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レオ・グリシヤ
文化祭1日目 前編
しおりを挟むモヤついていた気分もすっかり晴れ、文化祭の準備も終えると遂に文化祭当日を迎えてしまう。クラスの出し物が執事メイド喫茶に決まった事で、少し憂鬱な気分で隼人とランニングしながら登校すると教室内は新しいニュースが話題になっていた。
それは“レオ・グリシヤが初めて弟子にした日本の学生”について…。
どこから漏れた情報なのか定かじゃないけど、きっと職場に居るスタッフか出演者の誰かだ。と言っても、この2ヶ月毎回スタッフも出演者も変わるから誰が…なんて特定は難しい。
弟子にしたという噂は、一部の小さなネットニュースにしか取り上げられず本当に小さなちょっとしたネタだというのに、さすが恋に夢見る女子高生達…今までレオに興味無かった子達まで「弟子じゃなくて年の差恋愛だったり」と夢物語を繰り広げている。
そんな少しザワついた中、開会式を終えた私たち生徒は制服からメイド服やタキシードへ着替えていた。
「莉緒めっちゃ似合ってる!」
葵の言葉に苦笑を浮かべていると、今度は健人が「指名入ったりして」なんて笑みを浮かべた。
「指名は無しっつたろ」
「綾城やっと来た!」
「センセーやっと来たァ!」
レオはチラっとこちらを向いたが、直ぐに視線を逸らして他の生徒の元へ行ってしまう。一言くらい言ってくれても良かったのに、やっぱり変だったのかな…?
「綾城、見て見て!メイド服どう?」
「あ?おう似合ってんな」
「うわぁテキトーじゃん!」
私にもアレくらいコミュ力が有れば…。
「ほらほら先生も着替えよ?」
「あァ?俺は着ねぇぞ」
「良いじゃん良いじゃん!」
「綾城ごあんなーい!」
「ちょ、押すなっ…」
女子に背を押され男子の更衣スペースへ押し込まれるレオ。そんな女子の団結力を見て素直に感心する健人は「女って怖ぇ」と、隣に居た男子に笑い掛ける。
直ぐに時間となれば、教室のドアを開け開店させる男子達。数人の大人が入って来たが全員、誰かの両親や友人なのだろ。暫く経てば更衣スペースから髪を縛ったまま、タキシード姿のレオが面倒くさ気に首の後ろに片手を当て、生徒や来賓の方々の前に現れた。
「キャー!綾城サイコー!」
「えっヤバッ!!綾城ってあんなイケてたッ!?」
「……」
無理…ヤダ見せたくない。
てかズルいッ…カッコよすぎだよレオッ!!!
…あァ…ダメ気絶しそう
「ちょ、莉緒大丈夫かッ!?」
そう言ってふらつく私を支えた健人。
「無理無理…顔面国宝…最高」
「おーいっ莉緒帰ってこーいっ」
「山本、どうかしたのか?」
「綾城ッ急に莉緒がふらついて」
「綾城のタキシード姿に莉緒もメロメロなんだってさぁ」
葵と健人の答えに「はぁ?」と眉を上げたレオは、私に視線を移し額に手を乗せ見つめてくる。
…あぁ神様…この瞬間を永遠にして…
瞬間の幸せに浸って居ると、少し違和感を感じた私はふっと我に返る。
「…?いい匂い…」
「ダメだこいつ」
「山本さん大丈夫?」
「莉緒ちょっとのぼせたみたい」
「結構働いてたもんね」
「なら少し外回って来たら?」
「だな、綾城と呼び込みしてこいよ」
「……へ?」
レオと動けるの?
「あァ?何で俺が呼び込みなんだよ」
「良いじゃん私達も頑張って働くから!」
「綾城が呼べば客も沢山来るだろ?」
「頼む綾城ッ!!学年一位のクラスには、アイスの商品券が配られんの知ってるだろっ!?」
「お願い綾城~!」
「いや綾城先生ぇ!」
「お前らこういう時だけなぁ…まぁ良い。山本も体調悪そうだし、少し外の空気吸いに行くか」
「え?あ…ぅんっ」
「行ってらっしゃい!」
「呼び込み頑張れよ~!」
こうして私とレオは、クラスの出し物の看板を持って教室を出て行った。
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