オメガバース~運命が導く愛~

マツユキ

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第一章 運命の出会い

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―――ウィーン

「いらっしゃいませー…」

店のドアが開き、来店を知らせる音が店内に響く。少し遅れて小島玲こじまれいの、やる気のない声が妙に大きく聞こえた

「お前なぁ……もうちょっとやる気を出せ!やる気を!」

「えぇー…」

あからさまに『面倒だ』と顔に書いている。大きなため息をついた後、仕方ないなぁと言い咳払いをした玲に、親友兼幼馴染の山田達也やまだたつやは玲を見た

「いらっしゃいませぇ~!」

玲のやる気の表現法なのか何なのか、両手を胸の前で組み、微妙な笑顔付きで体をクネクネとさせている

「ブフォッ」

思わずと言った様に吹き出してしまった達矢は、今だクネクネしている玲の頭をはたいた

「いってぇ!」

叩かれた頭をさすりながら、抗議の目を達矢に向ける

「やる気の意味がちげぇよ!」

怒ってはいるものの、その口元は今だにヒクヒクとしていた

「達矢がやれって言ったからやったのにさぁ…」

口を尖らせ拗ねた様に言う玲。元々ないやる気を、精一杯出したにも関わらず、何故怒られなければならないのかと、視線だけで伝えて来る

「やる気の意味がちげぇよ!いらっしゃいませ~…じゃなくていらっしゃいませ!だろうが馬鹿たれ!」

玲の真似をしながら訂正をし、先程よりも強めに頭を叩く

「ってぇ!叩くなよ!セットが台無しじゃねーか!」

「セットって…何処をどうセットしてんだよ…」

至って普通な髪形を、せっせと直す玲に、達矢の憐みのこもった視線が刺さる

「な、なんだその目は!いくら俺でも傷つくんだからな!」

玲は涙目になりつつ抗議した。そんな言い合いをしていた時、前方から小さな声が聞こえた

「あのぉ……」

「「へ?」」

突然近くで聞こえた、弱々しい声に2人そろって、声の方へと視線を向ける

「お会計…いいでしょうか…」

どこか申し訳なさそうに立つ、気の弱そうな男性が買い物かごを見せていた




―――ピッピッ

「お会計、1250円になります」

「これで…お願いします」

おどおどとしながら、二千円を出す男性に、おつりを渡す玲

「「ありがとうございましたー」」

男性の会計が終わり、店内を出て行く姿を見送ったあと、二人は目を見合わせた

「真面目に、仕事しようか…」

「そうだな…」

これが二人にとっての日常。変わらない毎日。そんな日常が無くなるなんて、夢にも思わなかった。だが、運命はすぐ側に、確実に迫っていた



――――――――――

仕事が終わり、着替えを済ませた2人は店を出る。暫く同じ方向に進んでいた2人は、分かれ道に差し掛かり、立ち止まる

「じゃ、お疲れー」

「おー、気を付けて帰れよー」

「はーいママ!」

「誰がママじゃ!」

達矢は玲の頭をはたいて、じゃぁなと言って帰って行った



(達矢との時間は心地いい。幼馴染ってのが大きいよなー。てか俺と達矢って、幼馴染じゃなかったら『友達』にすらなってないかもなー)

達矢は、いわゆるイケメンと言われる部類に入る。しかも爽やかで面倒見もいいから、もうモッテモテなのだ

対して玲はと言うと、見た目も中身も平凡だ。ただ一つを除いては…


第二の性

この世界には第一の性と、第二の性がある。第一の性は『男』と『女』、そして第一の性よりも重要視されているのが第二の性である

第二の性には『αアルファ』、『βベータ』、『Ωオメガ』の三種の性がある。第二の性にどの性を持つかによって、社会的な位置がおおまかに決まってくるのだ

『アルファ』、この性を持つ者の特徴は、8割がた生まれながらにそれなりの地位を持っている場合が多いと言う事。もちろん一般家庭であっても生まれない事は無いが、多いとは言えない。だが、一つ言える事は『アルファ』とは言え『努力』しない事には成功はないと言う事だ

『ベータ』はこの三種の中では、一般的な性に分類されその数は多い。第二の性で言うと、普通って事だな

そして『オメガ』。この性は三種の中で一番数が少なく、社会的立場も低い。どんなに優秀な者であっても『オメガ』の特性から、アルファとベータの様には生きられない

オメガは第一の性に関係なく『子』を産む事が出来る。そして『アルファ』はオメガからしか生まれない。これだけを考えれば、社会的地位は高くてもいいのではないかと思うのだが。社会的立場が低い要因となっている、オメガのもう一つの特性

それが『発情期』である
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