チートなかったからパーティー追い出されたけど、お金無限増殖バグで自由気ままに暮らします

寿司

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第42話 天使の涙が役に立つとは

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「流石に……それはダサくないですか? 」

「は? 」

 ユージーンの眉間に皺が寄る。やはりイケメンの怒り顔って怖いな……思わず食い下がりそうになるところを我慢する。

「いや、だから。人の命を盾にして結婚を迫るなんて……恥ずかしくないのですか? 」

「な、な、な、なんだと!? 部外者はすっこんでくれないか!? 第一ミシェルがそれを望んでいるんだ! 君にどうこう言われる筋合いはない! 」

「ヨリさん……」

 ミシェルが何かにすがるような、それでいて何かを諦めたような目で俺を見る。

「ははぁ? もしかして君もミシェルが好きだったのだろう? だから邪魔をしたいんだな? 」

「いや別に。ただ知り合いの女性が身売りみたいな結婚をするのを見たくないだけです」

「だからね、俺は彼女を幸せに出来るし、彼女の弟も幸せにすることが出来る! 皆幸せになれるんだよ、分かるかい? 」

 まるで子どもに言い聞かせるような小馬鹿にした口調。

「分かりませんね。好きな女にそんなことをする貴方の頭の中は」

 第一、と俺は言葉を続ける。

「それ、偽物ですよね? 」

 えっとミシェルが声をあげる。そしてユージーンの顔がみるみる赤くなっていった。

「偽物だと!?!? この期に及んで何て難癖をつけてくるんだ! これだから下民は……」

「ふうん、あくまでも本物だと言うんですね」

「当たり前だ!! 」

 俺は隙をついてユージーンから瓶を奪い取る。

「お、おい何を!! 」

「これが本物の天使の涙なら、何でも治せるはずだよな? 」

 俺は腰に差している剣を取り出すと、自分の腕に軽く押し当てる。ぴりっとした痛みの後、じわじわと血が染み出してきた。

「あ、あなた!! 」

 マインさんが慌てて治療しようとするのを俺は制する。そしてユージーンの天使の涙の雫を傷口に垂らした。

 ーーしばらく時間をおいても傷が癒えることはない。

「……何も起こらないわ」

 初めに口を開いたのはミシェルだった。
 そして赤い怒り顔とは打って変わり、顔を青ざめるユージーン。

「ち、違うんだこれは!! これは確かに天使の涙で……君が!! 君が何か細工をしたんだろう!! 」

「細工? そんな手品みたいなこと、出来ませんよ」

 俺は瓶をユージーンに放り投げる。

「大方それでリュイが死んでも薬が効かなかったすまない……とでも言い訳したんだろう、とことん下衆なやつだな」

「くっ……」

 図星を突かれたのか呻き声をあげて黙るユージーン。

「最低です! 貴方の顔なんてもう見たくない! 出ていって!! 」

 顔を涙でぐちゃぐちゃにしながらユージーンを怒鳴り付けるミシェル。
 ユージーンは慌てて弁解をするが、どれもこれも子どもの駄々に過ぎない。

「待ってくれミシェル、僕は人並みに魔法だって使える。だから……」

「人並みの魔法じゃ意味ないんです。せっかく……せっかく治ると思ったのに……」

 ついには顔を伏せて泣き始めてしまったミシェル。
 希望から一気に絶望へと叩きつけられてしまったのだ。無理もない。

 しかしこうしている間にもリュイの容態は悪くなっていく。

「……仕方ない」

 俺はカバンから天使の涙を1つ取り出した。勿論偽物なんかじゃない。正真正銘本物だ。

「は!? 」

 ユージーンがそれを見て目を丸くした。そして自分の持っている天使の涙と見比べる。

「ああ、これは偽物なんかじゃないぞ」

 俺はその証拠に、と一滴自分の傷口に垂らす。
 そうすると青白い光と共にみるみる内に傷口がふさがり、あっという間に白い皮膚が現れた。

「ほ、本物……!?!? 馬鹿な、なぜそんなものを貴様が!? 」

 ユージーンが狼狽するが、答えてやる義理はない。

「内緒。ほら、ミシェル。使えよ」

 俺はミシェルに天使の涙を手渡した。
 ミシェルはしばらく手の中のそれと、俺の顔を見比べた後、ただ立ち尽くしていた。

「え、あ……?  」

「早くしな、驚いてる時間なんてないぞ」

「そ、そうね」

 ミシェルは慌ててリュイの元に向かうと、何度も俺にこれを使って良いのか確かめた。

 その度に俺は早く使え、と促してやる。

 あるとき決心したのか、ミシェルはリュイの体を起こすと、ゆっくりと天使の涙を飲ませる。
 リュイは僅かに残った力を振り絞り、こくこくと小刻みに喉を動かしているのが分かった。

「そんな……有り得ん。あの奇跡のアイテムを手にすることが出来るなど……」

 ユージーンがへたりと床に座り込んだ。
 なんだ、自分のは偽物だって分かってたんじゃないか。

「貴様、一体何者だ? 」

「別に、ただのニートだよ」

 金だけは持ってるニートだよ、とは言えなかった。
 しかしユージーンの心底悔しそうな顔を見て、俺は少しだけ胸が空くような気持ちになったのだった。
 
 
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