う事実に、心から嬉しかったのだ
特別な誰かが自分にはいる。自分も誰かの特別になれるかもしれない。アルファやオメガであっても、出会える確率は低いとはいえ、平凡な事がコンプレックスな玲にとって、救いにも似た、大きな事だった
運命の番に出会う事。それは日が経つにつれ、玲の『夢』へと変わっていった。発情期が来ていない今でも、その夢は変わる事は無い
『番』はアルファとオメガとの間にしかなく、ベータには『番』は存在しない。そしてアルファやオメガだからと言って、全員が番と出会える訳ではないのも事実。だけど、玲にはそんな事は関係なかった
『夢』は変わらない。だけど、一日がどんどん過ぎて行って、玲は『番』と出会う事を、半ば諦めていた。25歳にもなって、発情期すら来ていない自分は、不良品だと思っていたからだ
互いに番だと分かるのは、お互いが放つ匂いが分かるか、分からないか、らしい。相手が自分の番ならば、放つ匂いに強く引きよせられる
玲は匂い以前の問題を抱えているし、そもそも玲の運命はいないのかもしれない。その考えが、時折脳裏をかすめていく
だけど、「運命の番」の存在は、玲にとって心の支えになっている事も、また事実だった
矛盾だらけの自分の心に、苦笑いしながら歩いていると
―――グウゥ
「は、腹減った…」
割と大きな音を鳴らした空腹を知らせる音に、自宅に帰ってから作るのは面倒だと思った玲は、晩御飯を買うために、少し道をずれ繁華街へと足を運んだ
沢山の飲食店や、店が並ぶ繁華街。玲は、取り敢えず何でもいいからと、そのまま近くにあった店へと入る
(今夜は何にするかなー……おっ、焼きそばあるじゃん)
好物の焼きそばを手に取り、ついでにプリンも買ってレジへと向かった
「450円になります」
レジに立っていたのは、小柄の可愛い女性だった。女性らしい体つきに、幼い顔つきながらも、幼さを感じさせない雰囲気を放っている
(この子すごく可愛い!)
少し頬を染め元気よくお金を差出し、玲は女性をジッと見つめた。その視線に気づいた女性が、ニッコリと笑う。突然の事に、ドキッと心臓を跳ねさせ、期待してしまう玲に、
「……見てんじゃねーよ、平凡」
「はひっ」
笑顔のまま、無慈悲な言葉を吐く女性に、人は見かけでは判断できないと実感した玲だった
(女って…女って、怖い!)
――――――繁華街路地裏
人けの無い路地裏に、地面に座り込み、土下座をしている男を取り囲むように、スーツに身を包んだ男たちが、立っていた
(はぁ…面倒ですね)
「金はっ、金は必ず返しますから!」
高そうなスーツに身を包んだインテリ美形の男、田中幹弥は、冷めた目で自身の足元を見ていた
『海藤組』と聞けば、堅気の者でも知らない者はいないと言っても良い程、有名である。所望ヤクザではあるが、複数の事業を展開しており、そのどれもが『大企業』と言われるものだった。もちろんヤクザらしく金融関係も多い
懇願するこの男は借りるだけ借りて、夜逃げしようとしていると、部下から報告があり現在に至っているのだが。偽名を使い、既に数社からお金を借りている事が分かっている。つまり、どう頑張っても返済は不可能だという事だ
「では、今すぐ返していただきましょうか」
「い、今は…無理だ…」
それはそうだろう。男が手を出しているのは、海藤組よりたちの悪い闇金だ
「では、」
「ま、待ってくれ!金は必ず返すから!」
「……」
(この上なく面倒ですね。早々に終わらせて帰りたいのですが…そうもいかないでしょう)
幹弥は、離れた所に座っている人物へと視線を送る
(……はぁ、まぁ分かってはいましたが…)
「―――期限は期限です」
「そっそんな!今は金が…!」
「あるでしょう?」
「…え」
幹弥は男の言葉を遮り言った
「あなたの体が。まぁ、回収できる金額はしれた所ですが。これ以上、あなたに猶予を与えたとしても、回収出来る可能性は極めて低い」
「そっそんな!」
(…これ以上は面倒ですね。説明はして差し上げた事ですし)
おもむろに、懐に手を入れ鉄の塊を取り出す
――――プシュッ
その音は賑やかな繁華街に、溶け込むよう消えていく。地面には、先ほどまで懇願していた男が横たわっていた
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