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第1章 廃棄少女テア
第6話 メルデの村で2
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「質素な部屋だけどここを使っておくれ」
マエルさんに案内された部屋はベッド以外何も置いていない小さな部屋だった。殺風景だけど窓くらいはある。ベッドにはシーツも敷かれていないけど、夜露がしのげれば文句は無い。
「ありがとうございます。でも私お金が……」
「要らないよ。そうだね、その代わり農作業でも手伝って貰おうかね」
「はい、そのくらいはさせてください」
ちゃんと仕事を貰えるのなら気兼ねなく泊まることができる。正直ありがたい。
「じゃあ早速手伝ってもらおうかね。夕飯も出してあげるからちゃんと食べるんだよ?」
「ありがとうございます」
うわー、いい人だ。農作業はあまり経験がないけどなんとかなるだろう。
「なら着替えないとね。その格好で農作業は無理だからね」
マエルさんは別の部屋へ行き、タンスから衣類を出している。持ってきたのはもんぺと長袖の服だ。これに着替えろということか。
「ありがとうございます」
私は服を受け取り、着替え始めた。すると、
「ただいまー」
男の子の声がした。声が高いから小学生くらいの子だろう。ドタドタと廊下を走る音がする。その音はどんどん近づいてきた。
「ジル、 ここから先は入っちゃダメだよ!」
マエルさんがキツイ口調で男の子に言い聞かせている。今のうちに着替えを終えよう。
「えー、なんでだよ? いーじゃんケチ。お客さんが来てるんだろ?」
「あ、こら!」
今まさに替えの服を着ている真っ最中、その男の子と目があった。私、上ハダカよ?
「キ……、キャーーーーッ!!」
何故か急激に強い羞恥を感じ、慌てて胸を隠して声をあげる。精神年齢19だけど肉体は9歳だ。同年代(多分歳上)くらいの子に見られるのはやはり恥ずかしい。っていうか19歳の肉体だとしても嫌だし。
「わ、悪ぃ!」
私が大声を出すと、ジルって男の子は慌てて後ろを向く。そのくらいの良識があって良かった。
「こらジル! 入るな、って言っただろ!」
「ごめんよ母ちゃん」
マエルさんがジルの頭にゲンコツを食らわせる。ジルはうずくまったまま謝罪した。なかなかいい音がしたねぇ……。詰まってないんだなきっと。
「ったく、この子は。嫁入り前の娘の裸を見るんじゃないよ。テアちゃん、後でこいつひっぱたいてやんな」
「いえ、大丈夫です……」
最初だし大目に見よう。精神的に私の方がお姉さんのはずなんだし。それに一晩とはいえ、1つ屋根の下になるわけだからね。余計な軋轢は避けたい。
「よし、んじゃ俺が手本を見せてやるよ」
私が今いる場所はマエルさんとこの畑だ。トマトみたいな野菜が生えていて、隣の畑にはキュウリのような野菜が実っている。他にもキャベツ?
そんな感じの野菜が植えてあるようだ。で、覗いたお詫びにジルが私に畑仕事を教えることになった。
「いいか、赤く熟してしまうと鳥に食われちまうからな。このトマトは少し緑色が残っていてもこのくらい赤くなったら取っていいんだ」
「うん、わかった」
ジルが取ったトマトと同程度の赤さのものを選んでもいでいく。結構数があるな。これだと食べ頃になるまで数日かかりそうだ。
「おー上手いじゃん。その調子だな」
トマトを一通り詰み終わり、次はキュウリだ。名前がまんまキュウリだった。覚えやすくていいね。ゲームの世界だし、ご都合主義な方が合理的な場合もあるということだ。
キュウリは大きさも形もバラバラだ。売り物じゃないからそんなものかもしれない。しかしこんなにぐにゃぐにゃ曲がるもんなんだね。家庭菜園とかしたことないから知らなかったよ。
「キュウリもまぁ、こんくらいの大きさで取っていいわ。これ直ぐに大きくなるからな。明日には驚くほど大きくなってるぞ」
「へー、そうなんだ。ほとんど水だからかな?」
確かキュウリってほとんど水分で、世界一栄養の少ない野菜というのでギネスに載ってたような気がする。
「そうなんじゃね? 知らんけど。それよりテア、お前いくつだよ」
「私? 9歳だよ」
「へー、9歳か。そうか、2つ下か。そうか……」
何納得してんだろ。私が小さいから歳下だと思ったってとこ?
「お前ずっとここにいるのか?」
「いないよ? 明日には出るつもり」
「いや、ダメだろそれは! 母ちゃんも言ってたはずだぞ。なんならここにずっと居ていいからな?」
いや、ずっといたらレオン様に会えないじゃん。それはお断りだよ。まぁ、心配してくれるのはありがたいけどさ。
「さすがにそれは迷惑でしょ。私なら大丈夫。それに行かなきゃいけないから」
「迷惑じゃねーって。それにどこへ行くんだよ」
どこへ……?
うーん、レオン様にお会いするのはどこに行けば良かったかな?
ルーセル家の領地の名は確かアルノーブルだ。そこへ行けば会えるかもしれない。
「アルノーブルまで?」
「知らない地名だな。どこだよそこ」
ジルが不機嫌そうに眉をひそめる。そんな嫌な顔せんでもと思うが。
「確か国境付近」
「国境付近って色々あるだろ。そこへ行くならまず近くのウォルノーツまで行かないとダメだな。そこなら大きい街だからアルノーブルへ行く方法もわかるだろうけどさ」
ほうほう、なるほど。そうなると次の目的地はウォルノーツか。場所が分かるといいんだけど。
「ウォルノーツへはどうやって行くの?」
「お前の足だと2日かかる。あきらめろ」
ぷいっ、とそっぽを向く。私はぶすーっ、と口を尖らせ、ジト目でジルを見た。さっさと吐かんかい。
「そんな顔しても教えてやんね。とにかく今はここにいろ。道中魔物だっているんだからな」
どうやらジルは意地悪で教えないのではなく、教えたら私が出ていって魔物に食われると思っているようだ。まぁ、そう思うのも無理ないか。時間はあるし、多少滞在が延びても場所を聞き出すべきだろう。道を間違えたら本当に野垂れ死んでしまうかもしれないからね。
マエルさんに案内された部屋はベッド以外何も置いていない小さな部屋だった。殺風景だけど窓くらいはある。ベッドにはシーツも敷かれていないけど、夜露がしのげれば文句は無い。
「ありがとうございます。でも私お金が……」
「要らないよ。そうだね、その代わり農作業でも手伝って貰おうかね」
「はい、そのくらいはさせてください」
ちゃんと仕事を貰えるのなら気兼ねなく泊まることができる。正直ありがたい。
「じゃあ早速手伝ってもらおうかね。夕飯も出してあげるからちゃんと食べるんだよ?」
「ありがとうございます」
うわー、いい人だ。農作業はあまり経験がないけどなんとかなるだろう。
「なら着替えないとね。その格好で農作業は無理だからね」
マエルさんは別の部屋へ行き、タンスから衣類を出している。持ってきたのはもんぺと長袖の服だ。これに着替えろということか。
「ありがとうございます」
私は服を受け取り、着替え始めた。すると、
「ただいまー」
男の子の声がした。声が高いから小学生くらいの子だろう。ドタドタと廊下を走る音がする。その音はどんどん近づいてきた。
「ジル、 ここから先は入っちゃダメだよ!」
マエルさんがキツイ口調で男の子に言い聞かせている。今のうちに着替えを終えよう。
「えー、なんでだよ? いーじゃんケチ。お客さんが来てるんだろ?」
「あ、こら!」
今まさに替えの服を着ている真っ最中、その男の子と目があった。私、上ハダカよ?
「キ……、キャーーーーッ!!」
何故か急激に強い羞恥を感じ、慌てて胸を隠して声をあげる。精神年齢19だけど肉体は9歳だ。同年代(多分歳上)くらいの子に見られるのはやはり恥ずかしい。っていうか19歳の肉体だとしても嫌だし。
「わ、悪ぃ!」
私が大声を出すと、ジルって男の子は慌てて後ろを向く。そのくらいの良識があって良かった。
「こらジル! 入るな、って言っただろ!」
「ごめんよ母ちゃん」
マエルさんがジルの頭にゲンコツを食らわせる。ジルはうずくまったまま謝罪した。なかなかいい音がしたねぇ……。詰まってないんだなきっと。
「ったく、この子は。嫁入り前の娘の裸を見るんじゃないよ。テアちゃん、後でこいつひっぱたいてやんな」
「いえ、大丈夫です……」
最初だし大目に見よう。精神的に私の方がお姉さんのはずなんだし。それに一晩とはいえ、1つ屋根の下になるわけだからね。余計な軋轢は避けたい。
「よし、んじゃ俺が手本を見せてやるよ」
私が今いる場所はマエルさんとこの畑だ。トマトみたいな野菜が生えていて、隣の畑にはキュウリのような野菜が実っている。他にもキャベツ?
そんな感じの野菜が植えてあるようだ。で、覗いたお詫びにジルが私に畑仕事を教えることになった。
「いいか、赤く熟してしまうと鳥に食われちまうからな。このトマトは少し緑色が残っていてもこのくらい赤くなったら取っていいんだ」
「うん、わかった」
ジルが取ったトマトと同程度の赤さのものを選んでもいでいく。結構数があるな。これだと食べ頃になるまで数日かかりそうだ。
「おー上手いじゃん。その調子だな」
トマトを一通り詰み終わり、次はキュウリだ。名前がまんまキュウリだった。覚えやすくていいね。ゲームの世界だし、ご都合主義な方が合理的な場合もあるということだ。
キュウリは大きさも形もバラバラだ。売り物じゃないからそんなものかもしれない。しかしこんなにぐにゃぐにゃ曲がるもんなんだね。家庭菜園とかしたことないから知らなかったよ。
「キュウリもまぁ、こんくらいの大きさで取っていいわ。これ直ぐに大きくなるからな。明日には驚くほど大きくなってるぞ」
「へー、そうなんだ。ほとんど水だからかな?」
確かキュウリってほとんど水分で、世界一栄養の少ない野菜というのでギネスに載ってたような気がする。
「そうなんじゃね? 知らんけど。それよりテア、お前いくつだよ」
「私? 9歳だよ」
「へー、9歳か。そうか、2つ下か。そうか……」
何納得してんだろ。私が小さいから歳下だと思ったってとこ?
「お前ずっとここにいるのか?」
「いないよ? 明日には出るつもり」
「いや、ダメだろそれは! 母ちゃんも言ってたはずだぞ。なんならここにずっと居ていいからな?」
いや、ずっといたらレオン様に会えないじゃん。それはお断りだよ。まぁ、心配してくれるのはありがたいけどさ。
「さすがにそれは迷惑でしょ。私なら大丈夫。それに行かなきゃいけないから」
「迷惑じゃねーって。それにどこへ行くんだよ」
どこへ……?
うーん、レオン様にお会いするのはどこに行けば良かったかな?
ルーセル家の領地の名は確かアルノーブルだ。そこへ行けば会えるかもしれない。
「アルノーブルまで?」
「知らない地名だな。どこだよそこ」
ジルが不機嫌そうに眉をひそめる。そんな嫌な顔せんでもと思うが。
「確か国境付近」
「国境付近って色々あるだろ。そこへ行くならまず近くのウォルノーツまで行かないとダメだな。そこなら大きい街だからアルノーブルへ行く方法もわかるだろうけどさ」
ほうほう、なるほど。そうなると次の目的地はウォルノーツか。場所が分かるといいんだけど。
「ウォルノーツへはどうやって行くの?」
「お前の足だと2日かかる。あきらめろ」
ぷいっ、とそっぽを向く。私はぶすーっ、と口を尖らせ、ジト目でジルを見た。さっさと吐かんかい。
「そんな顔しても教えてやんね。とにかく今はここにいろ。道中魔物だっているんだからな」
どうやらジルは意地悪で教えないのではなく、教えたら私が出ていって魔物に食われると思っているようだ。まぁ、そう思うのも無理ないか。時間はあるし、多少滞在が延びても場所を聞き出すべきだろう。道を間違えたら本当に野垂れ死んでしまうかもしれないからね。
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