ラスボス廃棄少女は幸せになりたい

まにゅまにゅ

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第6章 赤い羽根で舞い降りる

第48話 赤い羽根で舞い降りた者

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「……報告は以上です」

 私は魔人アインズがいなくなったことをルーセル辺境伯に報告した。騎士団の会議室に集まった面々は私がこれで襲撃は終わると言ったことに懐疑的だ。でもこの辺はもう何ヶ月かすれば理解してもらえるだろう。

 魔物を呼び出せる魔人アインズがいなくなればアルノーブルへの襲撃もなくなる。つまりレオン様の少年編のシナリオの終わりとなるわけだ。ホントはもっと長いはずなのになんでこうなった?

 私がシナリオを改変してしまったのは間違いないんだろうけどさ。それよりこのままだとレオン様と大して仲良くなれてないのにお別れになってしまう。

 本来レオン様は王都の中等学園に通う予定だったが、襲撃が頻発していたためアルノーブルの学園に通っていたのだ。しかしもう襲撃はなくなる。そうなればレオン様は王都に行ってしまうだろう。

 追いかければいいが、今の関係性で追いかけても振られるのが目に見えているわけで。このアルノーブルの襲撃が起こっている間こそが距離を縮める絶好のチャンスだったんだけどねぇ。

「テア、よくやってくれた。襲撃がこれで本当に終わるのかはもう少し様子を見てからの判断になるが、強大な力を持つ魔人を討伐したことは大いに評価する。もし望みの褒美があるなら申してみよ」

 望みの褒美……。別に金も地位も名誉もいらない。私が望むものは唯一つ。言うか?
 言うのか?
 言う。言うぞ、言うぞ私は!

「ならその……、レオン様と仲良くなりたいです」

 言った!
 言ってやった!
 ダメ、顔が真っ赤なの自分でもわかっちゃうよ。好きって言ってるのおんなじだもん。ああ、顔から煙出そう……。

「僕とかい? 目をかけていたつもりだったし、普通に名前を呼び合っているなら仲良くなってると思うんだけど」

 うえ?
 そ、そうだったんです?
 確かに辺境伯家の嫡男が普通に声をかけてくれたりするのは目をかけていると言えるかも。でもやはり求めるのは激甘ラブラブ展開だけどね。そこに至るにはまだまだ好感度足りないか。

「ふむ、そう言えばそうだな。よし、大きな戦いも終わったことだしこれで一区切りはつけられるはずだ。テアよ、戦いばかりでまだこの街をちゃんと回れていないだろう。レオンに案内してもらうといい。いいな、レオンよ」
「いいですね。僕もちょっと忙しかったですし、いい気分転換になります」

 おお、辺境伯家当主が自らの令息にデートしてやれなんてこれは!?
 しかもレオン様も乗り気っぽい。これはもしや今後に期待大?

「あ、あああありがとうございます!」

 予想以上のご褒美に赤面が止まらないよぉっ!
 それでもなんとか頭をペコリと下げ、そしてチラリとレオン様を見る。円卓で3席ほど離れているが、レオン様の微笑む顔がバッチリと目に入った。

 もうこれ脳内スクリーンショットだよ。むしろ待ち受け画像確定レベルと言っても過言ではあるまい。それほど迄にレオン様の微笑みは眩しく、そして私を一撃でキュン死させるほどの破壊力を秘めていた。

「楽しみだね。この会議が終わったら待ち合わせの時間と場所を決めようか」
「よ、よよよよよろしくお願いします」

 レオン様の言葉に顔を上げ、そして再び頭を下げる。

 ドン!

 勢い余って机におでこをぶつけたけど痛くない!

「だ、大丈夫?」
「へ、平気です! 今なら頭突きでこの円卓だって壊してみせます!」

 思わず理由のわからないアピールをしてしまう。いやー、何かで嬉しすぎて一晩で法隆寺だって建てちゃうなんて表現聞いたことあるけど、今ならその気持ちを理解できちゃうわ。

「それはやめてくれ」

 ヘルクス子爵が冷静に私にツッコミを入れた。

「さて、話を戻そう。ただ一つ気がかりなこともある。それはこの街に封印されている原初オリジンの存在だ。聞けば襲ってきた魔人に力を与え、亜魔神にまで昇格させた。その報告に間違いはないな?」
「はい。アインズがそう言ってました。恐らく本当のことでしょう」

 元々近くにいる魔人には念話での通話が可能だった。その距離が伸び、力さえも与えられるなら封印はかなり弱まっていると解すべきだろう。

「テア、お前はそれをどう見る。封印が弱まっているのではないか?」
「そうですね。封印は間違いなく弱まっています。ですが、魔物の襲撃がなくなればこれ以上封印が弱まることは……」

 と、そこではたと気づく。そういえば亜魔神って少なくとも人間じゃない。それどころか最高位の魔物、と捉えることはできないだろうか。贄はその魔物が高位な存在であればあるほど必要な数を減らしてしまう。

 今日私は最強クラスの魔物であるレッドドラゴンと亜魔神を倒した。果たしてこれはどれほどの贄に相当するのか。

 それを考えたとき私の顔から血の気が失せたのだろうか、それとも私が言葉を止めたことに大きな不安を覚えたせいだろうか。

「どうしたテアよ、まさか何か気がかりがあるというのか!?」

 ルーセル辺境伯が私の様子にただ事ではないと感じたのだろう。思わず席を立って私に声をかけた。

 私が何も言えずにいるとそこに刹那の静寂しじまが生まれる。だがその静寂はすぐに撃ち破られた。最悪の報告をもって。

「大変です、地下神殿が破壊されて魔神が姿を現しました!」

 会議中にも関わらず兵士がドアを開けて挨拶も為しに報告する。

 魔神が現れた……?
 まさか!

「まさか原初オリジンが復活したというのか!」

 ヘルクス子爵も顔面を蒼白にさせ、立ち上がって叫ぶ。なんということだ、これが原初オリジンの狙いだったというわけか。

 私達はすぐさま会議を中断し、外へ出る。遥か上空には青い身体で赤い蝶のような羽根で浮かぶ魔神がいた。

 間違いない。原初オリジンだ。

 奴は遥か上空にいる。なのになぜだ?
 私は奴と目が合ったような気がした。いや、気の所為じゃないな。なぜなら奴はその赤い蝶のような羽根を広げ、私達の方へと舞い降りて来たのだから。

「クククク、礼を言おう魔人の娘よ。お前がレッドドラゴンと亜魔神を倒してくれたお陰で我は復活できた。とはいえ、封印を無理矢理破ったせいか未だ我は不完全でな。おかげでこの街を焦土に変えることすら難しいだろう」

 力が不完全なら勝てないだろうか?
 いや、無理だな。私もかなり消耗しているし、とても勝てる気がしない。それほどまでにこの原初オリジンからは強大な力を感じる。

「それで、あなたは何をしたいの?」
「在りし日の我に還ること。そのときこそ悪しき霊アンラ・マンユとして神に戦いを挑むのだ。ではな、魔人の娘よ。また会うこともあるだろう。そのときは我が傍らに立つといい」

 そして魔神は再び空に舞い上がると遥か彼方へと飛んでいった。正直戦いにならなくて済んだのは命拾いだろう。いったいこれからどうなるのか、それは私にもわからなかった。
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