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第139話 VSタートルドラゴン2

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 それから3日経ち、ついにやって来ました第48層。休む為のセーフティゾーンがいつもの何倍も広く、天井も高い。その中に人工の池があってその側にはご丁寧に看板が立てかけてあった。

「わざわざ注意書きされてるのか」

 そこには注意書きでこの池に飛び込むとその先がボス部屋であること、水の中では呼吸も会話もできるが、他の水としての性質は保たれていることなどが書かれている。まぁ概ね聞いていた通りだ。

    それにしても気になるのはこの池の近くにある瓦礫の山だ。ゴーレムでも作れそうだけど池に入っても沈んじゃうよね。

 なお、逃げる際は水上に出ればどこからでもこの人工池に出るらしい。どんな仕組みかわかんないけど、さすが神様が作ったというダンジョンだね。もう逃げる前提になっているのか扉があって、『この先転移陣』としっかり書かれている。

「じゃあとりあえず専用装備を出すね」

 収納から取り出した装備は槍。もちろんただの槍じゃあない。強化した破壊ディストラクションが付与されており、貫通力もある。さらにサイズも普通の槍の10倍のデカさがある。当然人の力じゃ持てないけど、リーネの闇の手ダークハンドなら持てる。それをアレサが魔法保持のスキルで操ればいいのだ。

 もちろんそれだけではない。ちょっとしたセコい方法も考えてあるのだ。上手くいけばこちらの不利を全て解消し、タートルドラゴンに一方的に不利な条件を突きつけることもできるだろう。

「いくよー闇の手ダークハンド
強化ブースト
「ストック、リリース」

 アレサがリーネの強化した闇の手ダークハンドを自分の物にして巨大な槍を手にする。

「まっすぐ突くくらいしかできんと思うが任せてくれ」
「うん、正攻法がダメなら奥の手を使うから生き延びることを優先しよう」
「だな、いくぞ!」
「「「おーっ!」」」

 サルヴァンの合図で一斉に池に飛び込む。池の中は当然水の中だけど呼吸ができる。何とも不思議な感じだ。

「凄いな、喋っても気泡はできないのか。しかも音が伝わるとは」
「各自泳いで動きに慣れろよ。それとルウ、例の盾を出してくれ」
「うん、今出すね」

 流石にこんなデカイもの水の中じゃないと持つのは無理だろう。取り出したのは超巨大な格子状になった特注の盾だ。格子状なのは前が見えないと困るからで、これでサルヴァンの硬質化を利用してタートルドラゴンの攻撃を防ぐのだ。普通なら体重で負けるから吹っ飛ばされるだろうけど、そこは防壁プロテクションの座標が固定される性質を利用して突撃の威力に対抗するのだ。

 サルヴァンと僕でタートルドラゴンの攻撃を食い止め、アレサとリーネで攻撃をする。これが僕たちの考えた正攻法だ。奥の手はこれで倒した判定になるのかわからないのですぐには使わない。

「サルヴァン、どう?」
「ああ、持っても泳げるな。よし、少し前に行ってみよう」

 僕たちは前に泳ぎつつ周囲を警戒する。周りは水だらけで結構深いはずなのに明るい。水の深いところって光が届かなくて暗いって本に書いてあったけど、ここはその法則が当てはまらないようだ。おかげで周りがよく見える。そして生物は全く見当たらない。

「おい、あれじゃないか?」

 遙か前方に小さい影が見えた。そしてそれはどんどん近づいてくる。タートルドラゴンの名が付いているが、見た目は超巨大な海亀に近い。違いと言えば顔が竜のように少々凶悪で愛嬌の欠片もありゃしないことと、尻尾が長いことか

「相当デカイな。だいたいの大きさは聞いていたが目にするとビビるわ」
「これとやり合うんだね。水の中じゃ普通の兵士1万人いても勝てないと思うな」

 そりゃそうだ。イワシが1万匹いても鯨に敵うわけがない。タートルドラゴンから見れば人間なんて鯨から見たイワシと変わんないだろうね。

「来るぞ!」

 サルヴァンの合図で僕とサルヴァンが前に出てアレサとリーネは僕らの少し下に移動する。段々とタートルドラゴンが迫って来た。頃合いか。

 無声での複数発動で防壁プロテクションを展開。サルヴァンの格子状の大盾をサポートする。そして迫る巨大なタートルドラゴン。そしてそのタートルドラゴンが大きな口を開ける。噛み付くつもりか!

 しかしその口のサイズは大盾を飲み込むには少し足りず激突した。

「ぬああっっ!」

 弾き飛ばされないよう防壁プロテクションで保護しているとはいえ、凄まじい衝撃のはずだ。何重にも張った壁にもヒビが入り始める。

 そこへアレサの操る黒い腕がタートルドラゴンの腹に槍を突き立てる。間髪入れず強大な魔法陣が展開し、黒い闇の柱がタートルドラゴンを覆い尽くした。死滅陣イービルデッドだろう。

 キィィィィ……!

 水の中をタートルドラゴンの嘶きが走り抜ける。よし、効いている!

 しかしこれはいける、と思ったのも束の間だった。血を流し、怒り狂ったタートルドラゴンが身体をブンブン振り回して暴れ出す。その場で回転したせいで大盾にしっぽがぶつかり、しの衝撃で遂に防壁プロテクションが崩壊、大盾ごとサルヴァンが吹き飛ばされ、僕も巻き添えを食らう。

「うわぁっ!?」
「ちぃっ!」

 水の抵抗のおかげであまり吹き飛ばされずに済んだけど、突き刺した槍が取れないのかタートルドラゴンの腹に刺さったままになっている。まずい、予備ないんだよねあれ……。

「すまん、槍を刺したはいいが抜けなくなってしまった。取るのは難しいだろう」
「そうなると攻撃手段が魔法だけになってしまうな。ルウ、奥の手を使うべきだ」
「そうだよ、あのパワーは何度も防げるとは思えないもん。倒す手段があるなら迷っちゃダメだよ」
「そうだね。ズルいかなぁって思ったけど相手が悪すぎた。使おう」

 サルヴァンとリーネに促され僕は奥の手の使用を決めた。多分だけどこれが正解なのかもしれない。この池の仕様、やたらと広いセーフティゾーンと瓦礫の山の理由を考えれば有りなんじゃなかろうか。

 まぁ、やり方は神様も予想してなかったと思うけどね。

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