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ミルティーの宣言2

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【聖女】の力は傷ついた人を癒やし、幸福と繁栄を齎す。他者の心を干渉する力を持っていても驚かない。ただ、まだミルティーは【聖女】として未熟で魔法の扱いにも不慣れだと聞く。
 彼女から伝わる純粋な好意。誰の目から見ても昨日のレーヴは異常だった。有難い申し出をシェリは緩く首を振って断った。手を離してもらい、自嘲気味な笑みを浮かべた。

 
「ミルティーさんもご存知のようにわたしはずっと殿下に嫌われていたわ。殿下の態度の変化に原因があるにせよ、あの態度は今まで我慢していた感情が表に出てきたとしか思えないの」
「で、でも」
「それにね、今日で殿下とわたしの婚約は正式に解消されるわ。今朝お父様に頼んだの。もう無理だと。本当は、先日のパーティーで解消の発表がされる筈だったのを殿下が拒んだからってなくなって。昨日はヴェルデ様の力もあって殿下と話そうと決めたのに……」
「オーンジュ様……」

 
 水面下で仲を深められ裏切られたという気持ちは不思議と抱かなかった。長年彼を苦しめ続けた自分に相応しい罰だと受け止めるしか、シェリには残されていない。言いたげなミルティーの視線から逃れるように下を向いた。
 沈黙が苦しい。
 お互い掛ける言葉が見つからなかった。

 徐に顔を上げて、未だ居続けるミルティーに作り笑いを向けた。

 
「もう授業が始まってしまうわ。行きなさい」
「オーンジュ様は……?」
「……今日はもう、ずっと図書室にいようかなって」

 
 運悪くあの2人と遭遇するのは嫌だし、人の出入りが少ない図書室なら静かに過ごせそうだから。

 
「じゃあ、私もいますっ!」
「真面目なあなたが授業をサボったら駄目でしょう」
「オーンジュ様もです。オーンジュ様を1人には出来ませんっ」
「そう……」

 
 1人でいたい気持ちと
 誰でもいいから側にいて欲しい気持ちがあった。
 素っ気なく言ったのにも関わらずミルティーはふんわりと笑った。

 予鈴開始の鐘が届く。
 シェリは窓を眺め、ミルティーは棚から数冊の本を持って来て読書を始めた。ページを捲る掠れた音だけが2人の空間を支配する。

 レーヴとアデリッサが態々シェリの在籍する教室でイチャついていたのは、間違いなくシェリに見せつける為。悔しがり、悲しむシェリを見たかったのだろう。来ないなら来ないで逃げた負け犬と笑われるだけ。
 ずっとレーヴだけを見続けていた、追い掛けていた、嫌われ好きになってもらえなくても。

 1時限目の授業が終わった。
 2人は同じまま。
 2時限目が開始された。
 2人は同じまま。
 昼休憩になるまで、途中お手洗いに行く以外2人は居続けた。


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