チートなかったからパーティー追い出されたけど、お金無限増殖バグで自由気ままに暮らします

寿司

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第41話 バッドエンドを回避しろ

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「……んん」   

 いつの間にか夜になり、シエルのそばでうとうとと眠りそうになる俺。
 そのとき、むにゃむにゃと声をあげながらシエルが目を覚ました。

「ヨリ……? 」

「シエル!! 大丈夫か!? 」

 彼女の金色の瞳が俺を映している。
 紛れもなく、彼女は無事だった。
 マインさんにも無事だと言われてはいたものの、シエルが目を覚ますまでは内心気が気ではなかったのだ。

「お腹空きました」

 シエルはゆっくりと体を起こすと、ふわあと欠伸を一つ。意外と緊張感がないやつだ。

「体は平気なのか? 」

「うん、大丈夫です。言ったでしょう、私は強いんです」

 子どもっぽく笑うシエル。
 俺は彼女の細い体をいつの間にか抱き締めていた。

「無事で良かった。ごめんな、一人にして」

「わわわ!! 痛い、痛いですよヨリ! 」

「あ、すまん」

 慌てて力を緩める俺。
 シエルは顔を赤くして、そっぽを向く。

「もう二度と一人にしない。絶対に」

「そ、そうですか」

 俺を見ようとしないシエル。もしかして少し怒っているのだろうか?

「もしかして怒ってる? 顔も赤いし……」

「べ、別に怒ってなんかいませんよ! ただ、その……何か……恥ずかしいというか」

「恥ずかしい? 」

 何が恥ずかしいのだろうか……乙女心というやつは俺にはさっぱり分からないな。
 そのとき、ふとシエルの耳にあるイヤリングに気を取られた。

「そういやこのイヤリング、居場所を教えてくれる魔法がかかってるとか店の人は言ってたけど、発動しなかったな」

「そういえばそんな効果があると言っていましたね。まあただのアクセサリーですし、仕方ないですよ」

 まさか偽物を掴まされたのか……?
 そう思うと少し腹が立つが、まあオモチャみたいなものだし、シエルの言うとおり仕方ないか。

「何はともかく、無事で良かった。しばらく安静にしてろ」

 するとシエルは首を横に振る。

「もう大丈夫です、私は家に帰りたいです」

「ええ?! でも、マインさんがいないのに勝手に帰るのは……」

「むー、そうですけど。どこも悪くないんですよ? それなのにベッドを占領するのは気が引けます……」

「まあ確かにな……」

 するとシエルはすくっと立ち上がると、スタスタと出入り口の方に向かっていく。

「こっそり出ちゃえば分かりませんよ。ほらほら」

「おい、待てって! 」

 そのとき、ドタバタという足音と共に何者かが治療所に入ってくるのが分かった。
 すんでのところでシエルを引き寄せる。

「誰か!! 誰かいませんか……!! 」

 それは髪を振り乱したミシェルだった。

「何事ですか!? 」

 仮眠を取っていたらしいマインさんがバタバタと慌てた様子で駆け込んでくると、ミシェルの姿を見て目を見開いた。

「ミシェルさん、貴女……こんな時間にどうしたんです!? 」

「弟が……!! 弟が倒れていたんです……!! 多分一人で家に帰ろうとして、その途中で……」

 腕に抱かれたリュイが青白い顔をしてか細い息をしている。

「リュイくん……!? 」

 マインさんとは知り合いなのだろうか、あのクールな姿からは想像出来ないような声をあげる。
 
「取り敢えずそこの空いているベッドに寝かせなさい、それから魔力を回復させるアイテムをあるだけ! 」

「はい……!! 」

 涙で顔をぐちゃぐちゃにしたミシェルとすれ違った。
 そしてその近くに、俺が造り出した黒い鳥が舞っていた。
 
 そうだ、うっかりしていた。 
 俺はシエルを探すのに手一杯で、リュイを監視することをすっかり忘れていたのだ。

 彼が倒れる未来が来るのは分かっていた。しかし俺のミスで、彼を助けることが出来なかったのだ。

「俺も手伝います。シエル! 」

「うん! 」

 家に帰ることも忘れ、俺たちはマインさんの手伝いをすることにしたのである。

◇◇◇

「まずいわね……魔力の回復が追い付かないわ」

 意識を失ったリュイに続々とアイテムが投入される。
 しかしどれもこれも決定的な効果は得られなかった。

「そんな……マインさんお願いします!! 私、何でもしますから!! リュイを助けて……!! 」

 ミシェルは必死にすがり付く。しかしマインさんの表情は依然として暗いものだ。

「高位の回復魔法を使ったところですぐに魔力が枯渇してしまう……これじゃ堂々巡りだわ……。賢者様でもいれば話は別なのだけど……」

「賢者様……」

「彼らの扱う神聖魔法は病を根本的に滅する効果があるの。私たちの回復魔法なんてただ単に人間の自然治癒力を上げるだけ。リュイくんの病を治すことは出来ないのよ」

「そんな……リュイ……リュイ……」

 ミシェルが泣き崩れる。

「他に方法はないんですか? 」

 俺がそう言うと、マインさんは顔を曇らせた。

「……そうね、後は天使の涙という伝説のアイテム。これならば効果はあるかもしれない。でも所詮はただのおとぎ話、こんなものにすがるわけにはいかないわ」

 ん? 天使の涙?

 ……それならこの前買ったときの余りがありますけど。
 それに気が付いたのかシエルも期待に満ちた目で俺を見つめる。

「えーっと、それな……」

 それなら俺持ってますよ、と言いかけたとき、バタン! と大きな音を立ててまた誰かが入って来た。

「天使の涙? それはおとぎ話じゃないさ」

 ねっとりとした嫌な声。

「ここは治療所よ! 大きな音を立てないで! 」

 マインさんの注意も聞かずに、声の主、ユージーンはニタニタと笑う。

「ふふ、そう怒りなさんな。天使の涙からここにあるぞ」

 そうして彼は手のひらに小さな小瓶を載せる。
 ん? 待て待て、それって本当に天使の涙か?

 俺の持っているものより色が濁っている。絵の具を全て混ぜたような汚い色だ。

「ユージーン……」

 ミシェルのすがるような目。
 それに満足したのかユージーンが口角を上げる。

「これを君にあげても良いんだよ。ただそれには条件がある」

「条件……? 私に出来ることなら何でもする……! だからそれを私に下さい……!! 」

 待ってましたとばかりにユージーンがにやりと笑みを浮かべた。

「なーにそう難しいことじゃない。俺と結婚してくれ。そうすればこの天使の涙は君にあげよう」

「結婚……?? 」

 うわぁ、と俺は内心呟いた。
 人の弱味を盾に結婚を迫るなんて、よっぽど後がないのだろうか。

 そしてユージーンはちらりと俺の方を見ると、勝ち誇ったように笑った。
 そうか、こいつは俺のことをミシェルのファンだと思っているからな。だからこんな顔をするのだろう。

「……」

 ミシェルも酷く迷っているらしい。しかしあるとき、意を決したように口を開いたところを、俺が制止した。
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