私の担任は元世界的スター

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2人に訪れた危機

寂しい距離感

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レオの正体がバレて1ヶ月
年末年始に遊んどけば良かったと思う程、彼は学校でもバイト先の撮影現場でも私に構うことは無くなった。避けられてるとかじゃない…ただ単純に「元ハリウッドスター」を目の前にして、生徒達が休み時間の度にレオの元へ集まるのだ。


「先生、プロミエックの台詞言ってッ!?」
「お前どうせ吹き替えで見てんだろ、やって意味あんのか?」
「次は字幕出みるからァ!」
「先生ッ写真撮ろ!」
「先生の映画観てきたよ!」


私がトイレから出て廊下を歩いていると、今日も聞こえるレオに群れる生徒の声。彼らの横を通り過ぎた丁度その時、レオの深いため息といかにも面倒くさがる声が聞こえた。


「お前ら揃いも揃って…俺は仕事中だから解散しろ、俺に寄るな」


あーぁ…本当につまんない。
レオはコチラに視線すら向けないし
レオって呼ぶのは私だけなのに…
皆までレオ、レオって…。

教室に戻ると葵と健人は隼人と共にケラケラ笑って私を見ていた…どうやら不満なのが顔に出ていたらしい。


「おかえり莉緒w綾城っていつも以上に人気出たよねぇ」
「…」
「そりゃレオさんは名俳優だったもんw」
「笑い事じゃないし…ってか何で隼人が居んの?」
「何となく?」
「あっそ…」


私は不貞腐れた様子で自分の席に座るれば、今度は健人が「いつから連絡取ってないんだ?」と分かりきった事を聞いてくる。レオの正体がバレて以来、連絡だって夜の通話の数分…本当に最小限だ。足りるわけがない。


「これ以上バレて仕事辞めるなんて嫌だし…一応電話とかはくれるし。はぁ、早く学校なんて卒業したい」


こうして今日も私の一日は溜息だらけの日となるのだ。






ーーーーーー


その日の午後、期限の悪い私を気遣った隼人が放課後に家へ招いてくれた。今日は久しぶりに隼人ママの手料理を味わって帰る予定。

そう思って二人で家の中に入れば、何故か隼人ママは出掛ける準備をして隼人にも外へ出るよう促した。


「どこ行くの?」
「ちょっとお買い物にね♡隼人も少し外出てなさい」
「え?何で?用事とか無いけど…」


不思議に思った私と隼人が顔を見合わせていると、リビングから綾城姿のレオが玄関に顔を覗かせた。


「レオッ!?」
「よっ」
「え、なんで綾城先生がここに?」
「家庭訪問」
「家庭訪問なら俺居ないとじゃんか」
「いや邪魔だから他の生徒にバレない所にでも居ろ」
「それどこw」
「山崎の家とかあんだろ」
「レオ相変わらず最低クソ教師」
「なら俺が帰るか?」
「…… 」
「はぁ、分かりましたよ。俺は外に出てます」
「ありがとう隼人」
「明日、ラーメン奢りだからな?」
「OK」


隼人ママと共に家を出た隼人。玄関が閉まり2人っきりになると、私はレオに思いっきり抱き着いた。


「何で来たの?大丈夫なの?」
「あぁ、三十分は居られる。それより色々と我慢させて悪いな」
「ううん大丈夫、もう慣れた」
「お前は慣れちゃいけねぇ事にばっか慣れちまうな…」


そう言って頭をクシャッと撫でてくれたレオ。大好きだった大きな手に触れられ満足した私は、1度レオから離れリビングに入りカバンを置いたのだが、私は少し違和感を覚えた。

レオのタバコの匂いが増してる…

普段からタバコを吸うレオだったけど、私の知ってる匂いじゃないのだ。

タバコの本数を増やしたんだろうか?
それとも銘柄変えた?

どちらにせよ体に宜しくないのは変わらない。


「…レオ、タバコ変えた?」
「あ?あぁ臭うか?」
「ううん別に…気になるの?」
「当たり前だ。莉緒に臭いと言われんのは嫌だ」
「ねぇレオ?我儘はダメだからね?」
「何だよ急に大人になったな。俺、我儘なんか言ったか?」
「言ってない」


無理はしないで欲しい。
タバコも身体に悪いから戻して欲しい。

そんな事が素直に言えれば、どれだけ人付き合いも楽だろうか。私の意図が分かっていないレオはキョトンとした表情をしてたけど、直ぐに微笑んで私を膝に座らせ抱き締めた。


「…暑い」
「嫌か?なら少し早いが帰るか」
「はぁ?何で暑いって言ったら帰る事になんのよ」
「傍に居んならくっつきてぇだろ」
「言ったそばから我儘言うじゃん」


私が大きな溜息を吐きじっと抱き締められていると、膝から降ろされてしまう。久しぶりに話せてるんだから、レオの言う通りもっと甘えたりしたいのに何故突き放す言い方になるの?

レオだって私の態度に呆れたのか、自分の財布と携帯を持って立ち上がってしまう。まさか本気で帰るの?なんて口に出来ないままレオを見上げると「ん?」と微笑む彼…何故か楽しそう。


私は彼の袖を掴んで俯いた。


「…ぃゃ」
「何が嫌?」
「分かってるくせに…」
「分からねぇから聞いてんの」


絶対分かってて言わせようとしてんだ
本当に鬼だ悪魔だッ!!


「言わねぇと分かんねぇよ?」
「さッ、三十分は居られるんでしょッ…ならギリギリまで居ても良い…じゃん」
「帰ったら嫌か?」
「…ん。や」


短く答えると笑ったレオは、また髪をクシャッと撫でてキッチンへ向かった。


「何してるの?」
「お前らが来る前に、坂島のお袋さんに許可貰って台所借りたんだ」
「??」
「ハンバーグ、食うだろ?」
「えッ!?レオの手作り食べれるのッ!?」
「おう、今焼いてやるから待ってろ」
「ッうん!」


まさか大好きな彼の手料理が食べれるなんて思っても無かった。一気に機嫌が戻った私は、料理が出来るまでキッチンに立つ彼の背中にくっ付いて離れる事はしなかった。

レオは隼人ママにお礼として隼人と隼人ママの夕飯分も用意して、料理を食べ終えてから家を出て行った。

レオと分かれる直前にしたキスの味は、やっぱり知らないタバコの味だった。









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