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第55話 盗賊引き渡し

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 その日の午後にはサンマルクの街を出てランディゴの街へ向かっていた。移動方法は例の如く空飛ぶ石の家。もうちょいゆっくりしたかったんだけどね。
 おかげで2日の日程が僅か1時間ちょいだ。予定より早く終わっても護衛料はちゃんと2週間分もらえることになったからいいんだけどね。





 ランディゴの街から少し離れた所に降り、そこからは馬車で移動した。そして街の中に入る。
 ランディゴの街は結構大きな街で統治している領主様は公爵様なのだとか。

「じゃあこの街で盗賊どもを引き渡して来るよ」

 サンマルクの街は疫病の後始末でゴタゴタしていたから引き渡すのをやめたのだ。サルヴァンもその方がいいと判断したしね。

「おう、任せた。俺とリーネは荷物の引渡しとか色々あるから商会に行く。宿はマルタンさんが紹介してくれるから、午後6時頃にギルドでな。後は自由行動でいいだろ」
「サルヴァン、私も行こう。特にやることがないしな」

 ここからは僕は単独行動か。たまにはいいかもしんない。
 門を通過したところで別れると、僕は衛兵に話して盗賊団の引渡し場所に案内してもらった。どこにも盗賊がいないから怪訝そうな顔をされたけど、アレーテさんが口を利いてくれたのでちゃんと案内してくれた。Sランクのギルド証の効果は凄い。





 案内されたのは犯罪者を取り調べ、収容する施設の護法取締所だ。ここで一旦罪人を収容し、取り調べをした上で法務局が刑罰を決める。れっきとした領地の秩序維持のための領主軍に属し、領主から給料をもらっているらしい。領主が腐っているとやりたい放題されてしまうのが難点か。権力者に逆らうと冤罪逮捕もありそう。一応監査役として国家に所属する組織もあるそうだけど、権力には勝てないと思う。
    なお、捕まった後は言いたいことがある場合、取り調べ中に言わないとダメらしい。刑が決まってしまえばもう覆ることはほぼ無いそうだ。

「で、その盗賊団とやらはどこにいるんだ?」
「出すのはいいですけど、ここだと狭いです。もっと広い場所と人数をお願いします」
「出す?    ならいいから出してみろ」

 その施設内の入ってすぐのロビーなのでそこそこの広さはあるんだけどね。さすがに50人出すには狭いんだよなぁ。仕方ない5人ずつ出そう。

「じゃあとりあえず5人で」

 僕は収納ストレージで石化した盗賊を5人取り出した。

「せ、石化しているのか!?」
「今戻しますね。回復ヒール

 兵士も4人いるので戻しても大丈夫だよね。僕が回復ヒールを唱えると石化から回復し、盗賊達が意識を取り戻す。

「!   こ、ここはどこだ!」
「あ、あんた達助けてくれ!    このクソガキは鬼だ!    悪魔だ!」
「も、もう悪いことはしない!    頼む!」

 意識を取り戻した盗賊達は僕の顔を見て怯えた表情を浮かべて兵士たちに助けを求めた。
 誰がクソガキじゃ。

「なんで回復ヒールで石化が解けるんだ?」
「おい、どうやったら盗賊がこんなにびびりまくるんだ……?」
「石化して収納魔法に入れるとか聞いたことないぞ……」

 兵士の反応もまばらだった。まぁ、色々疑問に思うのもわかるけどさ。痛みを強化して気絶させた奴もいたから、びびりまくっているのは多分それじゃないかな?
 いちいち顔とか覚えてないので知らんけど。

「内緒です。たくさんいるのでどんどん連れて行ってください」
「わ、わかった。応援を呼んでくる」





 納得したのか応援を呼んでくれたので、その後は矢継ぎ早に連れていってくれた。取り出したのは5人ずつで計57人もいた。今賞金首がいるか確認してもらっているところだ。

「お待たせしました。今回捕まえた盗賊団は殺戮の宴のメンバーであることが確認されました。その中で賞金首が3人おりまして、他の報奨金を合わせ、金貨162枚が支払われます」
「金貨162枚!?    凄いですね!」
「ええ、殺戮の宴といえばサンマルク近辺を根城にする中では最大の盗賊団です。ご協力ありがとうございました!」

 兵士3人が僕の前で深々と頭を下げる。ここに連れてきて貰った時とはえらい差だ。
 それにしても、あいつらそんな有名な盗賊団だったのか……。しかしこれは凄い臨時収入だ。パーティ内の資金も相当潤いそう。

「こちらが金貨162枚と、盗賊捕縛証明書になります。この捕縛証明書を拠点にしているギルドに提出お願いします。金額の方はお間違いがないかこちらで確認をお願いします」  
「はい、ありがとうございます」

 僕は金貨の入った革袋と、捕縛証明書を受け取ると、まず捕縛証明書を収納。金貨を数えるのめんどいな。鑑定で数えられないかね?

「金貨の枚数を鑑定アイデンティファイ

 金貨162枚。偽物無し。

 できるみたい。これは便利だ。

「金貨162枚確認しました。ありがとうございます」
「今鑑定しましたよね……?     それで枚数がわかるのですか?」
「能力に関することはお答えしかねます。ごめんなさい」
「そ、そうですよね。申し訳ありません」

 どこか釈然としない様子で兵士は頭を下げた。気になるんだろうけど説明の義務はないもんね。僕は臨時収入に顔を綻ばせながら護法取締所を出る。すると出入口の方では兵士が敬礼をして僕を見送っていた。ちょっと優越感?
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